Eテレ子供番組礼賛(29日目)

子供ができてからというもの、Eテレの子供番組にさんざっぱらお世話になっている。

特に、毎朝7時から9時ごろまで畳みかけてくる怒涛のラインナップ、これにはもはや単なるテレビ番組に対するものを超えた感謝の思いを表明せざるを得ない。

ただでさえ子供と自分の準備がぶっかぶりで忙しい朝、このゴールデンタイムの間だけは、子供がじっとテレビを見続けてくれるのでなんの邪魔もなしにやるべきことができるのだ。
「『おかあさんといっしょ』は『おかあさんいまのうちに』に改名すべき」というツイートを以前見かけたが、Eテレは子育てしている人にとっては本当に、いっとき代わりに子供を見ていてくれる先生のような存在なんである。

しかも対象年齢が幼稚園児以上くらいのものになると、大人が見ても面白い。

まずは何より『おかあさんといっしょ』、これは超王道の子供番組にして、おにいさんおねえさんという完全無欠にして変幻自在の「アイドル」に毎朝会えるすさまじい番組である。

のっけから「みんな、元気ー? おにいさんも、おねえさんも元気ー!」と毎回毎回完璧な笑顔でガッツポーズを決めるおにいさんおねえさんを見ると、最初はそのあまりにイデア的な隙のなさに恐怖を覚えるだろう。
だが、しだいに「おれたちが日々どんなにへこたれていても、おにいさんおねえさんは毎朝いつも笑顔で励ましてくれる……太陽や……あのお方たちは太陽なんや……」と信仰心めいた尊敬の念を抱くようになるのだ。なるんですよ。
(おかいつについてはいずれまた改めて書きたい。)

また、過去の『カリキュラマシーン』や『天才てれびくん』の例を挙げるまでもなく、子供番組にはセンスが卓抜なものもたくさんある。
向井秀徳と人間椅子の鈴木研一が演奏の振動で紙相撲をしたりする『シャキーン!』。
小山田圭吾の楽曲に合わせて日常に溢れる意匠のデザインを紐解いていく『デザインあ』。
言わずと知れた、眺める快楽物質『ピタゴラスイッチ』。
このあたりはエッジが立ちまくっていて、むしろ大人が見たほうが楽しいのではないだろうか……。

しかし、個人的にいちばん衝撃的だったのは7時45分から15分間の『みいつけた!』だった。

メインキャラは以下の3人である。
・人間の幼女
・サバンナ高橋の声でしゃべる青い椅子
・彼女らを養っているらしいサボテンのおっさん

念のために言っておくがおれはシラフである。
他にも、
・常にパジャマ姿でバスタブに入りながらカメラに向かってひとり遊びをし続けるおっさん
・サボテンのおっさんと別人のはずだが絶対に同時に出てこないので別人格なのではないかとの疑いが拭えないサボテンのおばさん
・夥しい数のしゃべる椅子たち(作中世界には椅子の街が存在するが、そこに座る人間はいない。代わりに空から時折尻が降ってくる)
などが出てくる。
サボテンのおばさん・サボ子が帝京大学ラグビー部を訪問して若き筋肉ダルマたちに萌え狂いながらタックルで吹っ飛ばされる「サボ子のドキドキリポート」のコーナーなどは神回と呼ぶにふさわしい衝撃的な面白さであった。
(繰り返すがおれはシラフである。)

『みいつけた!』の素晴らしいところは、子供番組であることを全く逸脱しないまま、とんがったことをやっていることだ。
『シャキーン!』あたりのとんがりすぎてて大人向け子供番組とでも言うべき按配と、『おかいつ』の完全子供目線で作られていつつ親が自ら萌えるポイントを見出していく按配の、ちょうど中間あたり。
子供目線での番組づくりという制約から決して外れないまま、大人も楽しめるエッセンスを入れ込む加減が絶妙なのだ。

かように楽しい番組なのだが、今日はこの謎設定の話をしたいのではない。
話したいのはこの番組の音楽についてだ。

と思ったが時間切れ、次の回に続きます。

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