ドイツもEU離脱?経済合理性よりも国民感情が左右する政治

政治というのは、経済データなどの合理性よりも、時に、国民の感情が世論を形成し、決まってしまうことがある。日本でいえば、郵政民営化がそうだ。郵政民営化でどのような経済的なメリットがあるのか、小泉純一郎首相はほとんど示すことがなかった。「改革なくして成長なし」「官から民へ」などのキャッチフレーズで国民を動かしただけだ。「先導者」ならぬ「扇動者」であったと思う。他にも、アメリカ合衆国では、トランプ氏が「メキシコとの国境に壁をつくる」と発言し、低所得の白人層から喝さいを受けた。メキシコからの移民がどの程度、アメリカ経済に悪影響を及ぼすのか、データを示すことはなかった(もちろん、不法移民はいけない。だが、トランプ氏は「わざと」明確に区別せず発言していたと思う)。

JBpressによると、どうも、ドイツもイギリスと同様に、EUから離脱しようとする動きがあるようだ。だが、ドイツとイギリスでは、地理的・経済的状況が全く異なる。

イギリスの場合は島国だ。そのため、英仏海峡トンネルを通るか、船か、飛行機でないと入国できない。一方で、ドイツは大陸国だ。多くの国と国境を接している。ドイツは、多くの移民を受け入れて、労働力不足を補っている。これは、EUのシェンゲン協定のおかげだ。こうした側面を無視して無理にEU離脱すれば、国境でパスポートをチェックする事務手続きが発生したり、就労ビザが必要になったりして、深刻な労働力不足になるだろう。失業率の高さを移民のせいにしても仕方がないだろう。

さらに、記事でも取り上げられている通り、ドイツは貿易立国だ。実は、ドイツは日本よりもずっと貿易のメリットを享受している。以前にも書いたが、EU域内は関税がほとんどかからないし、ユーロ圏であれば統一通貨ユーロなので為替変動もない。ドイツから一方的に大量の輸出をユーロ圏の他国にしても、為替で不利になることは永遠にないのだ。これが、独自通貨マルクに戻れば、輸出が増えると(通常は)マルク高となり、輸出主導の成長は持続不可能となるのだ。

わざとマルク安で戻るという卑怯な裏技も紹介されているが、国境検問や関税事務が発生するデメリットのほうが大きいだろうとも書かれている。私も同じ意見だ。

イギリスはもともと、旧大英帝国を構成した諸国とのつながりが強い。そのため、EUから離脱しても友好国があるのだ。だが、ドイツは違う。くれぐれも、ドイツ国民は冷静な判断をしてもらいたいものだ。

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