「USJを劇的変えた、たった1つの考え方」を読んでみた

はじめに

先週、森岡毅さんの「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」を読んでリサーチの重要性についてを学びました。

※note ⇒ https://note.com/tiaretia/n/n69a4b49ab478

その著書の中で、森岡さんが話しが複雑でなので多くは触れない。と記していた内容に、マーケティングフレームワークについての話があります。

本書はそのマーケティングフレームワークに重きを置いて森岡さんが執筆した著書になります。

実際に読んでみての感想はこれまで概念的に知っていた内容を具体的な事例に落とし込んで説明している本なので、ものすごくマーケティングの用語の理解が進みました。

本の内容の中で学びだと感じた部分を抜粋してnoteにまとめます。

■書籍の紹介
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USJを劇的変えた、たった1つの考え方

出版社:角川文書

著者:森岡 毅

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マーケットインVSプロダクトアウト

本書では消費者視点が大事という事が繰り返し述べられています。

「森岡さんはUSJの何を変えたのか?」という質問に対して、本書内では下記のように答えています。

究極的には、変えたのはこの1つだけと答えても良いでしょう。それは、消費者視点という価値観と仕組みにUSJを変えた事です。USJが消費者視点の会社に変わったという事が、V字回復の最大の原動力だと思います。

USJは元来クリエイティブを創り上げるプロフェッショナルの集団だったそうです。だからこそ高いクオリティのエンターテイメントはユーザーの心をひきつけ、日本を代表するテーマパークになりました。

ただそれだけでは経営は上手くいきませんでした。なぜなら、「プロダクトを提供している側の人間の良いもの」と、「消費者が望む良いもの」は必ずしも一致しないからです。

日本は職人気質なところがあるので、何かと自分たちが思う最良の商品を創り上げようとします。いわゆるプロダクトアウトになりがちな人種です。

例えば、シミケア美容液の商品開発をする際に、効果性を追及してあらゆる医薬部外品成分を凝縮して詰め込んだ最高の美容液を作ったとしても、ターゲットが求めるものが、UVカットの商品であったら販売は難しくなります。

消費者視点で何を求めているのかを考えて、それに合わせて、自社が提供できるものを提供していく。その価値観が無いと大きな集客を生むことは難しいです。

マーケティングフレームワーク

ではどのようにして、消費者視点を取り入れて商品を売り出していくのか。

その考え方の一つがマーケティングフレームワークになります。このフレームワークに沿って考えていくと、消費者視点での考え方の基、「整合性のある戦略と戦術」を生み出すことができます。

目的:OBJECTIVE(目的は?)
目標:WHO(誰に売る?)
戦略:WHAT(何を売る?)
戦術:HOW(どうやって売る?)

上記の4つが、マーケティングフレームワークの要素です。

これらを上から順番に紐解いていく事で、現状を打破するプランが出来上がるはずです。

①目的:OBJECTIVE(目的は?)

マーケティングのプランを立てるときに一番最初にするべきは目的の設定です。目的を立てる上で重要なものは3つあります。

■実現可能なものになっているか

不可能な目的を設定するとその先の目標などの設定も広く設定ができないものになってしまいます。目的は達成できるか否かのギリギリのラインで設定するのが望ましいです。

例えば来月までに売上を昨年比で200%にするという目的は中々難しいものです。これが3年以内にという期限であればまだいいかもしれませんが、1ヵ月以内であれば110~120%が現実的な数値になってくるはずです。

ここの設定があまりにも現実離れしているとモチベーション低下にも繋がるので、達成見込みが見えるラインに設定をする事が大切です。

■シンプルな内容か

目的を達成するためにはあらゆる障害を排除していかなければなりません。だからこそ目的はシンプルにな内容にして、やるべき事と今やらなくても良いことを明確にしていく必要があります。

あれもこれもと手を出していくととてもじゃありませんが手が回らなくなります。

一番大切な目的を達成するために必要なことを限定するためにも、シンプルな内容にするべきです。

■魅力的な内容か

その目的を達成したらどんな未来が待っているのか、その目的の達成は組織が望んでいるものなのか、お客さんが望んでいるものなのかを考えて設定しましょう。

その目的を達成することに情熱を燃やせるか否かで達成率は大きく変わります。

②目標:WHO(誰に売る?)

