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日本海軍戦艦 榛名制作記 #1(Fujimi 1/700 waterline kit)


1 はじめに

1-1.製作背景

 外国艦をビスマルク追撃時に揃えて制作したので、日本艦も同時期にするには、開戦時のキットが揃っている特シリーズを使用することに決めました。そこで、「モデルアート艦船模型スペシャル 太平洋戦争開戦時の日本海軍戦艦(2019)」の作例紹介を参考に、伊勢型、扶桑型、長門型と制作して来ました。
 次は金剛型となるのですが、特シリーズでは、金剛、比叡、霧島の3艦は開戦時のキットがあるので、3艦についてはそのまま制作するとして、榛名で悩みました。
 榛名のキットは1944年時しかありません。「太平洋戦争開戦時の日本海軍戦艦」では、このキットを開戦時に改造しているので、これを参考にするのがベストです。一方、特シリーズ発売前に出版されていた「艦船模型スペシャルNo.26 ウォーターラインモデリングガイドブック 日本海軍戦艦編(2007)」では、ハセガワのWLシリーズの榛名を開戦時に改造しています。
 初期のWLシリーズ4社体制時では、金剛型はフジミの担当でしたが、フジミの脱退後、ハセガワが後を受けました。フジミの旧キットを参考に金型を作成していたとのことでしたので、早速手持ちのフジミの1971年製旧キットを引っ張り出してみると、ハセガワのキットによく似ています。

1-2.使用キット

 この旧キットから開戦時の金剛を作る作例は、「丸スペシャル 日本海軍艦艇シリーズ 戦艦金剛(1976)」に紹介もされており、改造が必要な箇所の多くはハセガワの場合と共通しています。
 実は、学生時代にこの「丸スペ」の記事を参考にして開戦時の金剛の製作を試みたことがありましたが、諸事情により途中放棄していました。このリベンジを思い浮かべたからなのか、手を加えたくなるモデラ―の性(さが)なのか、今回、金剛型に取り掛かるにあたり、一番手間の掛かりそうなフジミの旧キットから開戦時榛名への改造を試みることにしました。
 榛名は旧キットをすでに組んでいたからなのか箱がありません。旧キットは4艦すべて共通のパーツ構成となっているので、未製作だった霧島のキットでパーツ構成を示しました。

Pic. 1-2 パーツ構成

2.艦体

2-1.キットの状態

Pic. 2-1 艦体比較

 (A)は旧キットと特シリーズの艦体の比較、(B)は旧キットの艦体に特シリーズの霧島の艦底を重ねた状態です。旧キットは中央部以外は全体的に幅が広く、特に艦首や艦尾部分が広いのが目立ちますが、旧キットを使用している以上、ここは目を瞑ることにしました。
 また、舷側も高くなっています。特シリーズの伊勢型のように艦底を内側にすれば、舷側は少し低くなりますが、艦体に反りが生じていたので、これを修正するために艦底板のパーツの貼り付けは必須となりました。
 例によって艦底にナットを仕込み、しっかりと接着して重りを置いたり、台座に固定したりして反りの解消に努めましたが、残念ながら完全に修正することはできませんでした。

2-2.艦体上面の修正

Pic. 2-2 艦体上面

 画像上段が特シリーズ霧島の甲板、中央が旧キット修正前、下段が修正後です。
1 第一副砲(A):撤去されているので、左右とも砲塔基部を削り落とします。
2 第七副砲(B)及び第八副砲(C):左右ともに艦尾側にずれているので、甲板面と側面を削り落として、前に移動させます。副砲は、ピットロード日本海軍艦船装備セットを使用したので、これに合わせた砲塔基部を4つ作成します。
3 艦載機甲板:クレーンの格納場所(D)がない、軒(のき)としてせり出した部分(E)がある、リノリウム張りなのに木甲板の筋目がある(F)など修正箇所が多いので、艦尾甲板面から上はすべて削り落とし、作り直す必要があります。
4 艦橋基部:キットでは、艦橋甲板と第二主砲塔との接続部は滑らかに続いていますが、平面図では段があるので、少し広げます(G)。また、艦尾側も直角ではなく角が少し取れています(H)。さらに、階段が付く部分の張り出し(I)が必要です。
5 艦中央部:全体的に幅が広くなっています。特に高角砲の位置で左右に張り出している部分(J)が必要ありません。ハセガワのキットではこの部分は別パーツになっているようですが、このキットは甲板部分と一体です。大掛かりな作業になりますが、艦橋後部が乗る部分を含めて、幅を狭くします。中央部分(K)のみ残しましたが、ここも狭くするべきでした。また、艦橋基部との接合部分は、切り離すと穴になってしまいます。甲板部分を裏張りし、前部電信室(L)を作りました。

2-3.甲板上の修正

Pic. 2-3 甲板上

 艦体には艦底を貼り付け、甲板部の構造物をすべて削り落とし、軍艦色(呉海軍工廠標準色)を塗装した後で、クラフト紙の甲板を貼っています。
甲板部が別パーツとなっていないので、艦体に沿ったクラフト紙のカッターによる切り落しはできません。平面図に重ねて鉛筆で大まかになぞり、ハサミを使って現場合わせをしながら修正しています。
 艦載機甲板は、削り落としたので作り直します。クレーンの格納場所(A)、軒としてせり出した部分(B)、下に排気口がある箇所(C)を考慮してプラ板で基礎を作り、甲板を貼ります。甲板にはリノリウム色に塗装した幅2mmのプラペーパーと直径0.2mmの真鍮線を交互に貼ってリノリウム張り(D)を表現しました。
 次に艦載機用軌道を付けます。専用のエッチングパーツが入手できなかったので、艦載機甲板上ははしごのエッチングを半分に切ったもの(E)を、木甲板上は丸穴のエッチングを半分に切ったもの(F)をそれぞれ接着しています。さらに、旋回盤(G)とカタパルトの基盤(H)を取り付けます。
 木甲板上には、ベンチレーターや塵埃場(I)を接着しています。後部艦橋の足場となるせり出し部(J)も追加しています。
 さらに第3砲塔基部が低いので、同じ径のプラスチック製のワッシャー(K)を貼り付けて高さを稼ぎます。こうしないと砲塔を回転した際にベンチレーター類に引っかかってしまいます。

2-4.艦体側面の修正

Pic. 2-4 艦体側面

1 舷外消磁電路(A):各戦艦に舷外消磁電路が設置されたのは開戦前と言われています。このため1941年5月の時点ではおそらく設置されていないと思われますが、特シリーズのキットではすべて表現されていますので、手すりのエッチングパーツを切って自作しました。
2 塵埃筒(B)と汚水排管(C):特シリーズの金剛型のキットを参考にそれぞれプラ板で作りました。特シリーズでは少し厚みがありすぎると思われますので、薄く細目にしました。

2022年6月-8月
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