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「怒羅権と私」なぜ犯罪者は生み出されるのか

今、文春オンラインの記事で話題の「怒羅権と私」、早速買って読みました。
一言で言って凄まじい。

話題になっている文春オンラインの記事はここにはあえてリンクは張らないことにします。
というのは、この本の構成は、前半は犯罪を行っていたころの回想、後半が服役後の生き方になっているのですが、文春オンラインの記事は前半部しかないので、かなり違った印象になってしまうからです。

著者の汪楠さんは、有名な在日中国人の半グレ組織「怒羅権」の創立期のメンバー。写真の見た目は穏やかで、真面目そうな印象です。ところがその人生は、見た目とは対照的でした。

 人を傷つけるときのナイフの持ち方、日本刀で腕を切り落とした時の描写など、非常に淡々としていて、相手に共感を持っているようには全く見えません。
 事業経営する時の発想も、「風俗店のノウハウがないから、もぐりの経営者をさらって全部奪うことにした」みたいなことがさらりと書いてあり、なんの躊躇や葛藤も感じられません。
 さらに頭もいいので、どんどん社会の仕組みや人の行動様式をハッキングして新しい犯罪を生み出していく。企業への窃盗も、普通ではまず防げないし、気付くこともできなそうです。

 組織犯罪を手掛けるようなプロの犯罪者の思考や目線がよくわかる。普通の人間が対峙したら、まず敵わないと思います。

 最初は、いじめから身を守るために暴力をふるったというが、まるで暴力に魅入られてダークサイドに取り込まれていくような人生でした。暴力を問題解決の手段に使うことになんの抵抗もなくなっているので、更生しても犯罪への敷居が非常に低そう。やはり暴力を頼みにするのは恐ろしいと思いました。

 警察を嫌い、刑務所を嫌い、自分の行いを正当化するような雰囲気も見えるほどでしたが、後半で支援者との対話を通して、自分の罪を直視するようになっていきます。

 正直、汪さんは、今まで行ってきた犯罪にしても、怒羅権という犯罪組織を生み出したことも許されることではなく、一生背負い続けるのだと思います。

 一方で、何が犯罪者を生み出すのか、犯罪者の更生に何が必要なのか、よく考えられて書いていると思いました。

 一言でいうと、社会とのつながりがあるかどうか、孤独がどれだけ人間をスポイルするかということです。

 「孤独」というのは、今、先進国でも大きなキーワードになっています。英国では孤独担当大臣がいるそうですね。

https://globe.asahi.com/article/13016730


日本でも、高齢者の孤立、各家庭の孤立、マイノリティの孤立など、たくさんの孤独があり、社会問題の底辺を形成していると思います。

 汪さんも現在は受刑者の社会復帰を促すような社会活動をされていますが、大きなテーマを提示している本だと思いました。



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