見出し画像

文舵練習問題1の再び

『飛び込む』

ギザギザした波状の岩を足の裏に感じながら、私は5メートル下の川面を見つめていた。時折立つ小さな波が日の光を受けて白く光っている。実のところは吸い込まれそうなほど深い、青緑の川だ。ミツルもやった。タケルもやった。二人は崖から飛び込むという新しい遊びにすでに慣れて、次第に勢いを増して飛び込んでは、雫を滴らせながら幾度も崖によじのぼっている。誰も口に出さないが、皆の関心は次にやれるのは誰か、だ。女の子でまだやれた子はいなかった。カナカナカナと蜩の声が響く。私は右、左と草履から足を抜き、後ろを向いて10歩下がった。顎を引いて足元を見る。「やれる?」と小さく声に出し、自ら「うん」と答えて、利き足の左から走り出した。指の間にくっつく小さな石ころはお構いなしだ。左、右と大股で素早く足を出して、さっきいた場所を踏切地点に、左足から踏み出す。フッと息を吸うと同時に、体は陸を離れて宙を舞った。飛べた。やれた。放物線を描くことなく、水面に向かって落下しただけだったけれど。トプっという音がして全身が水に包まれ、次に鼓膜がふさがれ、飛び込んだ5m分、体は沈んだ。さっきまでいた崖の下は白砂で、手の平ほどの魚が我関せずと泳いでいる。その横には腕を組み、あぐらをかいて座っている何かがいて、目があった。あっと思ったとき、沈んだ反動で体が水面にぴょーんと出た。女の子たちのすごいね、すごいねという声が耳に届く。私はすぐに声が出せなかった。

練習問題1ができなくて次に行けない(笑)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?