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ティアハイムベルリンで働く!その1


こんにちは!愛犬・愛猫の一生を共に見つめるパートナー、トナリノの野原です。

私は2015年~2017年の間にドイツのベルリンに滞在し、複数の動物保護施設でのボランティアを経て、ティアハイムベルリンの非常勤飼育員(猫セクション)として働きました。
部署経験は1か所のみ、期間も半年ほどでしたが、ボランティアではなく正規職員としての日本人採用は初めてだと、当時の飼育担当の代表はおっしゃっていました。

ドイツで動物自然療法というペットケア分野の専門学校を卒業した経験から、現在は動物自然療法の訪問施術を中心としたトナリノを運営しております。

トナリノHP:


ありがたいことにこれまでたくさんの方よりティアハイムベルリンでの経験をお問い合わせ頂き、インタビューして頂きました。

お一人お一人とお話できることはとても嬉しいのですが、今後のトナリノの活動のためにも一度ここで私の経験をまとめさせて頂こうと思います。
(こちらの記事をご覧になってなお、お話の機会ご希望の方は有料セッションを設けさせて頂きます。)

なお、こちらの記事はトナリノの前身活動時、2018年に書いたものが中心となっております。


ティアハイムベルリンとは?

動物保護に関心の高い方はその名前をご存じの方も多いかもしれません。
実際、私もその施設をこの目で見てみたいという動機で、大学4回生のときにベルリン短期留学を果たしました。

ヨーロッパ最大の動物保護施設、ティアハイムベルリン。
16ヘクタール(サッカーコート約22面分)もの広大な敷地には、犬舎エリア数か所(譲渡エリア、非公開エリア)、猫舎エリア数か所(譲渡エリア、非公開エリア)、小動物、爬虫類、家畜、鳥類、鳩、猿エリアと、様々な動物種に対応した飼育エリアが存在しています。
加えて、警察に保護された動物を収容・管理するエリア、動物病院、入院セクション、動物墓地も備わっています。

また、動物保護・福祉施設のもう1つのミッションである啓発活動のため、講演会やバザー等のイベントも定期的に開催され、学校教育やデモ活動等、施設を飛び出しての活動も幅広いです。

2019年11月の時点で収容動物数約1400頭。運営には年間約1000万ユーロ(約12億円)以上もの費用を必要としており、管理・飼育部門全体を合わせて約180名のスタッフ(内獣医師8名)と、登録ボランティアが約800名ティアハイムベルリンに所属しています。

ティアハイムベルリン入口

興味をもったきっかけは?

私は幼い頃から動物が好きで、中学生の頃に日本の動物を取り巻く現状を知りました。それから動物保護や福祉に関心を持ち、海外の動物保護事情を調べていくうちに出逢ったのがティアハイムベルリンでした。その頃から強い憧れを抱いた結果、大学でドイツ語を学び、訪問が実現したのです。

最初は訪問できただけで達成感を感じ、満足していたのを覚えています。
ベルリン滞在中は何度も足を運びましたが、他の訪問者と同様、施設をぶらりとして帰るだけの繰り返しでした。

こういうこともありました。
インフォメーション(受付)に行きたくてドアを開けようとしてて、「押す(Drücken)」「引く(Ziehen)」くらいは読めたのですが、その通りやっても全然ドアが開かなくて…。
力が弱いのかな?と力づくで押したり引いたりしてたら、近くで見ていたおじちゃん達がなんか大声で言ってるんですね。恐らく「今の時間はまだ開いてないよー!」とかだったのでしょうが、ドイツ語って聞こえ方によっては結構こわいんです(笑)
てっきり怒鳴られてるんだと思って大パニックで、結局そのままその場を去ってしまったこともありました。

言葉が通じない、何を言ってるのかわからないという状況は、ビビリの私にとっては相当ストレスでした。
(もしドイツに限らず、外国に行ってみたいけどそういう言葉の壁を心配して実行に移せない方へ、私のこの話を聞いて何か安心感を与えられたら嬉しいです。なんせ、私はこんな状態から最終的にこの施設で働くまで至ったのですから!)

