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ナンバーなショットと感傷的なサマーと一期一会な愛のレンタルの話

7月18日。
福岡paypayドームのロックフェス、NUMBER SHOT 2021の二日目を観にいってきました。これは2014年から福岡市の海の中道海浜公園で毎年行われてきたロックフェス。しかし昨今の情勢により、2020年は中止となった。今年も開催が危ぶまれたものの、様々な人の手により福岡ドームに開催場所を変え、終了まで無事に走り切ることができたものでした。

知ったようなことを書いていますが、ぼくはといえばエビ中さんが出演するということで初めて千葉から飛んでみた人。現在のメンバー構成で彼女らを見られる機会も残り数回・・・というかアナウンスされている限りでは事実上のラスト。見に行かないテはないと思って飛び立ったのです。初心者っすごめんなさい。

以下、日記というか感想というか、自分の感情の動きとかいろいろと書き残しておきます。言い訳します。書き終えることを目標としましたので、まとまっておりませーん。長いでーーーーーーす。それでよければ。

・・・長いので、この際さきに結論書いちゃいましょっか。
NUMBER SHOT 2021は、音楽の楽しさを伝えてくれる、素晴らしいフェスでした。

よし。あとはめっちゃくっちゃなので自己責任で。





飛び立つその日にたどり着くまで

話は数日前にさかのぼります。

昨今の情勢により、このフェスは福岡ドームで指定席制にて行われるとのことでした。フェスの醍醐味のひとつといえば、目当てのアーティストのときにステージ近くに攻め入ってワクワクしながら待つ時間です。それが奪われてしまったのは、まあ仕方がない。フェス自体の時間が強奪されることに比べれば、何万倍幸せなことだろうか。ぼくは冷静なおとななので、そのあたりの判断はできるのです。

しかしワクワク時間を奪われたロックキッズたちのために、ナンバーショット運営陣は、抽選による事前登録制でのステージ前スタンディングエリアというものを用意してくれました。たとえばエビ中さんを希望すれば彼女らの時間に、スキマスイッチを希望すればその時間に、ステージすぐ目の前のスタンディングエリアに整理番号順に入れてくれるのです。フェスを楽しみたいお客さんのために、感染防止を徹底しつつ、なんとかフェスの醍醐味を残してくれたのです。これは本当にありがたいことです。

そしてぼくは、無事にその抽選にはずれました


そしてフェスの数日前。チケットのダウンロード日程に入り、福岡ドーム内の指定席がどこであるのかがわかるようになりました。

ぼくは無事に、ステージから最も遠いあたりのブロックになりました。

見ての通り、やさぐれていますね。にじみ出てますね。みっともないですね。こういう大人の姿って、あんまり他人に見せるもんじゃありませんよね。


しかしそんなおっさんに、ナンバーショットに向かう前々日、ちょっとだけ違う方向からひとつの幸せな知らせが飛び込んできました。

エビ中にあのコが帰ってくる。

彼女が休養を発表してからメディアに戻ってくるまでの時間は300日に満たなかったそうですが、ぼくはそれ以上の長い時間を待ち続けたような気がしていました。彼女の休養と復帰の発表は、それだけ大きなことだったのです。
この予告が出てからYoutubeに本編の動画が公開されるまで、いろいろなことを思い出しました。詳細は下記の記事にて書いております。



そして現金なものですよね。
ぼくは彼女の留守を守り続けた5人の事実上の最後のステージを、そして彼女の復帰を信じて待ち続けた6色または7色のペンライトの海を、最後にこの福岡ドームという大きな会場で俯瞰の位置から見られることに、大きな意義を感じざるにはいられなくなったのでした。あれだけやさぐれていたくせに、一気にテンションはMAXに。

そして福岡へ向かう日。さあ飛べ、あとは飛ぶだけだ。


着いたー。ホテルの部屋はなないろの716でした。

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福岡にて

さてフェスの当日。
ホテルからバスにゆられて福岡ドームへ。結構長いことマリーンズを応援している自分ですが、試合観戦で訪れたことはありません。この球場には初めてやってきたのでした。でかい。立派。きれい。ちくしょうホークスめ。

