清掃(当番)週 Kehrwoche (ケーア・ヴォッへ)
前回の、2021年5月15日の投稿 “道路「掃除人」 Straßenfeger (シュトrラーセン・フェーガー)“ で道路清掃人にも関わる言葉を扱ったので、今日は、Kehrwoche (ケーア・ヴォッヘ) について述べる。
「清掃」に当たる言葉が、Kehrであるが、これは、kehrenという動詞から来ていて、南ドイツの方言として、Straßenfegerのfegenと同様に、「ほうきなどで掃く」という意味がある。hの文字は、長母音になる記号であり、ここは、難しい発音 [e:] となり、音節の〆となるr音は「ア」と考える。
週は、die Wocheで、w音は、ヴ音で、例のch音は、軟口蓋を震わせるようにして、「ザラザラ感」が出るようにして、「ヘ」と発音する。
このKehrwocheという言葉は、北部ドイツではあまり聞かない、とりわけ、南西ドイツでよく聞かれるものである。何かというと、週のある日、大抵は金曜日か土曜日に、集合アパートに住んでいると、各戸に当番が回ってきて、建物の全階段、とりわけ地上階を清掃する分担を言うのである。ゆえに、建物の入り口などには、その週の当番表が出ている場合がある。この当番を真面目にやらないと回りから顰蹙(ひんしゅく)を買うのである。個人主義の社会とは言え、やはりこう言う社会的「拘束」がドイツ社会にはあるのである。
この社会的「拘束」ということでもう一言述べると、ある建物を所有して、そこに住んでいる場合、その建物に付属して付いてる、また自分が所有している歩道に関しては、その歩道を清掃する義務が所有者にあるのである。つまり、「貴族は社会的責任を持っている。」という諺と同様に、「所有は義務を伴なう。」なのである。という訳で、金曜日か土曜日の午後には、歩道を清掃している人がよく見られるのである。
また、冬の間は、雪が降ったり、よく冷え込んで道路が凍りそうな時には大変である。朝早く起きて、雪かきをしたり、凍ったところに砂を撒いたりしないといけないのである。これを怠って、ある歩行者が自分の管轄の歩道で足を滑らせて転び、その際に怪我をしたという場合には、その治療費は家主が払うことになるのである。誠に、怖い。
「歩道」には、der Gehweg (ゲー・ヴェーク) という一般的な名称もあるが、この他に、der Bürgersteig (ビュrルガー・シュタイク) という言葉がある。
der Bürger (ü音は「ュ」と発音する)は、名詞die Burg、つまり、城から来ている言葉で、城に住んでいる人、城が城塞都市に発展すると、農民に対する「市民」の意味を得るようになった。なお、彼らのうち、その上層部は、都市の自由権を持っている者であるから、日本史における「町人」ではない。
der Steig (ei音は複母音「アイ」、g音は、音節の〆なので、k音である)は、動詞steigen(上る/昇る)から来ていて、基本的には細い坂道などをいうのであるが、ここでは、足を上げて乗って、歩いて行くところの意味である。ゆえに、Bürgersteigの歩道は、縁石でしっかりと車道から区切ってあり、また、縁石の高さまで歩道全体を高めてある歩道を言うのである。
ヨーロッパ中世の城塞都市の中では、まだ下水道が整備されておらず、汚物は直接道路上に投げ捨てられた。それで、馬車が通る部分の車道と区別して、靴が汚れないように、Bürgersteigが設けられるようになったのである。Kehrwocheの社会的「拘束」も、どうも、こんなヨーロッパ中世都市の発展の歴史と関係があるようである。
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