48.スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(一之倉聡)

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※スピンオフ
※47話の続き

完全自己満、創作なので苦手な方はご遠慮ください。誤字脱字あり。すみません。



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高校のウィンターカップが終わった。
いつもの体育館の練習風景に目をうつす。
しゃがんで膝に両手をのせて
1年生の練習を見つめた。

「深津。」

横にいる3年間一緒に練習に励んできた
キャプテンに話しかける。
今日はやけに敬いたくなった。

「俺たちが強いだけじゃダメなんだよ。」

そう言うと、深津は座り込んだ姿勢のまま
いつもの表情で「そうだな。」と言った。

「日本はまだまだ強くなるよ。」
「じゃあ、お前が教えるぴょん。」

誰にも言ってなかったのに
1年生の面倒を見ていた事を
深津だけ見抜いてた。

「俺?」
視線は前を向いたまま、会話のラリーが続く。

「俺は人に厳しすぎる。」

そう深津が関節を鳴らしながら言ったのを聞いて、
バスケに関してはな。と付け足したくなる。

「お前は自分に厳しすぎるぴょん。」
そう言って足を組み変えながら
「だからむいてると思う。
自分のコーチングがいいって判断するのは、自分じゃなく、他人から評価されていいコーチングって言えるから。」
そう続ける。まさか肯定してくると思わなかった。
日本一のチームで、人をまとめる
難しさを知ってる深津のセリフだった。

何も言わない自分に
「別に資格とって、ボランティアでもいいから一回やってみればいいぴょん。」
そう付け足した。

「そうだよな。」
同じような事を考えていて
なんだよお見通しかよ。と笑った。




同じ実業団のメンバーが母校のバスケ部顧問が病休になる事を伝えてきた。

「外部コーチやってみないか?」
大学を卒業して渡航資金が貯まったら
アメリカにコーチの勉強をしに行く。
そう決めてる事を知ってたから声をかけてくれたんだと気づいた。

高校生か。そう思って緊張の方が勝つ。

承諾してから初めて学校の校舎を見学しにいく。
通りかかった校舎裏で
いきなりいじめの現場を目撃して
今時の高校生もこんなかぁ。と
なんとなく先輩に殴られてた事を
思い出しながら校舎裏に足が向かう。

はいはい、いじめっ子は吉原くんって言うのね。と
立ち聞きした名前を後で報告しようと覚える。
その中で一際、目を引く子がいた。

いじめっ子には見えないな…?
一緒に報告して、巻き添えくらっちゃったら
やだろうな。と思って一旦遠くから見ていると
いじめられた子の捨てられた教科書を拾ってあげていた。
へぇ。心の中で呟く。

「優しいじゃん。」

思わず声をかけた。

「…誰?」
そう冷たく言い返されて
今時の女子高生こわ。
そう思った。

その女の子の生意気そうな目を見る。

俺不良おちょくるの、結構好きなんだよね。
といつもの平常心で言葉を続けた。

「ねぇ、名前は?」

今思うと、なんでそんな事聞いたんだろう。
先生に言いつけるつもりもなかったのに。
そう思いながら、立ち去ろうとする
その子の前に立ちはだかった。

「ミレイ。」

自分を睨みつける、力強い目を見る。
すぐ目を逸らされた。
綺麗な名前だな。

「ミレイちゃん。またね。」

名前なんて聞かなきゃよかったんだ。
でも、その子の輝きから目を離せなかった。

人は変われる。
自分が誰かに影響を与えて変えられるなんて
おこがましい事は考えてなかったけど

たとえば、校舎裏で泣いているこの女の子は
こんな所で泣いてる様な子じゃない。
そんな気がした。
悪戯に傷つけられてる。

なのにこんなに、力強くて吸い寄せられる。

「ねぇ、名前は?」
制服で涙を拭く君がそう聞いた。
見たことない目で俺を見つめる。

「やっと、俺の事見た。」

1人でも男相手に食ってかかる君が
格好よくて、思わず笑ったよ。
まるで閃光の様だった。

ある日、その子から自分と同じ香水の匂いがした。

俺と同じパーマかけてきて
俺の後をついて周る。
予想してなかった展開。
いいのに、俺の事なんて気にしなくて
そんなに魅力的なのにな。
そう思って気づかないふりをする。

