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13.色気ある大人の女性と、初めての夜

深夜のバーでタカコさんも、ひとりでした、お店の人と話が盛り上がっていたので、私は「常連の人なのかな?」くらいの気持ちで気にせず飲んでいました。

すると、少し酔っているのかその女性が私に話しかけてきました。

「ひとりなの?」

「はい……! 友だちが先に帰っちゃったんです。でももうちょっと飲みたくて」

と私が伝えると、よければ一緒に飲もうと腕を引っ張られました。

夜の雰囲気が漂った、香水の香りのきついお姉さんだったので、内心ではちょっとビビっていましたが、とても話しやすくて、陽気でよく笑う人でした。

どことなく奥深い色気が漂っていて、隣にいてなんだか落ち着く? 不思議だな? ……そんなことを感じながら少しいい気分になっていました。

タカコさんはスキンシップがけっこう激しく、女同士なのに肩とか膝とかを触ってきました。話すときの距離もすごく近いんです。

めっちゃ酔ってるのかな?
どうやって帰るんだろう?
結婚してるのかな?

私はいろんなことをぐるぐる考えながら、タカコさんの話を聞いていました。

きっと戸惑いが顔に出ていたんでしょうね(笑)。まごまごしている私を見て、バーの店員さんが私に、

「強引やろ~? 変わった人やろ? わかるかなあ? このお姉ちゃん、君のことがタイプなんよ」

と突然切り出してきました。

女の人が、私のことを好きーー高校のとき告白してきたあの子のことを思い出して私はますます混乱し、聞き返しました。。

「えっ、なんのことですか? どういう意味ですか?」

答えてくれたのは、タカコさんでした。

「私はバイセクシャルなのよ。あなたみたいな女の子をいじめたくなるのよね。女性も男性もどっちも好きってことよ」

すらりすらりと迷いもなく、そんな話をしてくるんです。バイセクシャル……はじめて聞く言葉でした。このときの私はバイセクシャルもレズビアンも、何も知らなかったのです。

それからお姉さんのセクシャリティの話をおよそ2時間くらい聞いた気がします。バイセクシャルについても、このとき知りました。終電も逃しました(笑)。

私はそのとき、タカコさんのことを妙に魅力的に感じていました。男性に抱くエッチな気分よりもはるかに大きな性欲というかエッチなものが、頭によぎりました。

この人に触れてみたいな。
何かものすごく危険な一線を越えたいな。

……読んでくださっているみなさんもすでに察しがついていたと思いますが、このタカコさんが私の“女性同士のヴァージン”を奪った人です。

この夜、私はストレートではなくなりました。

バイセクシャルという自分に出会ったんです。

いわゆる完全ビアンというものではありませんが、確実に私の人生に新しい世界がめぐってきたんです。

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