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深く深き青い空と満ち満ちた9237字とあたたかく流れるkyo-do?の話

といったわけで、前回の続きです。
歌詞の数字とかからindigo hourを読み解くやつです。今回は全体データをちょこっと出しつつ、アルバム全体の感想的な駄文です。

前編はこちら

念のためもう一度おことわりを入れておきます。
以下、ムダな方向からの考察である上にムダに長いです。音楽的なことについて役立つ知見を得たいのだったらナタリーとかまはるさんのnoteに行ってください。わかってくれ。このnoteは砂で建てられた中古車センターのようなものなんだ。



というわけで、前回の記事を読んでくださった方がこの記事を読んでいらっしゃるという前提で進めちゃいますね。

再掲ですが、indigo hourのアルバム全体での各人の担当文字数の割合は上記のとおりです。各曲ごとに凸凹はあるものの、全体的に各メンバーの担当は微差はあれど8パーセント前後。ほぼ平坦であることが明示されました。
なお、5人曲であるHello another werldとSTAY POPは計算の都合上、上表には反映させておりません。


それでは曲ごとの実際の担当文字数をみていきましょう。

どん。
こちらが各曲におけるメンバ各人の担当文字数です。こまけえ。
ちなみに右端の合計は表中のメンバー様の数値を合計したものではなく、歌詞カードの文字数を合計したものです。ハモり部分などは担当者両名それぞれに文字数をカウントしているので、メンバー様の数字の合計と歌詞カード文字数合計には乖離があるのです。

で。
各曲において最も多くを担当した人の数値を太文字にしてみたのですが、ユニット2曲を除く8曲のうち、姉メンは2曲で、妹メンは6曲で、最多担当者を排出しています。姉メンvs妹メンの2軸で考えるとすると、妹メンの誰かの声が目立つ曲の方が多めということになるようですね。


こちらが楽曲ごとの各人担当パーセンテージ一覧。
誰かがどの曲で前衛に回り、どの曲で後衛に回っているのかがわかります。そしてこうやって曲ごとに担当者のデコボコがあるからこそ、indigo hourもいつもどおり、各人の個性的な歌声がしっかり活かされたアルバムだと捉えることが出来るのです。
歌唱面での絶対的エースがいないとかいう人がいるかもしれませんが、もともとグループのコンセプトは中学校。いろいろなコがそれぞれの良さを見せるのを是としているものです。これはコンセプトをしっかり踏襲して出来上がったプロダクトであると捉えるべきです。

そう。エビ中の楽曲の強みってのは、各人の歌声の個性がしっかり受け容れられて完成されているところ。ある曲では優しいヴォーカルが主人公。ある曲ではカッコいい歌声が前に出る。ある曲ではこう、そしてまた別の曲ではどう・・・と。決してワンマンチームでは作られることのないタイプの強さがここにあると思うのです。
その「楽曲ごとに違う歌声が主人公になる、みんなで作ったアルバムだ」という事実が、各メンバーの担当が微差あれど8パーセント前後。ほぼ平坦という結果に表れているのです。きっと。


ユニット曲であるSTAY POPとHello another worldは歌割りの性格が違うものなので、別個に作表しておきました。せっかくなので、kyo-do?のカップリングであったジブンアップデートはみだせGIRLSの担当割りもいっしょに載せておきます。



■まとめのようなもの

といったわけで、資料はここまで。まとめます。
ていうか、ここからはぼくのアルバム評とかボヤキとかです。

2023年に10人体制──姉メン妹メン体制──が本格的にスタートして1年。エビ中さんはだいぶ形が整ってきたように思えます。そんな、まとまり始めた瞬間の10人の歌声が切り取られたのが、このindigo hourというアルバムです。まとまりの良いアルバムであって、なおかつ楽曲ごとにいろいろな表情を見てとることが出来たように思います。
聴きやすくて、ぼくはとても好きです。

今回のアルバムが発売されたタイミングでは、「エビ中が変わってしまったなあ」的な声がけっこう聴こえてきたように思います。
でも思い起こすと、2023年の春ツアーの最終日、安本さんは「エビ中の歴史でずっと変わっていないことは、変わり続けることをやめないことだ(意訳)」と表現していました。
そして、2023年のグループとしてのラストを飾った秋田分校の公演タイトルは「私立恵比寿中学秋田分校〜変わっていくことと変わらないもの〜」でした。
つまり2023年のエビ中さんは、グループとしても「変化」という言葉に真正面から向き合っていたのです。変化を気にしていたのはオタクの側だけじゃないのです。

考えてみると、新作のアルバムが出るたびに、金八のときも穴空のときも、「変わってしまった」なんて声は少なからず毎回あったわけです。そりゃそうですよね。歌うメンバー本人たちの年齢構成が変われば、彼女ら同士の表情や関係性や視点だって変化して、シンガーに見合った形に楽曲も変わってゆく。世間の音楽トレンドだって変化してゆくし、聴く側のぼくらの耳だって日々変化してゆく。つまり、変化している状態こそがデフォルトだと思わなくっちゃいけないわけですよ。

逆の見方をすると、アルバムが出るごと&新曲が出るごとに「変わっちまった」って言われること自体はずーーーっと変わっていない。そのあたりで論争が起きるのは例外もあれどほぼ毎度のこと。
そこで安本さんの「エビ中の歴史でずっと変わっていないことは、変わり続けることをやめないことなのだ」という言葉の正確性を、もういちど噛みしめることになるのです。