未来だけ、前だけ、見ててよ。
なのに、君は危なっかしくて
ほっとけなくて。

君が泊まりに来た夜。
君が隣の部屋にいると思ったら眠れなかった。
女の子をこんなに意識したのは初めてで
こんな自分に困惑する。

しまいには、俺が寝てると思ってキスをしてくる。
超えちゃいけない一線を超えて。

今、手を伸ばして君にキスしたら
もう後には引き返せない。
そう思って寝たふりをする。

もし自分が、彼女の手を握って
無責任なことを口走る。
きっと、わかりやすく君は喜んで

俺はアメリカに行って
君がひとりぼっちになる。


君は知らないよね。
ギリギリの平行線でいつも攻防してた事。

俺がよく君をみつけるのは
俺がいつも君を目で追ってるから。

もし、君が入学できてたら今1年生。
今年自分がアメリカに行ったら
次、君が在学中に会える機会はなくなる。
どこで何をしてるのかも、わからなくなる。

約束は、いましか果たせない。
そう思って行った一般公開の文化祭で
すぐに君を見つけた。

バスケットボールを使ったショーなんて
俺の事を覚えてたくれたのかなって期待する。
勇気をもらった。
俺は人を変えられた。

歓声の中にいる君は完璧すぎた。
ショーが終わったら話しかけて
アメリカに行くって伝えよう。
そう思ったのに、話しかけられなかった。
関わっちゃいけない。そう思った。
固めた決意が揺らぎそうで怖かった。

なのに、君は俺を見つけるでしょ。

目の前にいる君に目が離せなかった。
閃光みたいな女の子。
いつも俺を掻き乱す。

抱きしめられた時、気づいたんだ。
ずっとずっと君に惹かれてた事。

もう後には引き返せないよ。
あの曖昧なキスの続きをしようよ。





初めて出会った時の事を
夢で見た。
昨日のように覚えてる。
はやく会いたかったんだ。
その気持ちを思い出す。

ミネラルウォーターを飲んで軽く会話して
ミレイがベッドの下に降りて床に座る。

「一之倉と、もう会わない」

そう、目を合わせずに言われた。
手には編み物を持っていて
最初から作り直している。

静かすぎる空間に痺れを切らしそう。

昨日の夜、起きた出来事が尾を引いて、
一気に緊張する。

もう一度、手に持った500mlの
ミネラルウォーターを呑みながら少し考える。
言われた言葉の意味を。

飲み干した後、ペットボトルを握り潰した。
なんだか苛立つ。

「それでいいの?」
ベッドの下に座っているミレイを見て
後ろ姿を見つめる。
昨日質問された事を投げ返すようで可笑しくなる。

「うん。」
「そう。」

頭の中で何かがキレた。
ベッドから降りて俯いてしゃがむ
ミレイの肩を掴んだ。
驚いてこっちを見るから、
目を見ながら唇を合わせる。
肩から手を移動させて
顔を両手で掴んでさらに深いキスをする。

動揺する君の表情を見て
角度を変えてまた唇を包みこむと
理性が掻き乱される。
ミレイが苦しそうにするから、唇を離した。

「これでも?」

思いっきりずるい事をする。
目を見てそう聞いた。
正直、苛立っていた。

君は顔を真っ赤にして、それでも目を逸らすから
「わかった。」
そう言って、一呼吸おく。
その後、部屋を出ていこうとする。

玄関まで来た時後ろから足音がして、
背後から手が伸びてきた。

玄関のドアに手がつく。
俺が出ていこうとするドアを開かないように手で止められた。

背中越しにミレイが泣いてる事に気づいた。
一呼吸おいて、後ろから手を伸ばしている
ミレイの手をとった。
振り向いてそっと引き寄せて、何も言わずに抱きしめる。

「なんで、もう会わないとか言うんだよ。」

頭を撫でながら、抱きしめて
珍しい自分の苛立った小さい声に、
自分でも驚く。
引き止められたことに安堵した。

顔を上げて自分の機嫌を伺う
泣き顔を見つめた。
多分苛立った声色とは裏腹に、
自分が困惑した顔をしていたんだと気づいた。

申し訳なさそうな泣き顔を見て、どうしようもない気持ちになる。
あんな事聞いたら、そりゃそうなるか。
そう思って背中をポンポンとさすりながら叩く。
また部屋の中を2人で歩く。
「一之倉、私…」
そう言いかけるのを、聞きたくなくて

「いいよ。何も言わなくて…。」
そう言って
また会わないって言われるのが怖くなる。
手を掴んで振り向かせる。

触れたら壊れそうな唇にまたキスをした。
ゆっくり唇を合わせると声が漏れて、
思いっきり意地悪したくなる。
そんな事したら嫌われるから
いつも我慢してるけど。

ゆったり目のワンピースの下から手を入れて初めて触る太ももから横腹にかけてゆっくり手を這わせた。
下着のラインを超えて手のひらでなぞると
ビクッと反応する。
真っ赤になる顔を見て触って欲しそうに見つめられる。

