8.キャストとしてデビューした、あの日
私にとってのはじめての接客……なつかしいですね。断片的ですが少しずつ思い出しています。
はじめてといっても、実は入店してから1年ほどずっと予約がない状況でした。
いまから10年前、レズっ娘クラブには現在の倍以上、30人近くものキャストが在籍していましたが、お客様の数はとても少なく、お店自体に入ってくるお仕事の数もとても少ない状態でした。
いまでは考えられないことですが、私はプロフィールページで顔出しをしていました。これはとても危険なことですが、このころはそれがご予約につながると思っていましたし、ほかのキャストもそうでした。
けれど私は当時、本業に力を入れていたため、ブログやお店のイベントといったお客様へのアピールとなる活動に時間をかけられず、幽霊部員のような状態でした(笑)。結局、一度もお仕事をすることなく、いったん辞めてしまいました。
なので最初のご予約は、出戻りしたあとになります。
出戻りといっても、2カ月ほど辞めていただけです。案外すぐに戻ってきました(笑)。予約ゼロのまま辞めたくない、もう一度挑戦したいと思ったのです。
当時、お店ではオフ会を頻繁に開いていたので、それを機会に復帰することにしました。するとその数日後、なんとはじめての予約が入ったんです。
オフ会なんて、今では考えられないでしょうね。キャストたちとお客様、お客様になってくれるかもしれないみなさんとの大宴会ですよ。
ひとりずつ自己紹介をしたり、カラオケを歌ったり。斬新でした。ビデオ通話のあるチャットなんかもしてましたよ。びっくりですよね?
それほど、お客様とキャストが近い距離にいたんです。濃厚な時間を過ごしていました。
オフ会のあとには、割引キャンペーンがはじまります。キャスト一同、お客様の取り合いで大変なことになりました。それだけ張り合っていたんでしょうね。
はじめての予約をいただいたとき、想像を絶するほどうれしくてたまりませんでした。
同時に緊張と恐怖心もぐっと込み上げてきました。
何を着ていけばいいだろうか?
どんな髪形でいこうか?
……など、そのたったひとりのお客様のために、とても忙しく頭を働かせていたのを覚えています。考えることがたくさんありました。
とにかくうれしい。
やっと必要とされたんだ。
ここから何か始まるかもしれない
と、希望に満ちていました。手探りでもがんばろうと思い、ぶっつけ本番な気分で挑みました。