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ドームの中に足を進めてみる。夏空が夏であることを過剰に主張してきたような明るさとは打って変わって、こちらは薄暗い。ぼくの知っている光を通すエアドーム構造の東京ドームとは違い、福岡ドームはしっかりとした屋根が空を覆っていて、外光を遮っていた。イメージしていた光景と違って、ここは真っ昼間からちゃんとしたコンサート空間になるのだな。

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アクエリアスを片手に自席へ。遠い。遠いよ。笑ってしまうほどにステージが小さく見える。そしてそのステージに立つ人はもっともっと小さい。通報されるレベルで大爆笑してしまうほどに小さい。
上の写真はスカパラ谷中さんのツイッターから拝借してきたものですが、ぼくはマイクのちょっと少し上の部分、スタンド中段にいます。まぬけヅラして写真に写っているはずなのですが見えますかね。解像度の問題で無理ですかね。4kか8k…いや64kくらいの画質ならきっと見えます。

でもこんなに遠くからエビ中さんの姿が見られることなんて、今後もそうはないだろうと思います。強がりと本心だいたい6:4くらいの割合で、ここに来られてよかったという感想です。この時点では。

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ではフェス全体の感想は後回しにして、先にエビ中さんのステージについてを書いてしまいます。



エビ中 ~リハーサルまで~

向かって右手にあるどんたくステージでの演奏が終わり、ヤバイTシャツ屋さんが舞台裏に下がります。テンションの高い楽曲群で、会場が良い感じに温まっていることがわかります。
しかしエビ中さんの出番を前に、時計は正午に迫ります。アリーナ席やスタンド席の多くのお客さんは、ランチ休憩をとるためか自席から離れて出口へ向かっている。悔しかったけれど、少しだけ想像していた光景が目の前に見えておりました。

左手の山笠ステージでは、バスドラやハイハットのラインへの乗り方のチェックが進行中。そう。きょうのエビ中さんはバンド編成。生の音声で勝負をかけるのです。外へ向かうみんな、待ってくれ。ちょっとだけでもいいから、試しに少しだけでも彼女たちの歌を聴いていってみてくれないか・・・。

なかば諦めつつ会場の様子をボーっと見ていると、スタンディングエリアのあたりから拍手が聴こえてくる。ステージにメンバーが出てきたのだ。
美怜ちゃんが落ち着いた声で「私立恵比寿中学です。リハーサルお願いします。」とPAさん、スタッフさん、会場のお客さんに告げる。きょうは公開リハを行う様子。リハ曲目は感情電車だ。そして…

 好きだからこそ聞けない、はかない未来のありか---

公開リハの第一声、感情電車の扉が開いた先。そこにあったのは澄み渡るように響く、小林さんの綺麗な歌声だ。
勝手な想像だが、アイドルの歌唱に大なり小なりの偏見を持っていた人は、軽く驚いたことだと思う。いや、このフェスに来ているお客さんだったら、「アイドル=歌が下手」なんていう古い偏見が間違いであることなんて、とっくに知っていた筈だ。しかし、今回覆したであろう偏見は別のタイプのもの。彼女の歌声に含まれた個性。優しく涼しく、人懐っこく包み込んでくるこの声は、会場の空気を少し変える力があったように思う。

外に出ようとしていた人の足が止まったのが見えた。自席から離れようか迷っていた人の足を止めたように見えた。
小林推しの方々にとっては何を今更かも知れないが、きょうの彼女のここでの第一声は、ぼくが今まで聴いてきた彼女の歌声の中でもひときわ素晴らしいものだったように思う。歌がその場の空気を変える瞬間。彼女がその一端を感じさせてくれたことがとても嬉しい。リハ曲が感情電車であって、正解だったと思う。

悔しいけれど、もちろんそのまんま外に出ていた人もいた。正直にいうと後者の方が多かっただろう。それはもう仕方がない。次回への課題であり、挑戦だ。


エビ中 ~ステージ本編~


正午が訪れ、いよいよエビ中のステージ本編が始まります。

楽曲は星の数え方から。リハで作られた空気のままに、ゆったりとしたテンポ。3声のアンサンブルもしっかりキまっている。2番カットのショートバージョンだった。ぼくはもうこちら側の立ち位置の人間だから正当な評価はもうできないものだが、初見の方々にとっては、アイドルというよりはコーラスグループが出てきたような印象を受けた方もいらっしゃったのではないだろうか。

