大波止、思案橋、水辺の森
私が大波止バス停前のおうちで一人暮らしをしていた頃,、私の行動範囲はたいていタイトルにあるこの3か所で完結していた。
朝は「大波止~。大波止で~す。」というバスの運転手さんの気怠い一声から始まる。新地ターミナルに向かうバスなら必ず止まるバス停の上に私の家(もっといえば寝室)があった関係で、私は毎朝アラームなしに目を覚ますことができた。朝に弱い私への当てつけのように何台ものバスが通過していく。そのうち大型トラックが通る揺れなんかも伝わってくるもんだから、嫌でも起きざるを得ない。
市内一交通量の多いここに住むことを決めた時にはこんな状況予想できなかった。
こんなの聞いてないよ、すっごいよここ。と、住み始めた初日にお母さんに弱音を吐いた。もうリタイア希望だった私だったけど、ここが2年もすれば天国になるなんて。住めば都、なんて誰が言い始めたのよ本当にその通りだったよ。
目を覚ました時点で「よし、今日は意識高めの一日にしよう。」と心に決めることができた日には、朝から少し外に出てみる。”大波止はパン屋さんの激戦区”と常に周りにも公言していた。私が言わずとも、本当に大波止にはおいしいパン屋さんがたくさんあるのだ。
たぶん、一番有名な bread a espresso 。改めて言う必要なんてないほどに有名で、味も抜群に美味しい。開店前から行列で、午前中には必ず売り切れている人気店だ。ホワイトチョコが入ってるパンが1番好き。コーヒーもおいしい。
元町石窯パン工房 ここのアットホームな感じが大好きだ。路面に面していて、前を通るといつもおいしそうな匂いがするもんだから、釣られて入ってしまう。どうかしたらここのパン屋さんの朝の焼きたてパンの匂いが、もれなく家の中まで届くことがあったから、すぐに準備して買いに走っていた。
朝11時にオープンするBLUEPLINT。ここのクロワッサンが一番おいしいと思ってる。ランチのスープセットを楽しみに出かけることがよくあった。
まだまだあるけどきりがないくらいの激戦区(だと思ってる)なのでぜひ調べて行ってみてほしい。
お腹いっぱいになったら、一旦家に帰って昼寝する。昼寝できる距離に家があるって素晴らしい。夜に備えて睡眠時間を確保するくらいには意識が高い私だった。いや、お酒が好きなだけ。
夜はとりあえず、酒場食堂みなとやへ。0次会の始まりだ。
好きで通い詰めてからは、お店に入ると「おかえり~!」と声をかけてくれる。一人暮らしをさみしく思っていた当初の私にとって、このアットホームさは本当にありがたかった。
なめろう、焼き鳥、餃子、締めの油そばや雑炊、焼きちゃんぽん。どのメニューも絶品な上に、一人で行った時には一人分に調整して提供してくれる。おひとり様にも優しいお店だ。
仕事帰りに寄って、一旦家に帰ってまた来店して、と何度も行く日もあったし、閉店してから店員さん達と飲むためだけに行くこともあった。また街で飲んだ帰り道にストーカーに遭った私を助けてくれたりもした。どこまでもアットホームで暖かいこのお店が今でも大好きだ。
そのあと向かうのは大抵、思案橋。
長崎で飲み屋街と言えば思案橋と皆が口を揃えて言うくらい、ここにはたくさんのお店が立ち並んでいる。
前に記事に書いたゲイバーも思案橋にある。(はず)
とにかくお店には困らないのが思案橋のいいところで。
「○○○が食べたい!」と誰かが提案さえしてくれればそれを提供するお店が必ずどこかにある。しかも徒歩圏内にぎゅっと詰まって。最高。
こうなると確実に日付は超えてくるし、超えてからがまた楽しいのが思案橋(だと思ってた。)とってもディープな街に変貌していく姿を見るのもまた一興。
と同時にちょっぴり危険な匂いもしてくるので、ここで私はいつも酔いを覚ますべく水辺の森公園までお散歩をしていた。
綺麗な出島のライトアップを横目に出島ワーフの前を通って、静かな水辺の森まで歩く。この道のりが大好きだった。足下には綺麗なライトアップ、横には出島ワーフのキラキラしたお店があり、顔を上げれば稲佐山の展望台や女神大橋が綺麗に光っている。正解三大夜景とも言われる長崎の夜景は、上から見るのももちろんとても綺麗だが、その麓に立っていても十分綺麗だ。
水辺の森のライトアップは、いつも寡黙で綺麗。夜のお散歩やウォーキングをするのにぴったりで、いつもそうしていた。歩きながら長崎港を眺めて、気持ちが静かに落ち着いた頃に家路につく。こうして私の1日は幕を下ろすのでした。
長崎を離れた今も、あの雰囲気を思い出して感傷的になることがある。そのくらい私は今も長崎が大好きだ。