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全ての航空機乗員の努力に敬意~JAL機・海保機衝突事故における危機対応

新年を迎えましたが、世界ではウクライナ、中東で戦争が続いており、日本でも、年明けから大規模な震災や事故が発生しました。犠牲になられた方、そのご家族の方に心からお悔やみを申し上げます。

1月2日夕刻に発生したJAL旅客機と海上保安庁航空機の衝突事故においては、海保機の乗員5人が犠牲になりました。一方で、JAL機の乗客・乗員379人は全員脱出することができました。

発生後10日を経過し、事故の状況が少しづつ明らかになってきました。SNSでも多くの方が言及されていますが、賞賛されるべきは、JAL機の乗員の方々の素晴らしい危機対応であったと思います。

衝突後、何とか停止した機体の外では激しい炎が上がり、機内には煙が広がっていきます。限られた時間の中、両側8か所の脱出口のうち安全な箇所を特定し、的確に乗客を誘導し、全員の脱出につなげるのは容易なことではなかったと思います。乗客の安全を第一に考えるパイロットと全客室乗務員の意識の高さ、責任感あふれる行動のなせる業であったと思います。

衝突直後から乗客は異変に気づき、騒然となっていたようですが、客室乗務員は「落ち着いてください」「鼻と口を覆って」「姿勢を低く」などと声を上げ、乗客も冷静に協力していたようです。客室とコックピットの連絡システムがダウンする中、それぞれの乗員が責任をもって的確に状況を判断し、自らの役割を果たしたようです。機長が最後に全員の脱出を確認し、自らが機外に出たのは、衝突から18分後。そしてその2分後には機内にも火の手が回ったそうです。

緊急時にこのような対応ができるということは、常に高い意識をもって、日ごろの訓練を怠らず、最悪の状況を想定し、シミュレーションを繰り返してこられたのだと思います。

考えてみてください。通常のフライトでは、ニコニコして「チキンですか? ビーフですか?」と言って食事を配ったり、寒そうにしている乗客に毛布を配ったり、そういった仕事をしているのです。いや、もちろんそういった仕事も大切なのですが、その人たちが、いざ事故となると、爆発、炎、煙から私達を守り、命を救ってくれるのです。

今回のJAL機に乗り合わせた乗員は、多分特別な人たちではないのです。星の数ほどいる航空機乗員の中で、たまたまあの機体を担当した12人なのです。この、たまたま事故機に乗り合わせた12人が、今回のようなすばらしい事故対応をできるということは、恐らく、すべてのパイロット、客室乗務員の方々が同じようにスキルを磨いているのです。

多分、ほとんどのパイロット、客室乗務員の方は、一生を通じて、このような事故に遭遇することはないでしょう。それは、とても幸運なことなのですが、逆に言えば、日ごろの鍛錬の成果を見せることはできません。ですが、万が一にも遭遇してしまった場合にしっかり対応できるよう、すべての乗員の皆さんが研鑽を積んでいるからこそ、今回の379人の貴重な命が救われたのだと思います。

本当にありがとうございます。



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