目的を明確にした次にやるべきことは、マーケティングのターゲット(目標)を誰にするのかというところを明確にしていきます。

全ての消費者に対してうちの商品を買ってくださいと広告を配信しても、当然反応率は悪いです。

消費者には一人一人求めているものがあります。美容関連商品は男性より女性の方が需要があります。その中でもコスメであれば若い女性の方が需要がありますし、エイジングケア系の化粧品であれば40代以降の方が需要があります。

その商品のコアとなるターゲットがどこかを探っていく事が大切です。

コアターゲットについてもマーケティング目的によってさまざまな種類があります。

目的が認知率の向上であれば、コアターゲットは、同じようなジャンルのものに興味を抱いていて、ユーザーでまだ自社を認知していないユーザー

ロイヤリティの向上であれば、既存顧客の中で、複数回商品購入をしている顧客

商品率の向上であれば、ベネフィットなどが顕在化している検索ユーザー

等々、目的によってコアターゲットは変動していきます。

このコアターゲットがはっきり見えてくると、後の戦略と戦術が立てやすくなります。

③戦略:WHAT(何を売る?)

何を売る?と聞かれて素直に答えると「自社商品を売る」となりますが、ここで考えたい事は、「自社商品で提供できる価値が何か?」という事です。

ここでは腕時計を例にお話しします。

僕が個人的に好きなブランドはスカーゲンというブランドの時計です。何が良いかというと文字盤がシンプルで見やすくビジネスシーンでも使えるデザイン、そして、比較的スリムなタイプの時計が多いからです。僕は手首が細いのであまりゴツイ時計を付けると時計だけが浮き出て見栄えがかなり悪いです。※あと値段もお手頃というのもあります。

そこから考えると、僕がスカーゲンというブランドを選んでいる理由は、公私で使えて自分の体格にマッチするからというものになります。スタイリシュさを求めているようなものです。

一方で時計の有名ブランドと言えばオメガがあります。オメガの時計は数十万~数百万するものまであります。当然細かく見れば品質の違いがありますが、同じ時計であることには変わらず、時間さえわかれば一番の重要な機能は果たします。

ただ、世の中の所得に余裕のある方はオメガの時計を購入する人が多いです。その人たちはなぜオメガを選ぶのかを考えるとおそらくそこには、ステイタスや優越感を求めているのではないかと思います。あるいは商談先の経営者と対等なポジションになるために背伸びをして購入する人もいるかもしれません。

上記のように、商品を購入する際にユーザーが考えているのは、その商品のスペックだけでなく、その商品を買ってどのようなベネフィットが叶えられるのかを考えて購入をしています。

目標を達成するためには、消費者のインサイトを分析して、自社の商品の何を売るのかを明確にすることが大切です。

③-①インサイトについて

先ほど消費者のインサイトとお話ししましたが、インサイトについては重要ところなので、別途記載をします。

インサイトとは「消費者の本音」などと表現される、消費者が深層心理で思っている気持ちの事です。

消費者はインサイトを刺激されることによって、商品に対する興味関心や購買意向が大きく動きます。下記に本書に記載されていたインサイトを刺激したUSJの事例を紹介します。

USJで何としても集客をしなくてはいけないクリスマスシーズンのTVCMについて、これまでのUSJでは「昼にはこんな楽しいことがあって、夜にはこんなことも楽しめます。」というような普遍的なCMを流していたそうです。

この時森岡さんが衝く事にしたインサイトは、親の切ないインサイトです。それは「子供と過ごせるクリスマスはあと何回もない」というものです。

今は家族で一緒にクリスマスを過ごしているかもしれないが、10年後には子供は恋人とクリスマスを過ごすことになる。そうなると子供と過ごせるクリスマスはあと数えるほどしかない。

