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起業なんてやめておけ

と、いうタイトルを読んで「そうだよね」と思った人は、安心してください。あなたは起業に向いていません。

あるいは、既に起業経験があり、そこで成功したにせよ、失敗したにせよ、「あんなツラいの無理やろ」という気持ちになってる人の可能性もありますが、そんな人は本記事の想定読者じゃないので、やっぱりご安心ください。

起業なんて、頭がおかしい奴がやること

基本的な考え方として、起業なんて普通の奴が手を出して良い代物じゃないと思うんですよ。
頭おかしい奴のやることなんですよ。いや、ほんとに。

と、ここで唐突に後出しジャンケンをしておくと、僕がこの記事で書いている「起業」は、いわゆる「独立」とは異なっています。定義を後出しするなんて、物書きの風上にも置けないよね、と我ながら思いますが、なんというか、まぁ、そんなもんじゃないですか。世の中って。
独立ってのは、それまでにやってきた仕事を、所属していた会社組織から離れて、一人(もしくは数名)でやることです。
実績があり、顧客もみえている。道義的にやって良いかは別にして、所属企業でお付き合いしている既存客をそのまま引っ張って独立直後から売上を作ることも見込める。
そういうのが「独立」です。
一方、「起業」は、新しい何かを始めます。別に、社会課題に目を向けてもいいし、自分の関わる仕事の中で見えてきた顧客のニーズに応える何かを見出してもいい。
「業を起こす」って、そう言うことだと思うんですよね。

もちろん、僕の言うところの「独立」を「起業」と呼んでもまったくもって構わないんですが、独立の難しさと起業の難しさは、その困難性のベクトルが違う(その長さについては論じません)と思うんですよね。

閑話休題。と、いうことで、改めて。

(独立ならともかく)起業なんて、頭がおかしい奴がやること

いや、ほんとに、起業なんて、ちょっとおかしい奴がやることなんですよね。
だから、大半の人は向いてなくて正解なんですよ。本当とに。

向いてる人だけがやれば良いんですよ。

向いてるか向いてないか、やってみないとわかんないじゃん!?と思った人もいるでしょう。
おっしゃる通りです。やってみないとわかんないんですよ。でもね、もっと正確に言うと、やってみたとてわからない、んですよねー。困ったことに。

だから、結局のところ、「自分が向いてると信じて疑わない人」しか、頑張れないと思うんですよね。

週末の予定とか、友達との飲みの約束とか、恋人とのデートの予定とか、観たい新作映画とか、年に一度の温泉旅行とか、人生を豊かにするためのアレコレって、ほんとにいろいろあると思うんですけど、こういうのを一切合切、3年間、捨て去ることできます?

いや、もちろん、そういうのを捨て去らないタイプの起業ってのもあると思うんですよ。
でも、全てではなくても、ある程度は捨てる。これまで、ワークとライフが8:2だった人が、9:1とか9.5:0.5とかにすることになります。
(元々5:5だった人は、そもそも向いてないのでご安心召されよ。)

まぢで、ほんとに、仕事あらため「事業」のために命を捧げられますか?って話なんですよ。

うん。頭おかしい。間違いなく、おかしい。

お金を稼ぎたいのか?世の中を変えたいのか?

この「頭のおかしさ」をキープし続けることができるかどうかが、勝負の分かれ目です。

売上が無い時期ってのは、必ずあります。立ち上げ初期はもちろんですが、事業拡大期にも普通に「お金が足りない」瞬間があります。
マヂでツラいんですよね。キャッシュアウトは文字通り「出血」です。

また、契約書、請求処理、入金確認、名刺、webサイト。大手に勤めてたら、自分の見えないところで勝手に処理されてたアレコレが、突然、マイタスクになります。
ふぁー、、、ってなります。
しかも、何かしようとすると、お金がかかります。血が流れます。

こうした時に、自分を支えてくれるものがあるかどうか、が大切です。

そこで出てくるのが「企業理念」です。ビジョンでも、パーパスでも、ミッションでも、好きな名前で呼んでいただけばいいんですけど、「その事業で目指すところ」みたいなニュアンスのアレです。
社会をこういう風に良くしたい、社会をこういう風に変革したい、そういう気持ちがあると、比較的、頑張れます。

