ポケルス

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最近の記事

6月1日〜6月30日の日記より

・太宰治『人間失格』を読む。実家から持ってきた、小畑健が表紙を描いているやつだ。奥付を見ると2007年32刷とある。17年ぶりの再読というわけだ。 いや、ぜんぜん共感できなくてびっくりした。でもこれを読むことで、自分は「本心」なんていろんなものごととの関係性の中で相対的に存在するにすぎないと思っているし、「罪」だって実態がなくて人間が社会をやっていく上で仮に決めているにすぎないと思っているということを逆に感じさせられる。あと、女性たちや友人・堀木の描写が生々しくて「ひっ…」と

    • 2024年5月6日〜5月31日の日記より

      ・高橋則夫『刑の重さは何で決まるのか』を読み終わった。易しく噛み砕いて説明してくれているが、ところどころ「専門家」としての著者が顔を出しているところが信頼できる。法学について、こういう本が読んでみたかった。 ・『Sing a Song for You: Tribute to Tim Buckley』(2000年)が「裏90年代」って感じで良い。モハーヴィ3(スロウダイヴのメンバーが同バンド解散後に組んだバンド)の「Love from Room 109 at the Isla

      • 2024年4月14日〜5月5日の日記より

        ・是枝裕和監督『怪物』をめぐって、監督と監督に対する批判者2名という鼎談を読んだ。監督は穏当に喋っているのだが、正直そうとしか言えんやろなという感じだった。ポリティカル・コレクトネス的な批判に対して、クリエイターが「誠実に応答する」のが正解だとは必ずしも思えないな。 『怪物』は良い映画だと思ったんだけど、ネタバレを防いだ方がいいタイプの作品であるゆえに、擁護しようにもSNSとかで具体的なことが全然言えないんだよな。うーん。そういう点が構造上の失敗だと言われればそうなんだ

        • 2024年3月31日〜4月13日の日記より

          ・『劇場版ムーミン 南の島のバカンス』を再見。やっぱりめちゃめちゃ良い。オールタイムベスト映画みたいの作るとしたら入れるくらい好き。 ・大江健三郎『新しい人よ目覚めよ』を再読した。再読したと言っても、後半の記憶が全然なかったから前回は挫折したのかも。 左翼団体の若者に、なぜ革命運動に協力しないのかと詰られるシーンがインパクトある。どちらかというとその後の障害をもつ息子イーヨーが誘拐されて……というシーンが物語上の本筋であるのだが、ここに垣間見える作者自身の政治思想が、性や死

        6月1日〜6月30日の日記より

          2024年3月10日〜3月30日の日記より

          ・板橋区立美術館で「シュルレアリスムと日本」展を見る。 1930年代半ばまで、海を描いた絵がやたら多いのが面白い。その傾向は、1937年あたりにダリの影響が広まると弱まっていく。そして、これこそが今展のキモだと思うのだが、戦争が激化して前衛表現への弾圧が強まるとすぐにダリ・ブームも去り、山水画や草木画っぽい作品が増えていくのが面白い。そして戦後はかなり政治的メッセージの強い作品が中心に。 これだけまとめて見られる機会はあまりなく、それだけで見る価値のある展示ではあるのだが、

          2024年3月10日〜3月30日の日記より

          2024年3月3日〜3月10日の日記より

          ・『ぼっち・ざ・ろっく!』最新6巻まで読む。 アニメ版が放送していた頃、上のようなツイートをしたことがあるが、読み進めるごとに正しいことを言ったと思う。それはともかく読んでてすごく楽しい! ・Zepp Hanedaでウィルコのライブを観る。スタジオ音源を聴くとき以上に、ジェフの声が良い! 結構シンガロングしている人が多くて幸福感があったが、それがちょっと邪魔に思えるくらいだった。 ・ライブ後、友達と焼き豚屋に行く。この数年、友達に会うとキャンセルカルチャーの話になりがち

