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カクカクサギと賢者の石

誰もが皆、一度は目の前の両親は本当の親ではなく、
別の、本当の、生みの親がいるはずだと想像したことはあるでしょう。

でも現実は違うのです。

いや、違わなかったって人もいるんでしょうけど。
それでも親が大魔法使いだったって人はいないわけですし。
あ、親がマジシャンだったらありえるのか。

あーとにかく、
幼い想像と現実ってのはかけ離れているのです。

なお、いつもの如くですが、
私もメガネの坊やが自分が魔法使いだって気付くのと同じように、
主人公が世界の真実に気付くという小説を考えたことがあります。

俺はある日、すごい高熱にうなされていた。
全身の筋肉が思うように動かず、意識が朦朧する中、
水を飲もうとベッドから出ると、そこは自分の部屋じゃなかった。
それどころか自分の体も自分のそれではない。
いくつものケーブルがつながれている。
驚く俺をよそに不思議なガスが充満し、再び意識を失う。
次の日の朝、昨日の高熱が嘘のように体は快調。
不思議な部屋やケーブルも夢だと思おうとした矢先、
「それ」が見えていることに気付いた。
オンラインゲームのキャラクターの頭の上に表示されるログインユーザ名、
それが現実の世界でも見えるようになっていた。
「もしかしてこの世界って・・・ヴァーチャル・・・なの?」

出典:パパSEの頭の中

もちろん、一文字も書けてませんよ。
だって、カクカクサギだから。

駅の柱に向かって突っ込みたがるカクカクサギは大勢います。
〇〇になろうにも、〇〇アップ+にも、もちろんこのnoteにも。
見破るのは簡単です。
彼らの話を聞いていると、
「このネタって斬新じゃない?」
「転生モノの次はこれだと思うんだ」
「こういうの書けば間違いなく売れる!」
などとネタの話ばっかりしているのです。

そう、カクカクサギって斬新なネタ、流行を生む設定、
もしくは「絶対に」売れる作品のことばかり考えて書かない。
いえ、考えるのは自由ですが、
今の時代、完全な斬新なんてなかなか見つかりませんし、
流行は誰かの頭ではなく時代が生み出すモノだし、
そもそも「絶対売れる」なんて物はありません。

それなのに「完璧なネタ」を求めてあーだ、こーだ考えているのって、
なんだか中世の錬金術師が不老不死の薬を作るために、
存在しもしない賢者の石を探し求めるが如く滑稽じゃないですか。

いえ、分かりますよ。

誰だって不安なんです。
自分の作品が多くの人に認めてもらえるのかどうか。
だから書く前に認めてもらえるという保証が欲しい。
失敗しない保証が欲しい。
書いたものが売れる保証が欲しいんです。
ただ誰も保証してくれないから書けないでいるんです。

人が死を恐れて「不老不死」を求めるのが自然なら、
物書きが駄作を恐れて「完璧なネタ」を求めることも自然。
私たちが書かないで考えてばかりなのは誰にも責められない。

でも、

それでも、

一部の錬金術師は「賢者の石」がないことに気付き現実を受け入れると、
それまでに身に着けた知識で科学と医療の発展に貢献しました。
私たちもそろそろ「完璧なネタ」は諦めて、
今ある、自分の知識、経験、そして夢を武器に作品を書くときなのでは?
一切の保証がないネタ、それが私たちの現実なんです。

大丈夫。
だって今日までしっかり考えてきたじゃないですか。
仮に「本当はデタラメばっかりで考えてませんでした」って人も、
それまでの間、何かしらの経験を積んできたはずです。
経験でなくてもいい。
読書でも、ゲームでも、仕事でも、引きこもりでもいいじゃない。
何かしらの武器ができている。

今の私たちなら、書けますよ。
一緒に書きましょう。

だって、その書く書く詐欺の被害者は、
他でもない、あなた自身なのですから。

※この記事は私の個人的な独断と偏見で書かれております。
とは言うものの、今まであった物書きさんの多くが、
書く前にネタバラしする人って本当に少ないですよね。
そりゃ、読み手からしても先にネタバラしされたらつまらないし。
大まかに「ミステリーを書く」とか「次は明るいのがいいな」とか、
「春だから桜がテーマがいいな」とか、
そう言う大まかなイメージ以外は人に言わないのが吉。
・・・あれ?
私、変なこと言ってます・・・?

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