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『両国花錦力士』(りょうごくおしゃれりきし)

 博多座1月公演『両国花錦力士』(りょうごくおしゃれりきし)を観劇してまいりました。岡野玲子の同名漫画を原作とするこの舞台は、歌あり、ダンスあり、裸でのダンス(力士ですから)ももちろんあり!とかなり楽しめます。クサクサした気持ちになりがちな日々ですが、そんなのパーっと吹き飛ばしちゃう勢いと明るさたっぷりのお芝居です。

 と、ここまで書いた時点ですでに、超推しであることはおわかりかと思います。しかしこの舞台はそれだけではありません。お話がしっかりしているんですね。神事でもある“相撲道”についてきちんとおさえながら、息もつかせぬストーリーが展開されます。主役の昇龍(原嘉孝 ジャニーズJr.)と宿命のライバル・雪乃童(ゆきのわらべ・大鶴佐助)をはじめ、相撲雑誌記者の淳子(大原櫻子)、相撲部屋の娘でありながらデブが嫌いと公言しまくる沙耶香(加藤梨里香)など魅力あふれる登場人物が粒そろいで、ひとり一人の成長物語ともなっているのです。
 いちばんジーンときたのは、りょうさん演じる大手芸能事務所パピーズ女社長・渡部桜子でした。彼女は昇竜に惚れ込みます。イケメン好き、または金持ちの道楽で、昇龍に入れ込んでるだけかと思いきや、じきにそれだけではないことがわかります。その理由が今の時流にもマッチしていて、胸がスーッとする思いがしました。同じ女性として桜子社長にかなり共感しちゃいましたよ。桜子は昇龍を追いかけ、大きな台風の目となって、物語を大いにかき混ぜます。かき混ぜ方が艶っぽくてセクシー。本作の見どころのひとつです。

 雪乃童が所属する部屋のおかみの役である紺野美沙子さんにも惹かれました。おかみさんらしい包容力と、ちょっぴり天然なところが可愛かったです。そしてこれはぜひ書いておきたいのですが、おかみさんのセリフに金言を見つけちゃいました。おかみさんがわが娘に人生とは何ぞや、と説くシーンで「(人生は)食って、少しの娯楽があればいい」(かなりうろ覚え&意訳です)という一言が飛び出したのです。私はこのセリフに大きくうなずきました。だってそれって“娯楽がなければ人生は成り立たない”とも解釈できるではないですか。不要な外出は避けなくてはなりませんから、大きな声ではいいづらいです。しかし、やはり、それはそれとして、人生のエッセンスとして娯楽は必要なのです。本筋とは離れていますが大事なメッセージとして受け取りました。

 忘れちゃならない主役の昇龍くんももちろん目を見張るものがありました。少し憂いのある美男役がぴったりで、舞台映えがするんですね。幕が上がってからすぐに昇龍を応援したくなるのは私がイケメン好きでジャニオタという理由だけではないはず。最初から観客をぐいぐいと作品世界へと引っ張ってくれます。

 デーモン閣下によるテーマ曲はダンサブルで、一度聴いたら耳に残って離れません。劇場を出てもずっと耳に残って思わずステップを踏みたくなります。あー、本当に楽しかった。これは見れば見るほどハマる、するめタイプのお芝居です。いつか再演してくださる日を、早くも心待ちにしています。

『両国花錦力士』(りょうごくおしゃれりきし)は1/28(木)まで上演中です。

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