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H.M.S. Nelson Class 1941 英国海軍ネルソン級1941制作記 #5 (Tamiya 1/700 waterline kit)


5.武装

5-1.主砲塔:ネルソン

Pic.5-1 ネルソンの主砲塔

 画像上段は開戦前、下段がUPランチャー(A)を装備した1940-41年のネルソンの主砲塔です。UPランチャーはB砲塔とX砲塔に2基づつ、計4基設置されていました。
 ロドネイと共通しているパーツ修正上の注意点を3つ挙げます。
(1)砲塔右舷側の突起物(B)が認められます。これが、左舷側にはありません(C)。トランぺッターのキットでは再現されているようですが、タミヤのキットでは再現されていません。
(2)砲塔前面の右舷側に梯子が認められます(D)。砲塔前面が映っている写真ではすべて認められるので、固定式の梯子だと考えました。
(3)一方、砲塔の左右の梯子(E)は認められる場合と認められない場合があり、主として停泊時などの作業中に設置された着脱式の梯子だと考えました。

5-2.主砲塔:ロドネイ

Pic.5-2 ロドネイの主砲塔

 ロドネイは1936年から1944年まで、X砲塔上にカタパルトを搭載していました(A)。B砲塔上には2門の機銃が認められますが(B)、設置時期が不明です。1940年8月にエリコン20mm機関砲を2門設置したとの記述があるのでこれに相当すると考えました。
 砲塔の背面や周りには大小のラフト(救命いかだ)が認められます(C)。また、X砲塔上のカタパルトの脇に小型の艦載艇の姿も認められます(D)。

5-3.主砲塔の修正

Pic.5-3-1 キットの主砲塔パーツ

 上段がロドネイのA砲塔(パーツA16)、B砲塔(B28)、X砲塔(B29)、下段がネルソンのA砲塔(パーツ A16)、B砲塔(B34)、X砲塔(B33)です。
 ロドネイのX砲塔にはラフトのパーツB36やB36を接着するための穴が開いていたので、これを塞ぎました。
 ネルソンのB砲塔には機銃座が4基、X砲塔にはポンポン砲座1基と機銃座2基がモールドされているのでこれは削り落とす必要があります。
 砲塔上の滑り止めの細かいモールドは一部削り落とす必要がありましたが、大部分はそのまま残しました。

Pic.5-3-2 修正後の主砲塔

 修正後の状態です。まず、すべての砲塔に測距儀のパーツA10及びA11を接着しました。次に、5-1に記述した注意点に従い、(1)砲塔右舷の突起物を伸ばしランナーで作り、(2)砲塔前面の梯子はキットのモールドを削りエッチングパーツに置き換えましたが、(3)砲塔横の梯子のモールドは削り、エッチングパーツによる追加はしませんでした。
 ネルソンのB砲塔とX砲塔にはUPランチャーの爆風除けの囲いを、ロドネイのB砲塔には機銃の薬莢除けの囲いを、それぞれプラ板で作り、ロドネイのX砲塔にはエッチングパーツのカタパルトを付けました(写真資料と少し形状が異なりますがそのまま使いました)。
 砲身はキットのパーツを使いましたが、ピンバイスで砲口を開けました。ネルソン級では砲身付け根のキャンバスカバーが使用されていなかった模様です。
 X砲塔の砲身は水平になるようにしないとB砲塔に引っかかってしまいます。パーツA15の砲を連結させている横向きの丸棒の上部を少し削ると砲身を低くセットしやすくなります。

5-4.イギリス海軍の砲塔名

Pic.5-4 各国戦艦の主砲塔名称

 日本の戦艦の場合、主砲塔は、艦首から艦尾に向かって「第一砲塔」、「第二砲塔」……と呼んでいますが、イギリスの戦艦だとアルファベットとなっていたようです。では、ネルソン級の場合、順に「A砲塔」("A" turret)、「B砲塔」("B" turret)、「C砲塔」("C" turret)となると思っていましたが、英語表記のページを検索すると、"C" turretと表記している場合もありますが、"X" turretの場合も見られます。
 ネルソン級が艦首3砲塔なので特殊なのかと思い他の戦艦で調べてみると、砲塔の配列が長門型や金剛型と同じフッドの場合、艦首側の二つがAとBで、艦尾側が前からXとYとなっていました。また、KGV級では、艦首の4門砲塔がAで、次の2門砲塔がB、艦尾4門砲塔がXとなっていました。なるほど、艦首側と艦尾側で呼び方を変えているのか。
 では、扶桑型や伊勢型のように砲塔が艦首2基、中央2基、艦尾2基の計6基ある場合英語表記でどうなっているのかというと、艦首がAとB、艦尾がXとYで、ここまでは予想通りなのですが、なんと中央の二つはPとQとなっているではありませんか。一体全体どうなっとるんじゃい?

 答えは大声で指示を出した時の聞こえ方なのだそうです。つまり、AとK(エーとケー)、BとE(ビーとイー)やCとZ(シーとズィー)のように伸ばした後ろの音が同じように聞こえるのを避け、XやQのように他とはっきり音が区別できるアルファベットを選んだというわけです。
 しかし、1913年に建造された30㎝連装砲7基を装備したHMSエジンコートの場合、艦首がAとB、中央がPとQ、艦尾がXとYとZとなっていて、Zまであります。これでは呼びにくいので、別に艦首から"Monday""Tuesday"---"Sunday"の曜日名が付けられていたそうです。さすが、伝統のイギリス海軍、奥が深い!
 ちなみに、ドイツ海軍の場合、ビスマルク級は"Anton" "Bruno" "Caesar" "Dora"、シャルンホルスト級は、"Anton" "Bruno" "Caesar" の順に呼ばれていました。

5-5.UPランチャー

Pic.5-5 UP Launcher

 打ち上げ花火のように発射後、パラシュートが開き、敵機が絡まった際あるいは時限式に爆発する爆薬(噴進弾:Unrotating Projectile Rocket あるいはUP Rocketと呼ばれる)を発射する装置です。Launcherでなくマウントと表示している場合もあります。
 イギリス海軍では、4列×5段の20連装となっていて、一度に10発発射することで、空中に地雷原を生じさせるというコンセプトでしたが、全く効果がなかったので、ごく一時期に使用されたのみとなりました。しかし、ちょうどビスマルク追撃戦時にはフッド、ネルソン、KGV、POWに実装されていた(バーラムも?)ので、装備させないといけません。
 日本海軍も終戦間際に似たような兵器を開発していたので(こちらは28連装でした)、FineMolds NanoDread700から、12cm二十八連装噴進砲として(A)、ピットロードWW-Ⅱ日本海軍艦船装備セットⅢには噴進砲として(B)それぞれ販売されています。どちらも精密なモールドとなっているのですが、大きさがまったく異なります。どちらが正しいのだろう?コレガワカラナイ。
 幸い、タミヤのフッドにこのパーツがあります(C)。そこで、ピットロードの噴進砲の28連装のうち20連装分を残して周りを削り、フッドのパーツに合わせた発射台を自作して組んでみました(D)。フッドのパーツよりロケット部分が少しオーバーサイズのようですが、砲塔に載せてみると参考写真と比べて違和感がありませんでした(E)。この方法は、すでにフッドとKGV級での使用実績があったので、ネルソンでもこれで進めることにしました。

2024年1月制作開始
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