金の鍵【グリム童話】
冬の寒さが厳しいある日、少年が森の中で必死に働いていました。彼は貧しい家に生まれ、毎日少しでも家計を助けるために木の枝を集めていました。少年の手は凍えて真っ赤になり、指先の感覚はほとんど失われていましたが、それでも彼は一生懸命に枝を集め続けました。
「もう少しで帰れる」と自分に言い聞かせながら、少年は雪の中を歩いていました。そのとき、ふと足元に何かが光るのを見つけました。彼が近づいてみると、それは小さな金の鍵でした。少年は驚きと興奮で胸が高鳴りました。こんな場所で金の鍵を見つけるなんて、一体何を開ける鍵なのだろう?
少年は慎重にその金の鍵を拾い上げました。そして、周りを見回しながら「これが何かの宝物を開ける鍵かもしれない」と思いました。興奮を抑えきれず、彼はその鍵をポケットにしまい、さらに注意深く辺りを探しました。しばらくすると、今度は雪の下から小さな箱が見つかりました。
その箱は古びていましたが、確かに鍵穴がありました。少年は期待に胸を膨らませながら金の鍵を取り出し、そっと鍵穴に差し込みました。カチリと音を立てて、鍵はぴったりと合いました。少年はゆっくりと鍵を回しました。
箱の蓋が開くと、中にはさまざまな宝物がぎっしりと詰まっていました。金貨、宝石、そして美しい装飾品。少年は目を見張りました。これで家族を助けることができる、お腹いっぱいにご飯を食べられる、温かい服も買える。そんな思いが彼の心に溢れました。
しかし、宝物の中に一つだけ、不思議な古びた巻物がありました。少年はそれを手に取り、広げてみました。そこには、「この宝物を見つけた者よ、この鍵と共に心を正しく保ち、他者と分かち合うことを忘れるなかれ」と書かれていました。少年はその言葉を心に刻みました。
少年は宝物をすべて持ち帰り、家族と喜びを分かち合いました。そして、彼は巻物の言葉通り、貧しい人々や困っている人々にもその宝物を分け与えました。その行いは村中に広まり、多くの人々が少年を称賛しました。
この出来事から、少年は村で最も尊敬される存在となり、彼の家族はいつまでも幸せに暮らしました。彼が見つけた金の鍵は、物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさももたらしたのです。少年はいつまでもその鍵を大切にし、毎日感謝の気持ちを忘れずに生き続けました。
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