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H.M.S. Nelson Class 1941 英国海軍ネルソン級1941制作記 #6 (Tamiya 1/700 waterline kit)


5.武装(承前)

5-6.副砲及び高角砲

Pic.5-6-1 副砲及び高角砲

 ネルソン級の副砲は Mark XXII 6inch(15.2 cm:50口径) 2連装が6基の計12門で、砲塔は、後部にドアとかも見当たらずのっぺりとしています(A)。
 高角砲はMk.VIII 4.7ichh(12 cm:40口径)の単装6基6門です。新造時には砲盾は設置されていませんでしたが、ネルソンは1937年から1938年に一時的に、1939年12月の改修からは砲盾が装備されました。ロドネイは、迷彩を施した1942年頃には砲盾を備えていましたが、いつ設置されたかは不明です。おそらくビスマルク追撃戦時にはなかったと思われます。

Pic.5-6-2 高角砲の修正

 キットの副砲は奇麗なモールドをしていて(A)、砲身の金属パイプの手持ちもなかったので、そのまま手を加えませんでした。
 ネルソンの砲盾付きの高角砲は、砲塔状なので後ろをカットし(B)、中をくり抜いて砲身が上下する部分も開口しました(C)。当然砲身もカットしました。余剰の機銃のパーツから大きさの合うものを選んで、銃身をカットし、砲盾の後ろから差し込んで(D)、スリット部分から金属線の砲身を取り付けました(E)。
 ロドネイの砲盾なしの高角砲は精密で素晴らしいのですが、砲身上部のアーム状の部分が盾のようになってしまっているので、ここをカットし代わりにエッチングパーツの手すり(日本戦艦の錨見台の)をカットして曲げたものを取り付け(F)、金属線の砲身を取り付けました(G)。

5-7.ポンポン砲

Pic.5-7 ポンポン砲

 対空機関砲はポンポン砲と呼ばれ、8連装タイプのものが(Vickers QF 2 pounder "pom-pom" gun Mk.V ; octuple pom-pom)、両艦とも煙突の前に左右2基設置されていました。(A)がFineMolds製、(B)がキットの物です。ややオーバースケールのように見えますが、違いは歴然ですので、FineMolds製を使用しました。

5-8. 高角砲座後部甲板

Pic.5-8 後部甲板部(左:ネルソン、右:ロドネイ)

 両艦ともに竣工時から後部甲板に高角砲(4.7inch 40 Mk VIII)が、ロドネイのパーツB37上に設置されていました。1941年頃には、ネルソンのパーツB9のような高角砲設置場所があるのが写真で確認できます(A)。このため、高角砲部分はネルソンはパーツB37をそのまま使用しました。
 ロドネイにも少し形状の異なる設置場所(B)があるので、写真を参考に自作しました(C)。
 また、ポンポン砲が、1941年には後部甲板もに1基追加設置されていたようです。ネルソンのキットには、設置するためのパーツB10があり、写真でも確認できます(D)ので、パーツB10を使用しました。ロドネイは、囲いのある設置場所でなく直接甲板上(E)にポンポン砲をおいていたようなので、その位置にポンポン砲を仮置きしてみました(F)。

5-9.機銃

Pic.5-9 機銃

 艦橋中段に縦に4連装の形状の機銃(A)が設置されていました。3Dキットの画像(Quad Vickers 0.50"/62 12.7mm MG MKIII)を参考に(B)のように取り付けました。
 1941年頃のロドネイB砲塔上には、単装の機銃(20 mm Oerlikon ?)が2基認められるので(C)、囲いとともに日本海軍の単層機銃を取り付けてみました(D)。

6.その他装備

6-1.艦載機

Pic.6-1 Supermarine Walrus

 ロドネイのX砲塔には1936年からカタパルトが設置されウォーラスが搭載されていました。ロドネイのキットは新造時なのでウォーラスのパーツがありません。幸いタミヤのレパルスに2機分のパーツが入っているので、これを使いました。風防部分をカットし、透明プラ板に置き換え(A)、塗装もデカール(これもレパルスの)も済ませたところで気が付きました。タイヤ(B)はいらん!
 KGV級の時は気が付きませんでしたが、カタパルト上ではタイヤは主翼に格納(C)されていなければなりません(主翼を後ろに畳んだ状態ではタイヤを降ろしていたようです)。丸くカットしたプラペーパーをダークグレーに塗って貼り付けて格納状態にしました(D)。

