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突発性難聴になった話


耳鼻科なんて、いつか花粉症になった時に春先から初夏にかけて薬をもらいに行くぐらいだろう。


そう呑気に思えるくらい、自分には縁の遠い診療科だと思っていた。

その日は、職場の上司との面談があった。

やれ年上だの上司だのに過剰な緊張感を抱いてしまう気質ゆえに、
"とりあえずポップなビートで逃げ出したい、現実から遠く目を逸らしたい"気分であった。
(ハマいく「ビートDEトーヒ」より引用)


その日が近づくにつれ、どんどん気が重くなり、前日は2~3時間しか眠れなかった。
数週間前から続く熱中症の後遺症なのか、3週間ほど微熱が続いたこともあり、体調は絶不調。

そして面談中、15分ほど経った頃だろうか。右耳から強烈な耳鳴りが響き始めた。


それに伴い、段々と右耳だけプールの中にいるような、水で塞がれているような感覚になり、テーブルを挟んで目の前にいるはずの上司の声が遠くの方から聞こえてくるように感じた。

最初はたま〜に起こる耳鳴りだろう、昨日寝れなかったからな。すぐ収まるだろう。と思っていたのだが、面談が終わったあと数時間経っても状態は変わらず、そして段々とめまいを覚え始め、いよいよこれはまずいと自覚した。

その日の帰宅時に、駅で地下鉄を待っていた時、近づいてくる電車の轟音に耳が張り裂けそうになったのを今でも覚えている。


次の日

翌朝、近所の耳鼻科に行き、症状や耳鳴りが起きたタイミングを全て話して聴力検査をした。

「突発性難聴です。」

ニュースでたまに見聞きする、芸能人やアーティストがなるソレ、が自分の人生にアサインしてきたのか。

私は宣言された後、少し泣いた。

お医者さんの説明は続く。
一日に1~2人は突発性難聴の人を診断すること、それくらい珍しくないこと、
耳鳴りを感じた翌朝に来院したのは偉い(48時間以内に治療を始めると良い、遅くとも2週間以内)ということ、
服薬で1~2週間で治る人もいるということ。


ただ、私は中等症だから入院がおすすめだということ。
話の内容とは裏腹に、底抜けに明るく、私の左耳に向かってやさしく教えてくれた。

ひとまず、服薬で1週間様子を見ることになったが、とにかく、絶望していた。

というのも元々音楽が好きで歌や楽器をやっていたというのもあり、耳が良く、楽器の音色の違いや微妙な音程も聴き分けられることをひとつの自慢にもしていたため、自分のアイデンティティをひとつ奪われたような感覚になってしまったのだ。

イヤホンのRから鳴っている音が私の耳には全てキャンセルされる。

ただただ絶望だった。


発症1週間

それから1週間は仕事にも行きながら服薬をしていたのだが、接客業という職業柄、店内に響き渡るBGMとお客様の話し声、他のスタッフの会話、ハウリングのように増幅する耳鳴りで目眩が治まらず、服薬の効果も感じてはいたが、よりしっかり治すために、決断をした。

初診から1週間。

夫や母、職場の頼れる後輩に背中を押され、
「僕が君の父親だったら必ず入院を勧めるよ」が決まり文句の耳鼻科医に、総合病院への紹介状を書いてもらった。

翌日から1週間、入院することになった。

入院中のこと、退院してからのこと、これからについてもまた、お話できたら。

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