続いて、なないろ。THE FIRST TAKEでの反響は大きく、この日、二日目の朝で再生数は70万を超えていたと思う。安本さんはいなかったものの、あの動画の歌声がカブセや修正などなかったことを裏付けるような出来。しかも今回は振付もしっかり入れている。自信もってパフォーマンスしていることが伝わってくる。

ゆったり系の曲を続けた後は、エビ中バンドによる軽快なロックのリズムキープから柏木さんの軽い煽りとともに自由へ道連れ。椎名林檎のカバー。みんな調子よさそうだ。きっと何か大きな力になることが最近あったのだろう。

道連れのアウトロ後もビートは途切れず、メンバーがステージそでからスタンドマイクを受け取る。真山さんの「フェスは一期一会、愛の貸し借りをしましょう」といった煽りから愛のレンタルへ。ややアンニュイで独特な曲調、変化に富んだ展開。会場を見た感じ、良いアクセントとして、もしくは良いインパクトとして、この曲はしっかり機能していたと思います。

そして柏木さんの煽りからのHOT UP!!!でパンパンパパパンとボルテージを高め、最後はジャンプで愛を込めて、エビ中史上もっとも大きいステージでのパフォーマンスは終了となりました。

セトリの6曲を通し、彼女たちは静と動、綺麗なハーモニーと激しいロックといった、懐の深さを見せることは出来ていたと思う。ステージの上でできることはしっかりやり切ることができた。お疲れさまでした。



フロア全体を眺めて

ステージ上で起きていたことはここまでの記事の通り。
ここからはもう一つ。福岡ドームスタンド後方からぼくが見ていた景色についても、しっかりと触れておこうと思います。

エビ中のステージが始まるとともに、それまでは見られなかったペンライトの光が客席に灯されました。しかし、前方スタンディングエリアでまとまって光っているほか、アリーナ通常席およびスタンド席では、それらの光はちらほらと見える程度。ところどころで見える、ではなくてちらほら見える程度なんです。福岡ドームのフロアは、いつもの公演で見えるような光の海とはなりませんでした。

ぼくも紫のペンライト2本を掲げてはいたのですが、ストレートに書くと、寂しいものでした。この日の出演者は10組。単純計算で10席に1本ずつくらいはいつもの光があっても良いはず。しかし実際は、その割合にも到底届かぬくらい…。

ペンライトって光るからね。まばらにしか見えないと、それがまばらであることが目に見えちゃって必要以上に目立っちゃうの。ほかのアーティストさんはそんなグッズないからね、もしも客席にファンの人が少なかったとしても、そんなに目立たないの。普段はみんなを元気づけるための光なのだけれど、皮肉なものでした。彼女たちのステージが楽しかったのは確かなのだけれど、フロアの様子を見るのは、ぼくは少し辛かったですよ。
これはぼくの勝手な感情なので、気にしなくて全然かまいません。

・・・でも、できればなんですが、スタンディングエリアにいた方にはホットアップの時など会場に煽りを入れているとき、ドームの会場全体を見ているときの彼女たちについて、どんな表情をしていたのか、そのうち教えてほしいです。ぼくはモニタに抜かれる「良い瞬間」の映像しか見ることができなかったからね。

だけれどですね、彼女らの歌が会場の皆様に届いていなかったわけじゃないんですよ。ペンライトを持っていない人たちの中にも、しっかり立ち上がって手拍子を打ちながら楽しんでくれている人だってたくさんいらっしゃいました。座っている人もただボーっとしているわけではなくて、リズムをとりながら手拍子を打っていたり。
フェスの見えないマナーとして。音楽好きとして。エビ中の歌につられて。単に無意識に。手拍子を打っていた人にも色んなパターンの人がいたと思いますが、何にしろありがたいことだと思います。


