クマネギ Bärlauch (ベア・ラオホ)

 「クマ」という言葉には、「大きい」(例えば「クマンバチ」)とか「強い」とかの意味があるが、ここでは、動物の熊で、ドイツ語で、der Bärである。r音は、例の如く、音節の〆なので、しっかり発音せず、「あ」と発音してよい。ä音は、「a(アー)ウムラウト」(aの変音)というが、日本語の発音としては、え音と考えていい。逆に、ドイツ語のe音、とりわけ、長母音 [e:] は、日本語的に考えてはいけなくて、しっかり唇を上下とも、狭め、さらにしっかり横に張りつめて発音しないとドイツ語の発音らしくならないので気を付けてほしい。英語のberryに当たるドイツ語 Beere の発音は、「べーrレ」で、この「ベー」である。

 ネギが、der Lauch であるが、au音は複母音で、「アウ」ではなく、むしろ「アオ」と発音する。ch音は、今までにも何回か書いてあるが、ここでは、は行音と考え、前の母音に合わせて、「ふ」か「ほ」と発音することになる。ここでは、カタカナ語としては「ラオホ」としたい。ドイツは、ケーキが正にそうだが、大振りなので、ドイツの喫茶店でケーキを食べるときは、食べきれるか、よくお腹と相談してから、注文してほしいものだが、野菜も大体は大振りである。ネギ一本も日本のものより太くて長い。ゆえに、ドイツで日本風のネギを使いたい時は、ドイツ語で言うFrühlingszwiebel (フrリューリングス・ツヴィーベル「春のタマネギ」) をお勧めしたい。

 という訳で、「クマネギ」は、和名と一致する植物で、学名 Allium ursinum も同じ意味で呼称されている。よくブナ林の中の日のあまり当たらないところに密集して生えている。葉は、早ければ雪がある時から雪を下から掻きわけて生えだす。ゆえに、「ベアラウホ」は、春先から見られる植物であるが、森の中を歩いていて、突然ニンニクの匂いがしたら、その近くを探すと必ず見つかる、食用にできる雑草で、場合によっては、町立公園内でも見つけられる。葉の形は、笹の葉の感じであるが、枠取りはなく、身も薄い。5月に入ると、白い小さい花を付け始めるが、そうなると、葉が厚くなるので、あまり食用には適さなくなる。

 こうして、4月中、森の中で見つけた「ベアラオホ」を摘み取ってきて、水洗いし、2㎝ぐらいの幅で切り、スープの薬味にして使ったり、摘み取ってきてすぐにこれをペーストにして、後からパスタといっしょに食べたりもできる。これもまた、戸外からうちに持ってこられる、春先の風物詩の一つである。

 なお、ドイツの首都 Berlin は、ドイツ語の発音としては、「ベアリーン」と発音する。 アクセントは「リー」に掛かる。この「ベア」から、Berlinの市の紋章に「クマ」が入っているのが、肯けるわけである。が、Berlin の言葉自体は、スラブ語から来ていて、「berlo」が湿地帯を、「-in」が人の居住地を意味するそうである。ものの本によると、ロンドンやブリュッセルの都市名も同様に湿地帯に関係のある言葉から来ているとか、色々調べてみると、よい勉強になるものである。

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