          2024年3月3日〜3月10日の日記より

          2024年2月16日〜3月2日の日記より

          ・スピッツが去年出した『ひみつスタジオ』は良いアルバムだと思うが、かつてのアルバムが「これって私!」という気持ちで聴けるのに対して、このアルバムは「この曲で救われる人がいるかもしれないと思うとぐっとくるな〜」みたいな感じだ。僕が歳をとったというのもそうだと思うが、スピッツのモードの変化を感じる。 ・榎本俊二『ザ・キンクス』1巻を読んだ。マンガというフォーマットを使って、マンガの物語のお約束とは違う展開をしていくという意味では、『GOLDEN LUCKY』の頃から一貫している

          2024年2月16日〜3月2日の日記より

          カエターノ・ヴェローゾのアルバム全部聴く

          こんにちは、9か月ぶりくらいの更新です。 僕は中学生くらいから基本的に日本のポップスと、英米のロックを中心に音楽を聴いてきたのですが、最近ブラジル音楽を聴いていることが増えました。特に、9年ぶりのオリジナルアルバムがリリースされたばかりのカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)に関してはほとんど虜と言っていい具合で、久々に一人のアーティストに夢中になった喜びの冷めないうちにと、このnoteを開いた次第です。 カエターノ・ヴェローゾは1960年代から活躍しているM

          カエターノ・ヴェローゾのアルバム全部聴く

          過去とともに生きる-「シン・エヴァ」感想

           「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を観終わったときの最初の印象は、もやもやしたものだった。  マヤと部下たちがネルフとの戦いにノートパソコンで立ち向かう冒頭のシーンから、この映画が“「エヴァ」を終わらせ”ようとする庵野(とスタジオカラー)の映画であることが伝わってくる。続くストーリーも、シンジの抑鬱状態との戦い、ガイウスの槍の創出、すべてのエヴァの“消滅”など、作品の内容が、作品を作ること自体と見事に符合していた。それゆえだろう、鑑賞者が作品を読み取る余地が全く残されて

          過去とともに生きる-「シン・エヴァ」感想

          20200415

          ・最近、デヴィッド・ボウイをちょっと聴いていた。正直に言うとベルリン期以外はあまり良さがわかっていなかったんだけど、一枚一枚遡るように聴いていたら、アメリカ時代の作品(『Diamond Dogs』〜『Station to Station』)が好きだなと思った。『Scary Monsters』も好きだけど、今のところロバート・フリップのアルバムという印象がある。 ・イヴ・トゥモアの新譜『Heaven To A Tortured Mind』がすごくいい。タワレコの通販でCDを買

          アフリカのことわざ

          「はやく行きたいなら、ひとりで行け。遠くまで行きたいなら、一緒に行け」 というアフリカのことわざがあると本で読んだ。 アフリカのイメージとちょっと違う優しい言葉だな、アフリカのどの辺りの地域なんだろうと思ってググったら、 アル・ゴアがノーベル平和賞のスピーチで引用した言葉だ、という以上には情報を辿れず、 あとはなんかライフハック系?のサイトが無限に出てくるだけだった。 ムカつくぜ。

          アフリカのことわざ

          百合についての雑で主語のデカいメモ

          何年か前に、女性オタクが「女性オタクは腐女子を卒業して夢女子になりがち」みたいなツイートをしていて結構びっくりした。逆だと思ってたので。 「自分の女性としての身体を受け入れることが成熟と見なされる」という社会規範に沿っている、と考えていいのだろうか? 一方で、乙女ゲーやTL漫画、夢女子の文化が文学や社会学の議論の俎上に載せられることは、BLと腐女子の文化に比べると少ない。 男性の間で百合を愛好することは、自虐を含みつつもある種の知的なふるまいとして受け入れられている(「紳士

          百合についての雑で主語のデカいメモ

          逆に

          そろそろ死にそうなおじいちゃんの腕ってさ、やたら細くてさ、ところどころ血が溜まってたりして、逆に食べ物っぽいよね。