会場はアウェイだったかもしれない。
けれど、この場にいた人は敵なんかじゃない。根っこの部分は音楽を楽しむ仲間であって、何かの弾みにドアが開いたら、すぐに一緒にもっとアグレッシブに楽しめるはず。
フェスのステージってのは船着場だ。いろんなアーティストが色々な楽曲と乗客を連れてやってきて、自分達の渡ってきた海について語ってくれる。そちらの航路に見える風景も見たくなってくる。

きょうの6曲とリハの感情電車を通して、少なからずエビ中に興味を持ってくれた人はいらっしゃったはず。まやまさんが言ったように、フェスは一期一会、ステージは一期一会。まずは、ナンバーショットに出演して、福岡ドームで歌うことが出来て、たくさんの方々に歌を聴いてもらうことができたことが、とても良かった。これを繰り返して、いろいろな人に楽しさを届けていくことが出来たら、エビ中はこれからもどんどん強くなっていける。そんなことを思ったのでした。
メンバーみんな、そしてエビ中バンドの皆様。お疲れさまでした。

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エビ中のステージに関してはここまで。
以下、別のアーティストを見て感じたことなど。エビ中さん偏重になっていたぼくが気付かされたこととかを考えつつ書いていきます。
お昼休憩とかで見られなかったバンドとかは、すいませんが端折ります。



ヤバイTシャツ屋さん

言わずと知れたげんきスリーピース。明るく勢いのある楽曲で楽しませてくれます。きょうのステージも楽しい楽曲ばかり。ただ、ライブハウスについてを歌ったというGive me the tank-topを歌う際、こやまたくやはライブハウス文化に対する言葉を口にした。
ぼくは彼らについて詳しいわけではありませんが、彼らは普段から「とにかく楽しい」って方向にメーターを振り切っているイメージで、きょうも実際そういうステージを見せてくれていた。だからこそ裏にある熱い部分が見えて少しグッとさせられる。ラストのあつまれ!パーティーピーポーでは、福岡に集まった全員に「えっびっばーっでぃっ!」と無言のまま吠えさせて、しっかりバカになれる時間を作ってくれた。楽しい。楽しかった。

楽屋でありぼぼさんとまやまさん、どんな話をしていただろう。


sumika

まともに聴くのは初めてだった。バンド名から僕が勝手にしていたイメージよりも、数倍明るく軽快なポップスロックを聴かせてくれた。にぎやかな曲調だけど、演奏もすごいしっかりしていた。

彼らを見ていて一番心に残ったのは、リハ中にもろもろのセッティングをしながら、ボーカル片岡がしみじみした感じで発した「あぁ、ライブ楽しみだなぁ」という言葉。もしかしたらこれ、なんていうか、自然に出てきた言葉ではなくって、彼がリップサービス的にわざと言ったものだったかもしれない。けれどたとえ芝居がかった言葉だったにしろ、これは彼の本心だよね。ライブを楽しみにしていたであろうバンドの音が、しっかり聴こえてきたのだから。そしてラストのファンファーレが始まった途端、立ち上がる観客がたくさん。キラーチューンを持っているバンドは強い。

今回エビ中さんはシングル曲をひとつもやりませんでしたが、なないろはそういった歌になってゆくのだろうか。どうか。


フレデリック

ライブ開始とともに、会場には無数のレーザー光線照射。福岡ドームがまた違う光景にかわった。すんなり入ってくるダンス系のビートとコ気味良いカッティングのギター。これはかっこいい。初めて聴いた人でもすぐにタテノリになることができる楽曲ばかりで、ダンスロックの良いところをしっかり聴かせてくれるバンドだ。

と思いきや、去年のナンバーショットの中止を受けて、その気持ちを忘れないためにと作った曲を聴かせてくれた。センチメンタルサマー。こちらはエモーショナルでストレートなロック。心に残る印象的なベースフレーズと、マイナーコードに載せられた夏がぼくを呼んでいるという歌詞が悲しく響いてくる。これもまたかっこいい。

MCでボーカルの三原が「このフェスで初めて僕らを見たという人がたくさんいるのがうれしい。まだまだもっとたくさんの人に音楽を届けられるじゃないか。」という。その通りだ。

