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シャルンホルスト級制作記#1 (Tamiya 1/700 waterline kit)


1 はじめに

1-1.製作背景

  1941年5月のドイツ海軍のライン演習は、ビスマルクの沈没、プリンツオイゲンのブレスト入港で終了したわけですが、このブレストにはベルリン作戦(1941年1月から3月)を終えたシャルンホルストとグナイゼナウが入港していました。
 そもそもビスマルクは、この2艦と共に大西洋での通商破壊作戦を行うつもりでしたが、度重なる英空軍の空襲で、被害を生じており、特にグナイゼナウは乾ドックで修理しなければならないほどの破損状態で、この時期航行可能ではなかったために当初の計画に齟齬が生じ、目的の良くわからないライン演習を実行せざるを得なかったともいわれています。
 この美しい高速戦艦がライン演習に関わるとしたらどのような姿であったのか(あるべきだったのか)、『英海軍がビスマルクに気を取られているうちに両艦が出航していたら』という”if”ストーリーを考えたくなり、当時の両艦の状況を考察して、キットを製作することにしました。

1-2.使用キット

Pic. 1-2
タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.118 ドイツ海軍 巡洋戦艦 シャルンホルスト
タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.120 ドイツ海軍 巡洋戦艦 グナイゼナウ

 1975年に発売された外国艦シリーズで、シャルンホルストは1942年2月のチャネルダッシュ時を、グナイゼナウは1939年頃をモデル化しているようです。
 発売後、すぐに説明書通りに製作しましたが、箱絵の印象で、かなり暗いグレーに塗ってしまいました。5年ほど経って写真などの資料を調べ、ライトグレーに塗り直す時に一度バラしています。今回、ライン演習時として再構築したので、両艦とも二度バラして塗装しています。製作過程でキットの表面が汚いのは、そのためです。また、ビスマルクとプリンツオイゲン製作のためにシャルンホルストを2キット追加購入しています。
 ディティールアップのためにグナイゼナウ用のフライホークのエッチングパーツを入手しました。Kagero社が発行しているグナイゼナウのCGが1941年時の姿で描かれているので、これを参考にしていきますが、フライホークのエッチングパーツは、この本を参考にして制作されたのではないかと思えるもので、1941年時とそれ以降の選択ができるようパーツが含まれています。
 フライホークのシャルンホルスト用は、入手できませんでしたので、グナイゼナウのパーツを一部利用しながら汎用のパーツを使用します。両艦にエッチングパーツによる差がでないようにしたかったので、一部のフライホークのパーツは使いませんでした。

2.艦体について

2-1 艦首

Pic. 2-1 Gneisenau 

 グナイゼナウ:新造時にはクリッパー・バウ(A)でしたが、1939年初頭にアトランティック・バウ(B)へ改装し、左舷の2カ所の錨鎖孔(C)を1か所(D)としました。開戦後(1939年9月)は、錨鎖孔の前部にあった艦首紋章(E)が撤去されています。ちなみに英独艦は艦ごとに独自の紋章があることはご承知の通りです。また、艦首上部は、改装後も新造時同様の2孔のフェアリーダータイプ(F)のままです。 キットでは、すでにアトランティック・バウに改装後の形状となっていますが、ライン演習時にするには、船首の2孔のフェアリーダータイプを再現する必要があります。

Pic. 2-1 Scharnhorst 艦首

 シャルンホルスト:新造時にはクリッパー・バウ(A)でしたが、1939年後半に、アトランティック・バウ(B)へ改装し、左舷の2カ所の錨鎖孔(C)を1か所(D)としました。さらに、新たに大きな錨鎖孔を艦首先端に開けました(F) 。この錨鎖孔からの波の飛沫がひどく、すぐに閉塞したとのことですが、時期がはっきりと判りません。艦首紋章と共に錨が確認できる写真がありますが①、航行中錨鎖孔に錨のない状態の写真②もあり、おそらく艦首紋章(E)を撤去した開戦時頃に甲板側で閉塞したと考えられます。
 キットでは、グナイゼナウ同様アトランティック・バウに改装後の形状となっていますが、ライン演習時にするには、正面錨鎖孔を再現する必要があります。

Pic. 2-1 Scharnhorst & Gneisenau 艦首

 キットは、両艦ともにアトランティック・バウに改装後の形状(A)で、錨鎖孔は1か所(B)となっているので、そのままで変更の必要はありませんが、グナイゼナウは、船首の2孔のフェアリーダータイプ(C)を、シャルンホルストは、正面錨鎖孔(D)を再現してみました。

2-2.舷外電路

Pic. 2-2-1 舷外消磁電路

 乾ドックのグナイゼナウをはじめいくつかの写真に、舷外消磁電路のようなラインが認められます(A)。調べてみると1939年12月から1940年2月にかけて舷外消磁電路を敷設したとの記事を見つけることができました。イラスト類では描かれていることが多いので、両艦とも舷外消磁電路を装備していると判断しました。

Pic. 2-2-2 Scharnhorst & Gneisenau 舷外電路追加

 日本艦や英国艦のようなむき出しの電路でなく、すべてカバーが付いた状態のようですので、細く切ったプラ板をバルジの上部の高さに合わせて、艦首錨鎖孔(A)から艦尾(B)まで貼り付けました。

2019年2月- 2020年5月
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