本当は、俺の形になるまで
何度も何度も喘がしたい。

そのまま手で体を撫でて、脇腹から脇まで
手を滑らせて背中に手をまわす。
また下着を触られて反応してるのを見て
このまま外したくなる。
キスしてた唇を離して、首筋に唇を這わす。

ビクビクしながら、体に回した手にぎゅっと力が入った。

「深津と何話してた?」
「えっ、あんまり話して、ないけど…」
首筋にキスされながら喋りにくそうに答えながら
合間に声が漏れて意地悪したくなる。

「優しかったよ…」
そう言われて、「そう。」と答えた。
その優しい男はすぐ手出すから気をつけてねと
言葉が出そうになってさすがに
子供っぽすぎるから、言うのをやめた。

「夜にあんなとこに、1人でいたら心配だよ。」
そう言った後、理性が戻ってくるのを感じる。
ゆっくり顔を離して、顔を見た。

「心配させてごめんね。」
そんな派手な見た目なのに
素直なの、ずるくないか。
そう思って俺の前だけにして欲しいと願う。

ミレイの手をとって、自分の頬にパンと叩きつけた。
このままだと、我慢できなそうだったから。


目を伏せて、頬につけた手をまた握り直す。
少し寂しそうな表情を見てると
触りたくなるのが、止められなそうだったから
やっぱり家に来るのはやめよう。
そう思って、そのまま抱きしめた。

本当は
もう会わないって言われて
少し安心した自分に苛立ってたんだ。





「一緒にいて、何かおざなりになるなら、
その関係はダメだよ。」
同じ学科のサキの正論は正しい。

結局間に合わなかった課題の編み物をしている私を見つめながらそう言った。
間に合わなかったのは私のせいで
一之倉のせいじゃない。

でも、一之倉がアメリカに行かないのは
私のせいだ。


「何を大事にするべきかは、タイミングだよ。」
でも、私は1番一之倉が欲しかったときに
欲しいって言えなかったんだよ。
ずっと浮かれていたい。
何も考えないで。

「らしくないよ。そんなミレイは。」

そう言われてミサキさんが

『そんなの一之倉らしくないよ!』と言っていたのを思い出した。

「でもさ」
編み物をする手を止める。
「自分が自分じゃいられなくなる位、誰かを好きになったら、その感情は全てが悪なのかな?」

そう言った私をミサキが目を丸くして見つめる。
「私はさ、恋愛の感情をあてにしてない。
その時に感じて選んだ事が、冷静な判断だと思った事ないから。」

私の言葉にため息をつきながら、そう言った。

「正解なんてないけど、その瞬間の自分に合った最善の選択をした方がいいんだよ。未来は起きた事の結果だから。」

この子何があったんだろう。そう思いながら
散らかっている心の中を鎮めようとした。

「ミレイにとって、最善の選択をした未来を本当に、運命の人だったら受け入れてくれるはずだよ。」

運命か…。

「私は、あの人がいいんだよ。」

少し震えた私を声を、
宥めるようにサキが肩に手を置く。

「格好つけて、待ってなよ。好きなんだったらさ。1年経って変わらなかったなら、何年経っても同じ気持ちかもしれないじゃん。」

「簡単に言うよね。」
そう言って私が泣き出すから
永遠に終わらない編み物を一緒に隣でやり出した。




バイト中にどうしようとなくぼーっとする。
バイト仲間の高橋君は、何かいいたげだけど
私にそこまで情熱は無いから
何も言わずに時間が過ぎるのを待ってる。

あれから一之倉に抱きしめられて
やけに安心して、ほだされた。

話すべき事が流れていってただ言葉を飲み込んだ。
言うべき事の確信も持てずに
私はどうしたらいいのかわからない。

カウンターを前にして少し俯きながら
考えごとをする。
目の前に大きな手があることに気づいて
びくっとした。

「黒糖タピオカ1つ」
私が気づくように手をひらひらと動かして
いつもの無表情で見下ろされていた。
キャップを深くかぶっていて、
前来た時と同じトレーニングウェアを着ている。