そんな気付きを与える為に、TVCMでは大人っぽい表情ができる少女を課yスティングして、父親と2人でクリスマスのパークをデートしているストーリーのものを作成しました。ナレーションには男性の切ないナレーションを付けて、今年のクリスマスは貴重な一回なんだ。という認識を植え付ける為の構成にしました。

その結果として、パーク内のコンテンツは前年と同じ内容だったにもかかわらず、前年以上の集客ができたそうです。

インサイトを分析する手法についても多数の著書があり、細かいところはまた別途noteでまとめようと思いますが、インサイトを分析してそれを刺激するという事でユーザーの心を動かすという事は、マーケッターとしての必須スキルであると思います。

④戦術:HOW(どうやって売る?)

マーケティングフレームワークの話に戻ります。

HOWの話は、WHATで考えた売り込む内容を、WHOで考えた対象ターゲットに届ける為の話です。

考え方として重要なものは、4Pの話になります。

■product(製品)

売り出す製品をどのような形で売り出すのか、これまでの分析で誰に対して何を売るのかを抽出してきましたが、ユーザーの基にそれを届けるには、何かしらの形に落とし込まないと、商品を提供できません。

消費者視点で見て求めているものを届ける事を前提に、自社で提供できるものが何かを考えて、その内容が伝わりやすいようにプロダクトをカスタマイズすることが良いでしょう。

■price(価格)

価格も重要な役割を果たします。設定する価格は安ければユーザーにとっては手を出しやすいものになりますが、安すぎてもダメです。例えば先述した時計のオメガが1万円以下の値段などで時計を販売すると、消費者にとってもオメガの価値が下がってしまいます。

ユーザーは価格=商品の品質というような思い込みを持っているものです。

商品に自信があるのであれば安売りしない方が良いことも多々あるので、慎重に価格の検証などをしたほうが良いです。

■place(流通)

物流や、店舗の立地などがこれにあたります。ひとえに人通りが多い場所と言っても、渋谷の人通りの多さと、丸の内の人通りの多さでは、全然属性が違います。商品を届ける為にはどの流通経路を選択すれば消費者に効果的に商品を届けられるかを考える必要があります。

またWebの場合は広告媒体などがここにあたります。悩みが顕在化しているならば検索広告が最も効率が良いはずですし、顕在化していないのであればディスプレイ広告系の媒体、ブランド想起や認知向上であればYouTubeなどなど、カスタマーファネルを考えて適切なメッセージを適切な媒体を通して届けるようにしましょう。

■promotion(プロモーション)

プロモーションはどのようにしてその商品を消費者に見せていくかというところになります。

インサイトについてで紹介したTVCMもプロモーションの一部です。

他にも最近であれば商品との関連性が高いYouTuberとのタイアップでプロモーションを行うであったりもこのプロモーションに入りますし、もっと細かい話だと、LPの訴求軸をどうするか?などの意思決定もプロモーションの一環に含まれます。

森岡さん曰く、上記の4Pがマーケティングフレームワークの中で最も面倒なところです。

ただし、ここをおざなりにすると、良い目標や戦略が立てられていたとしても、消費者にそのメッセージが届かず無意味になってしまいます。

面倒だからこそ時間をかけて、より効果的な選択が何かを選んでいく事が重要です。

まとめ

今回はマーケティングフレームワークについてをnoteにまとめました。

プロダクトアウトの思考で商品を販売すると、この商品はココにこだわって作ったから、ここを広告で打ち出していこう!という短絡的な考えになってしまいますが、それでは反応するユーザ層はごく一部に限られてしまします。

どこの市場で、どのユーザーに向けて、どの商品のどの部分を打ち出すのかにこだわってアプローチをする事で企業の明暗は分かれます。

マーケッターは企業を勝たせるための軍師として、分析をやり尽くすことが大切だなと思った本でした。

特に自分の場合はWeb広告を配信する中で、お客様と対面で話すことができない分、インサイトの抽出がしにくい立場にいます。ただ、それを言い訳にせず拾えるだけの情報を拾って、プランニングができるように精進したいと思います。

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