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30by30は”目標”ではなく”手段”

生物多様性条約 第15回締約国会議(COP15)において、2030 年までに保護区の面積を地球上の表面積30%以上に拡大する目標」いわゆる 30by30 が設定されました。

自然保護区の拡大は、野生生物の生息地を確保し、生物多様性の消失を抑止する有力な手法です。実際、生物多様性条約の枠組みにおいて、保護区面積率の目標を設定して,徐々に保護区を拡大してきた経緯があります。

1992 年から2010 年にかけては4〜17%、2010 年から2020 年の愛知目標では陸域の17% と海域の10% を保護区にする目標が掲げられました。しかし、このような国際的な保護区拡大の取り組みにも関わらず、生物多様性消失を抑止できていない実態があります。

なぜでしょうか? 

この理由の一つとして、保護区の「質」が挙げられます。

つまり,従来の保護区の拡大施策には,保全の実効性、保護区面積に対する保全効果(費用対効果)の観点が十分でなかったのです。

30by30 に取り組む前に、私たちが認識すべきこと。それは、過去数十年にわたる保護区拡大は、その空間配置や保護区管理の実効性が十分ではなかった、という事実です。

この問題点を理解しないと、これから 30by30 を数値的に達成したとしても、生物多様性の消失を抑止できないでしょう。

30by30 は、その数値達成が目的ではなく、保護区によって生物多様性の保全効果を向上させるための”手段”なのです。

従来の保護区面積の拡大が、生物多様性の保全効果に十分に繋がらなかったのは、保護区面積の数値を稼ぐこと自体が目的になってしまったことに一因があります。これは、グッドハートの法則、キャンベルの法則で指摘されている「測定が目標になると、その測定は適切な目標でなくなる」という帰結です。

生物多様性ビッグデータ・テクノロジープラットフォーム

生物多様性ビッグデータ、AI、そして最適化分析を駆使した、私たちの分析によると、保全上重要なエリアに保護区を理想的に拡大させた場合、野生生物種の絶滅リスクを緩和できることが数値的に明らかになっています。


一方、保護区を設置すると、保護区内の土地・海域の利用を法的に制限することになるため、生物多様性の保全重要性だけを考えて保護区を理想的に拡大できるわけではありません。民有地など、どこでも保護区に指定できるわけではなく、保護区を設置できる場所は、社会的・経済的に制限されます。


陸や海の豊かさを保全し、なおかつ、社会経済的な利用の調和を具現化する科学的アプローチに基づいた空間計画が不可欠で、これを実装するのが、生物多様性ビッグデータ・テクノロジープラットフォームなのです。


いただいたサポートは、 生物多様性保全の研究成果を社会実装するために、日本各地を訪問してお話させていただく際の交通費に使わせていただきます。