ホシムクドリの「巣箱」 Starenkasten (シュターrレン・カステン)

 ホシムクドリは、der Star である。その複数形が Stare で、st音は、これが音節の頭に来た時には、ドイツ語で「シュ」と発音する。-nは、二つの名詞を接続させるために付加された接尾語である。それから、「巣箱」が、der Kasten で、この語は本来は、箱、ボックス、ケースなど箱状のものを指し、ここでは、ホシムクドリとの関連で、「巣箱」と訳した。

 さて、これだけでは何も面白いことはないのだが、少々日が経っているけれども、先日友だちからこんな話を聞いたので、それをここに書こう。

 「魔女の夜」のことについては、4月30日の投稿「森師匠」ですでに書いた通りである。この夜、町の悪戯っ子たちは徒党を組んで、そして、夜陰にまぎれて悪戯をする。今年2021年は、コロナ対策で夜10時以降は、特別な用事がない限り、外出禁止であったが、それでも悪戯しに出たグループがあった。

 彼らは、恐らく前々から準備していたのであろう、約2mの高さで、直径40㎝程度の円筒状のものを灰色に塗り、地上から1m程度の高さに黒色の輪を二重・三重に描いて、ある道端に立てておいたのである。これは、ドイツではここ数年前から設置されている「ネズミ捕り器」、スピード違反取締り機に似せた模造品であった。

 この模造品に騙されて、5月1日のメーデーにこの道端を通ったドライバーは、こんなところに急にネズミ捕り器が立っているのをいぶかしく思いながらも、ガスペダルから足を外してスピードを落としながら、この場所を通ったとのことである。悪戯されたドライバーには申し訳ないが、その近くの住民は静かな祝日が過ごせたとのことで、これは珍しくも「歓迎された」悪戯の一つである。

 さて、この固定のスピード違反取締り機の旧型は、全く別の形と色をしていた。直径約15㎝の円状の棒が地面から2mぐらいまでの高さに伸び、その上に30cmから40㎝程度の幅のボックスが乗っており、その横広の面の真ん中に、信号の黄色みたいな丸い輪がある。これがスピード違反を取り締まるカメラの目である。そして、この全体が、ベージュ色に灰色を混ぜたような、何とも言えない色に塗ってあるのである。そして、この代物が、ホシムクドリの巣箱に似ているところから、Starenkasten という言葉が冗談半分にスピード違反取締り機の俗称に使われたのであった。

 ホシムクドリ(学名:Sturnus vulgaris)は、よく真似をして鳴く鳥で、また、昔は食用としても食べられていたそうである。そんなところから、Starenkasten という言葉が生まれたのであろう。この鳥は、環境によく適応するらしく、また、繁殖力も強いということで、ローマなどでは、夕方などに何百羽と群れを作って飛ぶ光景が見られるという。が、同時にこの鳥の騒音、糞害もよく報告され、「害鳥」の一つに数えられている。

 それでも、ドイツでは、黄色い嘴をし、黒からこげ茶色の地色に、メタリックな緑色と白い斑点が星のように付いた羽根を持つこの鳥は、2018年に自然保護団体からその年の鳥として取り上げられた鳥である。

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