エビ中の話にちょっと戻るが、ぼくがエビ中を応援しにきて彼らの音楽と出会ったように、きっとほかの目当てを観に来て、きょう初めてエビ中の曲に出会ったという人がたくさんいるはず。ペンライトの光が少なかったということは、それだけの人たちにきょう初めてのエビ中を届けることができたということだ。
つまり、光の少なさは出会いの大きさだと捉えなくてはいけないのだ。先ほどはちょっと辛かったなんて書いてしまったのだが、今更ながらその言葉は撤回する。8割くらい撤回。うん。
きょうのステージを通して、音楽の楽しさだけではなくて、いろいろなことに気付かされる。だから立ち返って、音楽って楽しいんだ。

ラストの曲はおなじみオドループ。まやまさんがtiktokで踊っていたんですね。フレデリックのライブ、とても楽しかった。


BiSH

ぼくがBiSHを見るのはスタジオコーストでのエビ中との対バン以来。きょうも清掃員の盛り上がりに引っ張られて、会場がしっかり燃え上がっていた。やっぱり彼女らのインパクトはすごいですね。

ステージ上のメンバーたちを、遠くから落ち着いてみてみました。彼女らの動きはダンスというよりは純粋に「振り付け」であって、非常にシンプルなもの。フリコピという文化自体は同じであれど、エビ中ファミリーの覚えて楽しむタイプのフリコピとは違って、こちらは直感的に楽しむフリコピが展開されていたように見えます。なるほど。

メディアは彼女たちのことを、アイドルではなくて、楽器を持たないパンクバンドだと紹介したがっています。たしかに今日のラインナップの中では、容赦なく大きな音を鳴らしていたという意味合いからすると、最もパンク的なゲヒンさがあったように思えます。良い意味合いで言ってます。その一方で、甲高い声で客席をあおったり、ブンブンゲーム?で客席と一緒に髪やタオルを振り回したりといったアプローチも見せていて、そういう部分ではエビ中よりももっとアイドル然としていたようにも思えるのです。

音楽ってのをジャンルやら何やらで区切って違いを明示したり枠にはめたりするのは、きっとナンセンスなもの。誰かが何かを考えるために、後付けで整理しやすくしただけに過ぎないことだ。パンクだろうがアイドルだろうが、それはそんなに重要じゃない。
BiSHとエビ中には通ずる部分とそうでない部分が混在していて、それぞれがちゃんとそれぞれの視線の先を見据えている。これを違いと捉えることもできるし、同じものと捉えることもできる。きっとどのように捉えても問題ないのだろう。
そして間違いないのは、どちらも楽しいものであって、どちらのメンバーもファンも精一杯懸命になって、そこで楽しんだり挑戦したりしている人がいるということだ。

エビ中さんとBiSHさんと、どこが違うのかを探そうとしていた自分がいたことに気付きました。でも、どこが一緒なのだろうというアプローチで見た方が、いろいろと面白そうだったなと。後になってから反省しています。
あとアイナさんとメガネさんは得難い人材だと思いました。


小田和正

ナンバーショットに来たぼくにとっての一番の収穫は、この人のステージに出会うことができたことだ。いろいろと衝撃が大きかった。

ステージに現れた小田和正は、だいぶ老けたなというのが第一印象。申し訳ないことを書くが、挨拶のしゃべりが老人の声に聞こえたのだ。
「(若いバンドに混じってここにいて)だいぶアウェイだなと思っていた。実際にステージに立ってみて、超アウェイだっていうことがわかりました。一曲でも知っている曲があれば、うれしいです。」そんな憎まれ口をたたく小田和正。一曲目はたしかなことと曲名を告げて、歌に入る。

その数秒後。1フレーズ目で空気が一変した。
会場のほぼすべての席から「おおぉぅっ!?」というざわめきが聴こえたような気がする。「この曲か!」といったたぐいのざわめきだ。オフコース世代などと遠く離れた若者でも、CMで一度は聞いたことのあるあの曲とあの声が、そのまんまステージから流れてきたのだ。
何なんださっきの憎まれ口は。気づけばアリーナとスタンド席には、無数のスマホの懐中電灯が灯されて、彼の静かな歌声に合わせて左右にゆっくり揺れている。この人は一瞬でアウェイをホームに変えたのだ。