「タピオカ増量ぴょん」
そう言ってカードをかつかつカウンターの上に置いて音を立ててる。

「あ、あの深津さん?ですよね?」
一之倉が聞いてきた時、名前を覚えた。

何も言わずジーッと見られてうなづく。
顔、こわ。
そう思いながらレジを進める。

「元気?」
そう聞かれて、「え?はい」そう言う。
本当は優しいんだろうね。この人は…。

「出来たら持って行きますね。」
そう言うと、うなづいてテーブルの席に座った。

いや、めちゃくちゃ見られてるんだけど。
背後に視線を感じながらタピオカを作った。

誰もお客さんがいないので、
タピオカを持って深津さんの向かい側の席に座る。
座った私を見て少し目を丸くする。

「あの……相談してもいいですか?」
「どうしたタピオカ」
「それ……言いたいだけですよね?」
そう言う私を無視して、タピオカを飲み始める。

「深津さんは、やりたい事と好きな人と…選ばないといけない時ってありましたか?」
なんて切り出したらいいかわからなくて
周りくどく聞いてしまった。

聞いた途端、ものすごい嫌な顔をされた。

「一之倉と同じような事質問してくるぴょん」
「え…そうなんだ」
そう言われると思わなくてオドオドする。

その様子を見て眉間に皺を寄せて見下ろされる。
「イチノの、アメリカの事だろ?」
「あ…はい」

あ、イチノって呼ぶ時もあるんだ。そう思いながらうなづく。なんだか距離が縮まった気がした。

「そんな事やってみないと、わかるわけないぴょん」
ため息をつかれてガックリ肩を落とす。

「俺は自分のやりたい事に、好きな娘を付き合わせたいとは思わない。人によるぴょん。」

そう言われて足を大きく開いて椅子に寄りかかった。

「タピオカが、イチノのやりたい事に付き合うか付き合わないかだぴょん。」
「私が…」

思わず口に出た。
「タピオカはイチノを付き合わせたいか?」
「…」
「自分のやりたい事に。」

自分の立場で考えた事なかったな。
黙り込む私を見て言葉を続ける。

「イチノの試合見た事ある?」
「え?ない、です。」
それを聞いて目線を逸らしながら言った。
「今週末、試合だから見に行くといいぴょん」
携帯で、場所と試合日程のサイトを見せる。
そう言い終わると立ち上がるった。

「タピオカ、がんばれ」
ストローを吸いながら心がこもってなさそうな無表情でいわれる。
「試合かぁ。」そうつぶやきながら
携帯で調べ始める。





「イチノ、任務達成ぴょん。褒めて欲しいぴょん。」

「…。なんか、楽しそうだな。」

電話越しで機嫌がいい深津の声を聞く。
バスケしてる時は基本一之倉って呼ぶから
気が抜けてかなり機嫌がいい時だな、と察する。
なんだかこんな事を頼む自分を
冷静に振り返って頭痛がした。

「で、元気なかった?」
「元気なかったぴょん。だからアドバイスしといたぴょん。」
「え…アドバイスしてっては頼んで無いけど…。俺はどんな様子か見てきてって言ったんだけど…。」

電話越しの深津が機嫌良さそうなのが
嫌な予感しかしない。

「練習場近いから、いつでも行くぴょん」
「…ありがとうな。」

「高校の時イチノにはたくさんアドバイスもらったぴょん」
あの時、ちょっと俺が楽しんでたから
深津軽く仕返ししてるな。そう思った。

「イチノが困ってる時は力になるぴょん。」
これは、俺の様子を面白がってるな。と
むしずが走りながらお礼を言った。




あれから、連絡が来ない。
そんな事を考えながら
試合が終わって家に帰る。
自然とため息がでた。

電話がなった。
少しドキッとする。

「…もしもし」
「イチノ?」

いや、何。それ。そう思った。
「何、その呼び方。」
「そう呼ばれてるよね?」
ふふっと恥ずかしそうに言うミレイの声。

深津の影響だな。と思いながら
自分で深津に様子見てきてって
頼んでおきながら少しムッとする。
言わないけど。

そう思って久しぶりに聞く声に
心が落ち着く。

「ミレイは、聡でいいよ」
「えっ」
わかりやすく恥ずかしがってるのが可愛い。
「…ちょっと練習しておく。」
そう言われて笑った。

「ねぇ、9月さ、空いてる時2日間私にちょうだい。」
「え?9月?いいけど。」
きょとんとしてると「あの」何か言いづらそうにする。

「私、USJ行きたいんだ。」
「…うん?いいけど。」
ミニオン好きだし。と付け足される。
じゃあ、10月の誕生日に。と閃いて
言いかける。

「10月は、イチノがアメリカに行くから思い出作ろうよ。」
すごく自然にそう言われた。
言いかけた言葉を飲み込む。
何も言えなくなった。

「チャンスの神様は前髪しかないんだよ。前も言ったでしょ?」

ミレイがいつも大事にしてる事。
言っていた事を思い出す。
いつもの事のようにそう言ってくれる。

「…そうだな。」

「明日、また連絡する!課題まだおわんなくて。」
そう言われて明るく電話を切った。

玄関で持っていたバックを落として
壁にもたれる。

「ありがとう。」
携帯を握りしめて、独り言のように呟く。

無性に泣きたくなって
でも君を抱きしめたくて
どうしようもなくて窓の外を見た。

今日は満月だよ。
君はあの月が照らす小さな部屋で
きっと泣いてるよね。







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