5月某日。糸島へ

広報誌制作のためクライアントさんの元へ。10人ほどの方々に軽めのインタビューをする。1時間ほど対話するみっちりインタビューも好きだけれど、限られた時間内でテンポよく話のキャッチボールをするのもライターとしては楽しい作業なのである。タレントさんや会社経営者の方々はお喋りが上手だけれど、大方はそうではない。私はどちらのインタビューも好んでやりたいほう。後者の場合は特に、相手が気持ちよく答えてくれるように頃合いを見図るのが大切と思う。

取材の空き時間に近くのスーパーへ行き、昼食用のおにぎりを2個買った。乗代雄介著『旅する練習』に出てくる小学校を卒業したばかりの亜美(あび と読む)ちゃんは、包装を上手くとれないのが弱点なんだそうだ。作品中に詳しい説明はなかったが、きっと海苔が袋にくっついて離れてしまう点が難しいのかしら?なんて想像する。昔はコンビニごとに包装は違っていたけど、統一されて久しい。だから作品中に詳しい説明がなくとも成立する。「おにぎり忍法帖」とか懐かしいな。あの仕組み、画期的だったので惜しい。

高校時代の友人に、海苔の両肩の三角部分を織り込まず、先にちぎってたべる子がいた。定食やランチプレートでも、まずは味噌汁、サラダ、メインとひと皿ずつ平らげる子で、給食の三角食べの真反対を行っていた。目鼻立ちが整っていて美しく、映画の話をすると「観てはないけど、原作は読んだよ」とよく返してくれたっけ。その年から独自の美学があるのが羨ましかった。

今日の具はおかかと昆布だった。運転席で食べていると太陽は出ていないのに、日差しは肌にきつかった。食べ終わってゴミを小さなビニールにしまって、山の上を見上げるとどんよりした厚い雨雲がかかっていた。梅雨が迫ってきている。

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