2024年、まとまり始めた10人の現在地が切り取られてアルバムの形になって提示されたところ、いつもどおり、また賛否両論がありました。だから、たとえば次回作が切り取られる瞬間にも、きっとまた何かが変わっていて、きっとまた賛否両論あるのだろうなと思うのです。
表現するお仕事っていうのは難しいもので、賛否どちらの面も含めて飲み込んで乗り越えながら、可能性を拡げてゆくしかないものです。そこには用意された正解なんてなくって、自分の手で何かを作り上げてゆくしかない。
正解にとらわれすぎるとゆるやかな停滞しかなくなって、前進に拘りすぎると迷走する危険性がある。
消費するだけのぼくらの側の理屈や感情なんて、ほんと気楽なもんなんですから。たまに見かける「俺の考え方こそが正解だ」なんて強弁する人の的外れな話なんてテキトーに相槌を打っておいて、ひとまずは変化を見守りながら応援を楽しんで行けば良いと思うのですよ。

念のため書いておきますが、たとえば「金八の頃のエビ中が一番良かったと思う」とか「誰それをセンターに据えてやっていくべきだ」といった、いろいろなリスナーの感情や感想やアイデアなどは、否定されるべきではありません。それらは間違いなく正しい感情であって、他人がそれにいちゃもんをつけて良い道理など存在しません。逆もしかり。
でも、「正しい感情」と「正解」は違う。それらはまるでもって別個のものだと理解してから、話をしなくちゃいけないものなのです。

んでもって、ぼくだって過去の作品群はいまも変わらず大好きです。ここ最近は気合のこもった完成度の高いアルバムばかりが続いているので、できれば「肩の力を抜きました〜」っ公言しちゃう感じの、ゆるふわっとしたミニアルバムくらい出してくれても良いんじゃないかなーとか思ったりもします。
けどまあ話が散らかっちゃいますので、そのへんは置いといて。

中人も金八も穴空もエビクラシーも、MUSiCもplaylistもホワイトアルバムも、それぞれその時点でのメンバの状況やまわりを取り巻くいろいろを切り取った作品となっています。きっとindigo hourも、いまこの時期を切り取ったアルバムとして、良し悪しどうあれ、徐々に評価の形を変貌させてゆくものだと思います。


で。
文字数を数えながら、改めてkyo-do?の歌詞を見ていたときにですね、りったんさんとまやまさんによる「両手があいているのに、まだ手も繋げない現代」という歌詞が、こう、サクッと感情に刺さりまして。

手が繋げない現代というのは、シングル発売当時、2023年初頭の状況が表現されたものです。でもですね、この楽曲が収録されたアルバムの特典会で、いよいよ握手会が復活をするんです。

やったぞ握手だヤホーイ!とか言いたいわけではなくて、いや、少しは言いたいけれど、その、それは置いといて、つまりですね、手も繋げない現代から手が繋げる現代に、時代が移り変わっているという話がしたいのです。そう。それ!
あの時期のリアルな感情として歌われていた情景が、少しずつ過去のものとなって別の感情で上書きされてゆく。歌は世につれ世に歌につれという言葉どおりの感覚?とにかく、これがとても感慨深いことのように思えてならないのです。

安本さんが語った春ツアーでの変化についてのスピーチは、かっこよくまとまった言葉のように見えます。でもその反面、変化してゆくことが怖いからこそ、ああやって言葉にまとめる必要があったのではないか。そう捉えることもできるのです。演る側だって、聴く側だって、誰だって変化なんてものは、怖いに決まってる。

だけれど「まだ手も繋げない現代」から一歩進んだ未来が、まさにいま訪れかけている。indigo hourに広がる深く深く青い空は、夜明けとともに徐々に明るさを増してゆく。そんな未来に向かう変化の途上を受け容れるってことは、実はとても幸せなことなのではないだろうか。
アルバムのフィナーレで明るく暖かく流れるkyo-do?を聴きながら、そういった感情が生まれてきたりするのです。

しまった。このアルバムの構成、すっげえ腑に落ちてきた。
kyo-do?が発売された当初は、こんな感情が付随してくる未来なんて想像できなかったなあ。やっぱり音楽って、すごいものなのだなあ。


といったわけで、まとまったようなそうでないようなといった状態ではありますが、そろそろ寝ますです。
春ツアーでもまた色々と楽曲が化けてゆくのだろうな。
何だか楽しみになってきましたよ。
おやすみなさいグー。




■おまけ資料館

各曲歌割り担当の移り変わりを図示したものを付けておきます。何かの参考になれば。なんの参考になるかは、もちろんぼくもわかりません。
上が曲のスタートで、誰がどういう順番でマイクを持っているかの図だと思ってください。うん。なんとなくわかってくださいな。

01:Knock You Out!

02:Summer Glitter

03:BLUE DIZINESS

04:TWINKLE WINK

05:DRAMA QUEEN

06:CRYSTAL DROP

07:Hello another world

08:トーキョーズ・ウェイ!

09:STAY POP

10:kyo-do?

ジブンアップデート

はみだせGirls


ジブンアップデートとはみだせGirlsの円グラフもつけておきます。

ジブンアップデート・円グラフ


はみだせGirls・円グラフ


以上です!
寝ます!グー。

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