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裏垢女子の少し切ないお話

夜の駅のホームでいつも思い出す人がいる。
その人は出会い系アプリで知り合った人。
身長は高くてノリが良くて話しやすくて、いつもわたしが話すことにうんうん頷きながら笑ってくれる人。もちろんSEXもした。

滅多に安定を作らないわたしが唯一この人とは体の関係がなくても男友達として繋ぎ止めておきたいと思った人。

4回目会う時にわたしから伝えた。

「会うのやめようか」

彼からしたらめんどくさい女だろう。引き止めてくれることを願ってしまった。

「それはご飯だけ行くのも無理ってこと?俺はSEX抜きでもいいから会いたいよ」

思わず泣きそうになった。「うん、まぁ、ええよお前が言うなら」って言うだろなって勝手に想像してたから。彼も同じような気持ちなのかと....嬉しかった。それと同時に何故か悲しくもなった。

(そうか、わたしはこの人から女として求められなくなるのか)

友達以上恋人未満だった関係から友達になってしまう。でも友達の方が終わりのない関係だと思った。

「じゃあSEXするのは今日で最後だね。」

とわたしは笑った。彼は何を思ったのだろう。わたしの手を引いて抱き寄せた。

「会わなくなるわけじゃないんだから泣くなよ。」

どうやら泣きそうなのがバレてしまったみたいだ。

(あぁ、この人とは離れたくないな)

そう思うと体が勝手に動く。今日だけ、この時間だけはこの人を愛させてくださいとでもいうようにわたしは彼に縋った。

「駅まで送るよ」
「うん」

SEXをしたあといつも通り終電の時間ギリギリまで話して駅まで送ってくれる彼。
改札前で泣きそうになるのを必死に堪えて

「次はご飯ね!」
「来月な」

改札をくぐって振り返ると手を振ってる彼。わたしも振り返してホームに向かった。

電車を待つ間、これから彼は好きな人も出来て結婚して子供ができてわたしのことなんて忘れていくかもしれない。彼のことは好き、でもこれが恋愛かと言われるとよく分からない。

もしこれが恋愛の好きだったとしたらわたしは相当な馬鹿だ。彼はちゃんと現実を生きてる人。わたしと似てるようで住んでる世界、見てる世界が違う。

(あーあ。ここから見る景色も最後かぁ)

わたしはスマホを取り出して写真を撮った。

(まぁ、しばらくしたら消すけどね。)


さよならしてもまだ心に居座り続ける彼。彼のことを思い出しながら少し口角が上がった気がした。わたしは慌てて口元を隠した。そして何事もなかったように前を見た。ここで彼を思い出すとあの時は分からなかった気持ちに喉の奥が痛くなる。

夜の駅のホームでいつも思い出す人がいる。

わたしの好きだった人。