緑色木曜日  Gründonnerstag (グrリューン・ドナースターク)

 緑色は、形容詞 grün (グrリューン)で、木曜日が der Donnerstag (直訳すれば、「雷神の日」) である。なお、日本語では、r音とl音の区別をしないが、今後はラ行音で"r"印を特別に付けたものは、r音とする。このr音は、英語と異なり、水なしでうがいするようにして、のどひこを震わせて発音する音である。

 さて、なぜ木曜日が緑色なのか。まず、緑色木曜日はいつかと言うと、これは、復活祭と関係があり、キリストが受難する金曜日の前日である。だから、この木曜日の晩に、有名な「最後の晩餐」が執り行われた。また、この晩イエスは弟子たちの足を洗ったことから、この日は、「洗足木曜日」と別の言語圏では呼ばれる。ローマ・カトリック教会の典礼から言うと、この日の典礼色は白と決められているので、フランスなどでは「白い木曜日」とも名付けられている。「緑色木曜日」という呼び方は、それ故、ドイツ語圏特有の呼び名で、どこからこの名が来たのかには諸説があるが、どうもこれには緑色が持つ象徴、「新しい生命、新生」と関係があるらしい。ルカによる福音書では、自らの罪を悔いて改心した者は、「緑の人」と呼ばれるという。また、復活祭前の断食の時期に、新しく芽吹いた新緑野菜を食することを奨励された、ゲルマン民族の古い慣習からこの言葉が来ているのだとも言われる。

 コロナ禍の今年2021年は、この緑色木曜日がエイプリル・フールと重なり、4月1日となった。次の4月2日はイエスの受難の日となり、例年であれば、J.S.バッハの『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』が主だった教会で聞かれるのであるが、今年はコロナの第三波の拡大に伴ない、このような大がかりな演奏は控えたので、簡素なミサのみが執り行われるとのことである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?