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ティアハイムベルリンで働く!その7(完)

こんばんは、愛犬・愛猫の一生を共に見つめるパートナー、トナリノの野原です。

今回はティアハイムベルリン勤務経験を踏まえて、私が日本の動物福祉の課題(今回は愛玩動物の中の犬猫に関して)として見ている点を挙げてみたいと思います。

人と動物は異なる生き物

まずもって、「日本は動物の数が多すぎる」とか「殺処分場があるからダメだ」とかそういう問題とは別に、動物好き動物嫌いに関係なく、各々が私たち人間と動物は異種動物であるという意識を持たねばならないと、私は強く感じています。

当たり前のようで、それができていない。

自分と共に生活している動物をペットではなく「家族」として認識する人は時代の変化と共に増えてきました。しかし、家族だとしてもその動物は人間ではないので同じようにはいかないのです。

犬であれば犬の習性、猫であれば猫の習性、身体的特徴、犬種猫種の傾向があります。
それをきちんと理解しておかねば問題が生じかねないのです。

例えば巷に流れる動画で、「人間の赤ちゃんが大型犬の顔を触っている。
大型犬のビックリした顔がかわいいですよね!」などというものがよくありますが、犬のシグナルを見ると危険な状態のものも中には見受けられます。
耳が後ろに下がっていて身体が硬直していたりする。
犬からすると「こわい、いやだ」のサインですが、それに赤ちゃんと親は気づいていない。

これが過度になると、いつかこの犬は自己防衛のために赤ちゃんを噛んでしまうかもしれない。その結果、「お利口な犬だと思ってた」の言葉と共に捨てられてしまう可能性だってあるのです。
この家族が犬の気持ちをきちんと理解していれば、そんなことは起こらないのです。

動物に癒しを求めて「家族」として迎え入れる人も少なくありません。

ですが、家族として一緒に暮らすのであれば、その動物種のことに関して知識を身につけ、きちんと向き合っていかねばならないのです。

動物はモノではなくて生き物なのですから。

動物にも感情や性格がある

子供の教育を他人にさせる?

これに共通して言えることは、自分の犬や猫をお金を出して他人にどうにかしてもらおう、という感覚を見直すべきであるということです。

ドッグトレーニングがその典型で、犬の問題行動(人間からすると”問題”行動、犬からするとストレスサインだったりする)をトレーナーに預けて修正してもらう。しかしいくらトレーナーが修正しようとも、結局一緒に暮らすのは飼い主であり、飼い主の協力なくしては元も子もありません。
※場合によってはこのお任せ型トレーニングの方が適切な状況もありますが。

「お金を払ったのに家に帰ってきたらまた問題行動をするじゃないか!」ではなく、犬のことをもっと理解しなければならないのです。

重複しますが、動物はモノではなくて生き物なのです。
お金だけでどうこうできるわけでは決してありません。

ベルリン郊外にある「犬の学校」

頭数コントロールの必要性

日本の動物福祉(ペットの分野)に関して言えることのもう一つは、頭数コントロールの必要性です。

ドイツでは犬に対して生殖器系の病気がなければ避妊去勢手術を行わないことが少なくありません(ティアハイムベルリンでは犬に関しては避妊去勢未と済、まちまちだったように思います)。
これは、性ホルモンのバランスの乱れ等が起こるし、なにより何の理由もなく動物の身体にメスを入れることは望まれないためです(法律にも記載あり)。ただ、そうするともちろん飼い主が犬の性周期や生殖活動の正しい知識を持っておかねばなりません。

一方、猫の場合は幼齢猫、重度疾病持ちを除き、ティアハイムで保護した段階で避妊去勢手術をします。猫は交尾排卵するため繁殖率が高い動物だからです。

日本では犬猫共に避妊去勢手術が推奨されており、地域差があるにせよ、行政や各動物関連の団体が一生懸命活動されています。
動物殺処分のことに限らず、どのように動物が繁殖し、どのような被害が発生するのか、またその防止策を社会全体の共通認識として広める必要があると、私は考えます。

旅行先で道端に猫がいて可愛いからといって餌を与えるなんてことのないようにお願いしたいのです。その些細な行動が後に大きな地域問題になりかねないのですから。
(逆にTNR活動をする目的・TNR後の地域猫のお世話のために適切な給餌を行っている方々の活動に関しては温かく見守ってほしいです。)

未避妊・未去勢猫が増えると・・・
(ティアハイムベルリン内の掲示物)

「社会化期中の社会化」の重要性

また、ティアハイムでも課題になっていましたが、仔犬仔猫の頃からの社会化、成犬成猫の人慣れ化も大事な要素であると思います。
いろんなものに触れさせ、いろんなことを経験させ、その仔に自信をつけさせることによって、ちょっとやそっとでは物怖じしなくなるし(災害の際も役立つ)、”問題”と言われる行動も起こしにくくなる。

そして飼い主・里親希望者の住環境とその仔のミスマッチをなくすことで、捨てられる動物を減らし、家族として最期まで幸せに暮らす動物が増えるのではないでしょうか。

その姿を見て動物にプラスのイメージを持つ人が増えれば、動物を飼いたい人が増え、不幸にも殺処分されていく命を救い、負の連鎖を食い止めることができそうではないですか?

要はドイツの保護システムや外国の法律等は単なる参考の1つに過ぎず、そこから日本なりのやり方を見つけていく必要があるのだと、私は思うのです。

動物はモノではなく感情が伴った、私たち人間と同じ生き物です。
そのことを今一度見直し考えることが、今の私たちには必要なのかもしれないです。

社会化を拒む日本社会の現状がある
(写真は日本で撮影したもの)

改善と新たな闇の繰り返し。
その中で私たちがまずすることは?

以上が2018年当時に書いたものがベースの記事になりますが、それから今日に至り、保護犬保護猫を家族として迎えようという動きがかなり促進された印象です。
と同時に、保護動物ビジネスであったり引き取り屋といった、最近になってようやく問題視され始めたペットビジネスの新たな闇も。
どこまでいっても動物がないがしろにされる悲しい事象が起こりますが、まずはそういった事実があることを知ることが大事だと思います。

本当に動物が好きで動物を守りたいのであれば、目の前にある情報だけを鵜呑みにせず、自ら調べ知ることが大事です。

学生さんからのインタビューでよく「私たちにもできることはありますか?」と質問されますが、私の答えはいつも「鵜呑みにしないこと。興味を持って知ろうとすること。そして伝えていくこと。」です。
たぶん想像していた回答と違う?からか、少しキョトンとされることは多いですが^^;
説明が下手な私の真意に、いつか気づいてもらえることを願っています。

ティアハイム経験談、長らくお付き合い頂きありがとうございました^^

もっと詳しくお話したい方は

ありがたいことにティアハイムベルリンでの経験に対するインタビュー依頼をちょくちょく頂きますが、今後は業務の効率化のため、当記事以外の追加の個別インタビューは有料セッションとさせて頂きます。
ご興味のある方は下記HPの問い合わせフォームよりご連絡ください。

この経験談が少しでも多くの方に、何かしらの形でお役に立てますように!

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