実は他にも、初めてのベルリン滞在中、大学の卒業論文のためにティアハイムベルリンの職員さんになんとかインタビューしたく、片言のドイツ語で一生懸命メールを書いたのを覚えています。
当時の広報担当者の方が快く対応してくださり、実際に事務方のオフィスでインタビューできることになったものの、緊張しすぎていたのと片言のドイツ語すぎて、あまり会話が成立していなかったように思います・・・(というか本当に覚えていない)。
最後に記念に写真を撮ってほしいという一言すら言えず、なんとも悔しい思いでベルリンを去ることになりました。

数年後、日本の動物保護団体による企画ツアーにて再訪を果たした際には、ここの雰囲気をすっかり気に入り、「いつかここでボランティアをしたい」と思うに至りました。
案外そのチャンスは早々に訪れました。というのも、そのツアー参加をきっかけに、思い切ってベルリンに住むことに決めたからです。

見学可能犬舎エリア

ボランティアはすぐできるの?

私は2015年、渡独1カ月ほどでティアハイムベルリンを訪れ、ボランティア申込書を提出しました。
ボランティアが活動できる範囲は限られていますが、それでも「犬の散歩ボランティア」「イベント手伝いボランティア」等内容が多岐に亘るため、希望を選択する様式になっていたのを覚えています(基本的にドイツ語で記載)。
早々にボランティアの夢が叶いそうで安心していたのですが、待てど暮らせど返事が来ない・・・。その間数回問い合わせするも、結局声がかかったのは8カ月後の話でした。
聞くところによると、時期によってはその分野のボランティアが足りているため、必要になってからでなければ受け入れをしないとの噂でした。

この8か月の待機期間が精神的になかなかキツかったです。
8か月待てば必ず話が進むという確信はなく、当時はもっぱらドイツ語学校に通うだけの生活でしたから、このままボランティアできないままワーキングホリデービザが切れてしまうのでは・・・などいろいろな不安が生じました。

あくまで私の体験談ですが、何かアクションを起こしたときになかなか返事がもらえない、担当者が忘れてしまっているなんてことがよくありました。
特に片言のドイツ語しか話せない外国人からの問い合わせってめんどくさいのかなーと思うほど、役所や企業のレスポンスが遅い。そういう風習なのかもしれないので、あまり深く考えず、何度も問い合わせすればいいと思います(これがなかなか手間がかかるのですが)。

実際、スペイン人のボランティアさんは私より片言のドイツ語しか話せなかったのですが、応募からすぐにレスポンスが来たらしいです(笑)

ベルリン大聖堂

ボランティアガイダンスに参加!

さて、ティアハイムベルリンでボランティアを開始する前にはまずボランティアガイダンスに参加せねばなりません。
ボランティアガイダンスとは、ボランティア分野別の説明会のことです(団体によってガイダンスがあるところもないところもあると思われます)。

私の場合、当時たまたま募集があったのが猫舎清掃ボランティアでした。
猫舎の一日の流れやボランティア内容の説明、怪我や感染症に関する説明がありました。
ちなみにボランティアをする場合は破傷風ワクチンを接種していることが条件となっています。また、職員になる場合は狂犬病予防ワクチン接種が必要です。

説明会では猫なでボランティアもあることが紹介されました。文字通り、猫を撫でるだけのボランティアです。
これは保護猫たちの人慣れ・社会化を目的としたもので、週に2回以上通える人に限られています。もちろん職員も猫が早く人慣れできるよう努力はしているのですが、日々の業務に追われているため充分な時間を割けないのが現状です。
この説明会に参加しそれでもボランティアを希望した場合、晴れてボランティアになることができます。

ボランティアの種類は様々(ボラ交流会もありました)

私が配置された場所

猫舎清掃ボラと言っても、清掃ボランティアが配属されうる猫舎は当時5舎ありました(2017年にセクション改定があり4舎となりました)。これも要はボランティアの人数次第で、どのセクションに行くかはそのときの状況によります。

