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明治維新以後、文明開化によって滅び逝こうとしている日本古来の文化を記録した英国人旅行家、イザベラ・バードの物語。佐々大河著『ふしぎの国のバード』8巻!

さて、19世紀末のイギリス人の女性旅行家、イザベラ・バードとその通訳兼案内人である伊藤鶴吉との旅路も巻を重ねて8巻に至る。

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まだ目的地である蝦夷(北海道)はまだ遠く、7巻に続き秋田県の話となる。

今巻では帯にも大きく書かれているように、日本式の結婚式にスポットを当てます。

さすがに100年以上も前の風習となると、同国の我々でさえ「そんな結婚式はあれへんやろう?!」と思えるようなこともそこかしこに見られて新鮮でした。

そもそも今の時代、既婚者だからってお歯黒しないし。

しかもその式を挙げる2人が曰くありげでその人間関係も含めてなかなかに趣きが深い。

こういうのストーリーテラー泣かせだと思うんですよね。

ただあったことを書き連ねるだけではなく、そこに事件とか、なにか問題とかが提示されて物語に深みが出てくるという。


文化自体が時代の変遷と共に喪われていくのを、当時そういった文化風習を記録していくという習慣がない日本の辺境の地を旅し書き記していくことが、かのイギリス人トラベラーの目的だったとされる。

もう一つ、単話で興味深かったのは、イトこと伊藤鶴吉の朝の身支度である。

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こういった小物一つにしても当時の資料を調査しないといけないだろうに、作者の気合の入れ方を感じさせる。

正味の所、私自身この本を「単なるコミック」というよりも、ほぼ学術書の類いとして見ている部分があり、このお話を通してイザベラ・バードの著書 "Unbeaten Tracks in Japan"(直訳すると「日本における人跡未踏の道」となる)『日本奥地紀行』の全貌を知ろうとしているのだ。

なので是非この感じで最後まで連載をしてもらいたい。

さてさて、物語は秋田を経てとうとう蝦夷地は目前……だがどうやらこの調子だとまだまだ一波乱ありそう。

そして蝦夷地ではプラント・ハンターであり、伊藤鶴吉の前の雇用主チャールズ・マリーズも待ち構えているであろう。

また日本人と英国人との旅程はいわゆる”バディもの”の構造も含めており、文化風習の異なる2人がやがて絆を深めて、信頼を築いていくのも見物である。

そんな『ふしぎの国のバード』。以降に期待する。


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