次曲はラブストーリーは突然に
やはり「おおぅ!?」という声にならない感嘆が、会場の至る所から聴こえた気がする。立ち上がる人が多数。強い。強すぎる。小田和正強すぎる。
そしてどうだ、彼の歌声はMCの時とはまるで違う。東京ラブストーリーが放映されていた頃と変わらない、あの頃のハイトーンボイスのままなのだ。彼の音楽はずっとずっと第一線で生きていたのだ。

音楽ってものは、ときに簡単に世代も世界も越えてゆく。一瞬で知らない人同士をつなげて、一瞬で会場をひとつにする。福岡ドームでぼくはそんな一瞬に立ち会えた気がしている。
これは、きょうのリハで小林さんが見せつけた奴と同じものだ。しかし、この世界でずっと生きてきた人のそれだ。パワーが違う。メンバーはこのステージを見ることができただろうか。同じように「おおおぅっ!?」って思うことができただろうか。ずっとこの世界で生きてきた人の力、きっと良い目標になったことだと思うのだ。


東京スカパラダイスオーケストラ

小田和正ですっかりアてられてしまったぼくだったのですが、最後の力を振り絞って彼らのビートで自分なりに踊りまくって、この日を締めました。音楽が聞こえるとタテノリにならずにいられないおっさんなの。

彼らもいろいろな局面を乗り越え、長いこと一線で活躍しているバンドだ。でもご機嫌なスカのサウンドには、昔からずっと変わらずに夏を感じることができている。いや、夏ってのはぼくの勝手なイメージなんですけどね。梅雨明けしたばっかりの九州北部。ピッタリじゃないですか。

このステージでもひたすら楽しいスカのリズムと、ずるいくらいに綺麗なハーモニーが乗っかって鼓膜に届いてきて。この日何度目になるのかわからないくらいの「ああ、福岡まで来てよかったなあ」という感想を、また頭のなかで拡大再生産させていたのでした。


まとめとして

もう何度も何度も書きましたけどね。最初にやさぐれていた気分なんてのがまるで嘘のように、行ってよかったという感想しかありませんよ。座席なんてもう関係なく、10:0で行ってよかった。やっぱ音楽に浸っている至高の時間てのは最高ですよ。音楽好きでよかったですよ。

史上もっとも遠くの席からエビ中を観られたこともよかったんですけどね、できれば来年はもうちょっとだけ近い席から観られるチャンスもほしいんですけどね。それは置いといて、きょうの素晴らしいメンツの中にエビ中がいたことにも、外野の人間ながら勝手に誇りに思っていたりします。みんなよく頑張った。

そして、どのアーティストも、世の中のこの状況についての強い想いを口にしていました。もちろん皆さんが闘っていることは、頭の中ではわかっているつもりでした。でも実際に出演者みなさんからの言葉を立て続けに聞くと、ことの重大さを大きく実感するに至るのです。

音楽を楽しむこと、エンタメを楽しむってことって、果たしてどれだけのものであるのだろうか。たしかに衣食住とは別物で、これって必需品ではないのかもしれない。でも、福岡ドームの1万人規模のお客さんが、同じ曲で一緒に身体を動かすパワー。これが小さなものであるわけがないじゃないですか。小田和正がやってみせた、世代と世界を一瞬でがっちりつなげる力。音楽以外に、エンタメ以外に、その強さを代替できるものなんてあるのでしょうか。

ぼくなんか単なるおっさんなんで、なんもすることは出来ないんですが、せめてへったくそなライブリポとかをこうやって残させていただくことで、何らかのタシになればよいなあと。ナンバーショット2021を作り上げたスタッフさんとアーティストの皆様への、なんらかの恩返しにどこかで繋がれば良いなあと。そんなことを考えています。

関係したすべての皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。とても楽しかったです。また来年も、楽しみにしております。



それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。

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