私が割り当てられたのはSchillow HausⅡという猫舎でした。
ここは当時、妊娠中・産後の親子猫ゾーン、骨折等のオペ後の猫ゾーン、軽度疾病の猫ゾーン(重度の猫は入院セクション)、リハビリ猫ゾーンが混在している、珍しいセクションでした。普通は譲渡対象猫のみ、老猫のみというように建物毎にしっかりとセクション分けされているのだが、このセクションに限っては異なり、感染症予防や取扱いに非常に気を付けなければならないところでした。

Schillow Haus(セクションⅠとⅡがある)は基本的に見学不可で、どうしても仔猫が欲しい人や軽度の疾病持ちの仔でも迎えてあげたいという人が条件を満たせば見学・交渉することができました。
当時Schillow HausⅡには大体ですが、10ほどの親子猫ボックス、30ほどの軽度疾病猫のケージ、9つのリハビリ猫ボックスがありました。それに対して常駐職員が2名、アルバイトが1~2名、あとはボランティアが世話をしていました。
ボランティアが来る日の方が珍しいくらいだったので、実質3人前後でこの量を管理していかねばなりませんでした。
この量に対してこの人数がいれば十分と思われるかもしれないですが、一日8時間(休憩を覗けば7時間)の間に清掃はもちろん、投薬・給餌、健康管理、社会化、電話対応、見学希望者対応、補充、ゴミ出しまで全てを行わねばなりません。
一匹一匹を満足にケアしてあげるには全く時間が足りていなかったように思います。

見学可能猫舎エリア

一日の流れ

Schillow HausⅡの当時の職員さんの大体の一日の流れとしては次のようなものでした。

朝出勤し、タイムカードを押してから直接自分の持ち場へ向かい、業務開始。
まずはそれぞれの猫を見て、昨日のフードを食べた量や下痢嘔吐がないか、見た目の状況を備え付けのカードに記入します。
次にフード・内服を準備、給餌します。それが全て終わるまでに1時間程要していました。
終了後朝食がてら休憩をとり、清掃に取り掛かります。
1つ1つのボックスに入り、クッション類についている毛やホコリをはたき落とし、トイレの砂は全交換、トイレトレーは毎日拭き掃除をしています。床を掃き、モップ掛けをする。床を乾かしてる間に窓拭きを行い、最後にマットやトイレ、おもちゃを元の位置に戻し、そのボックスの清掃は完了です

人慣れしていない仔を中心に、途中おもちゃで遊んだりもします。
全ての部屋の清掃が終われば廊下の掃き拭き掃除をし、備品の洗浄、ゴミ出しを行う。
昼休憩を取り、書類処理や飼い主希望者の対応、猫たちの社会化を行う。
最後のフード・内服を給餌した後、16時にタイムカードを押して終了となります。
朝から16時までの間に獣医チームはティアハイム内のセクションを往診し、必要な処置を行っています。
Schillow Hausは見学不可ですが、譲渡対象の猫がいるセクションは開園までの間に掃除を一通り終わらせる必要がありました。
私が本帰国した後は13時開園になりましたが、当時は11時開園だったので譲渡セクションの朝は特に大忙しだったようです。
※現在は新型コロナウイルス感染予防対策として、施設内見学は毎週金曜日13時~16時のみとなっています。詳しくはティアハイムベルリンHPをご覧ください。

ちなみにここがドイツらしいな~というところが、各セクションの働き方はある一定の範囲でそこの職員さんたちに任されていることでした。
仕事はじめに朝礼をするわけでなく、大体するりと業務に入ります。実際どんな取り決めかは知りませんが、いつ休憩しようがいつ何の業務をしようが、そのセクションが問題なく回ればOKなのだと感じました。
職員さんらは日々の業務をこなしながら、経験的にこれはこの時間にした方が効率がいい、ここはこうしておいた方が良さそう等、内容を工夫されているようです。

ティアハイムベルリン飼育職員ユニフォーム


本日はここまでです!

次回は、
・ティアハイムのドイツ語事情(どこまでドイツ語ができなきゃいけない?)

について、私なりの見解を書いてみようと思います。
お読みいただき、ありがとうございましたありがとうございました✨

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