6-2.艦載艇

Pic.6-2 艦載艇

 ネルソンの(A)、ロドネイの(B)の位置には、50ft ピンエース2隻、45ft ランチ1隻、35ft ピンエース1隻の計4隻の艦載艇を搭載しました。
 右舷にはカッター類がダビッドで吊り下げられている写真が多かったので(C、D)、32ft カッター、27ft ホェーラー、30ft ギグを順にダビッド懸垂状態で配置しました。
 左舷は艦載機用のクレーンがあるため、開戦後は、ダビッドではなくクレーン周辺の甲板上に艦載艇を置いているケースが多かったようです(E、G、I)。また、ネルソンでは左舷艦橋横(F)に、ロドネイではX砲塔上(H)に小型のカッター類が認められたので、それぞれ配置しました。
 また、砲塔の後部、甲板上や上甲板舷側などにラフト(救命筏)が取り付けられていました。配置は決まっていなかったようなので、写真を参考にキット付属のパーツに加えて、3Dレジン製を適宜追加しました。

6-3.仕上げ

 錨、銅線を捩って作った錨鎖、サーチライト(グレーのカバーをかぶせた状態)、マストのヤードやロープ類、無線用の張線、艦橋左右の信号灯、後部マストの舵柄信号、艦尾のホワイトエンサインなどをつければ完成です。

7.おわりに


Pic.7 ネルソン(手前) ロドネイ(奥)

 制作記を6回にわたりお送りしてきましたが、参考写真を多く掲載したためで、改造部分はあまりなく、もっと簡単に手早く終えるはずでした。3月から4月にかけての年度代わりのゴタゴタと艦載艇で悩んだので、「5. 武装」以降に思いのほか時間が掛かってしまいました。艦載艇については別途記事を立ち上げる予定です。
 静岡4社のウォーターラインシリーズの100番台の外国艦群は1974年に発売されました。この両艦のキットもそうです。つまり今年は、このキットの発売から(そして購入から)ちょうど50年になります。ということは、50年間積んであったということです。「3-1」で記載しましたが、ロドネイを一度作りかけている途中に、どうしても広い戦艦の甲板にうまく筆塗りで塗装する自信がなく、断念して放置していました。今までの他艦の制作記で紹介させて頂いたように、クラフト紙による甲板表現がうまくできるようになって、ようやくだだ広い戦艦の甲板の呪縛から解き放たれ、ネルソン級を完成させることができました。
 積みプラでお悩みの皆さん! 50年後に完成することもあります。これからも希望を持って積んでいきましょう!

8.参考文献

  1. 丸 季刊 Graphic Quarterly 第22号 写真集 英国の戦艦 潮書房 1975

  2. Andrew Kershaw ed. BATTLE OF THE ATLANTIC Phoebus Publishing Company 1975

  3. 世界の艦船 1980年6月号増刊 第283集(増刊第9集)第2次世界大戦のイギリス軍艦 海人社 1980

  4. 世界の艦船 1990年11月号増刊 第429集(増刊第30集)イギリス戦艦史 海人社 1990

  5. 欧州海戦記 1 木俣 滋郎 光人社NF文庫 2000

  6. 田宮模型の仕事 田宮俊作 文春文庫 2000

  7. モデルアート 2004年12月号臨時増刊 No.671 艦船模型スペシャルNo.14 イギリス戦艦編 モデルアート社 2004

  8. 艦船模型スペシャルNo.31 2009 SPRING 巨大戦艦ビスマルクの生涯 モデルアート社 2009

  9. 艦船模型スペシャルNo.44 2012 SUMMER 超弩級戦艦の系譜 モデルアート社 2012

  10. 艦船模型スペシャルNo.80 2021 SUMMER 女王陛下の戦艦 モデルアート社 2021

  11. 艦船模型スペシャルNo.81 2021 AUTUMN 1/700ウォーターラインシリーズの歴史 モデルアート社 2021

2024年1月3日制作開始
2024年5月6日完成
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