リバネス創業者の丸さんが言ってたのかな。「温泉を掘る」の喩え。温泉を掘ってるのか、土を掘ってるのかは、やってる作業は同じでも、モチベーションが違う、ってやつ。
ほんとそれ。

この時に単に「お金が欲しいんです」「大金持ちになりたいんです」っていう感じだと、しんどくなるんじゃないかなーって思うんですよね。
だって、お金が欲しくてやってるのに、大企業時代より給料下げて、なんなら毎月毎月出資金を食い潰していくわけですよ。で、売上のための価値創出には寄与しないが、会社運営のためには欠かせない事務作業を延々とやってる。それを誰かにお願いしようとすると、そこでまたお金が出ていく。
真逆じゃん!?ってなる。

もちろん「お金の匂いがする」事業領域/戦場を選ぶのは、言うまでもなく大切なんですけど、それだけだと、しんどい思いをしてまで続ける気持ちを維持できないんじゃないかなって思うんですよね。

「お金が尽きること」と「心が折れること」は、割と密接な関係にありますが、お金が尽きても再起は可能です。しかし、心が折れたら、二度と戻ってこれません。

お金以外の指標で、心を強く保てるタイプの「頭おかしい人」が、起業に向いてるんじゃないかなって僕は思うんですよ。

向いてる人へのアドバイスのようなもの:貧すれば鈍する。だから貧さない。

と、いうことで、ああだこうだ書いてきたんですけど、間違いなく「向いてる人」は一定数います。
あと、そんなに向いてない人でも、とても向いてる人と一緒にやることで、上手くいくこともあります。

と、いうことで、向いてる人、および、(向いてる人と一緒にやる前提の)やや向いてる人、に向けて、おぢさんからのアドバイスのようなもの、を少しだけ。
(書いてて「向く」がゲシュタルト崩壊してきた、、、)

キャッシュインを確保して、固定費は最低限に。

以上です。

落語の「溺れないためには、膝下より深い水には入らぬこと」みたいな話ですが、まぁ、確かに似たようなものです。

カッコいいオフォス?後でいいよ。
自社会議室?先方にお伺いしようよ。
ロゴデザイン?どうせ変更するでしょ。
プリンター?セブンイレブンのネットプリントじゃダメなの?

固定費および初期費用は、とにかく下げましょう。
カッコいいオフォス、綺麗な専用会議室、素敵なフォントの素敵な名刺。
そんなもので、飯は食えません。
そんなもので、仕事は貰えません。
後です。後。全部、後。

まずは、売上をどう作るか、に専念する。
売上を作れるものに、注力する。

受託開発をしちゃったら、そこから抜けられなくなる。自社プロダクトの開発にリソースを避けなくなる。と言う話もありますよね。わかりますよ。
でも、最低限、食える状態を作らないと精神を保てません。(あと、物理的に死ぬ可能性が出てきます)

もちろん、貯蓄が十分にある、とか、VCから調達した、とか、借入ができた、とか、そういうキャッシュの回し方もありますよね。
でもね。キャッシュフローが赤いと、マヂで心が折れます。預金残高が減っていくのは、精神的にキツいです。

いや、もしかしたら、本当に起業に向いてる人は、そんなこと気にしないのかもしれない。
ただ、僕は、明らかに「向いていない部類」だから、そういうのに絶対に耐えられないんですよね。
そして、おそらく、起業家の何割かは(8割以上とかだと思うんですけど、実際はどうなんだろう)僕と同じで、ツラくなっちゃうと思うんです。

なので、ぜひ、収入は確保してください。
営業代行でも、人材紹介でも、受託開発でも、過去の人脈やスキルを活用してできること、得意なことをやりましょう。最低限の収益があれば、心は保てます。
やや赤字、は、許容できます。ガチ赤字、は、心が折れます。役員報酬止める、とかになると、冷や汗が出ます。いや、ほんとにね。

まぁ、実際に役員報酬止めてみたら、それはそれで経営のギアが変わるってこともありますし、やってみてから考えたらええやん、って話なんですけどね。

結論:餅は餅屋

人間は、自分に向いてることをやった方が、幸せになりやすいと思うのですよ。餅は餅屋です。

ちなみに、サラリーマンをしっかりできるのも才能です。世の中全員が起業家になったら、その事業は、どうやって拡大するんですか?

起業家とサラリーマンの間に、優劣はありません。得意なところで価値を出す、それだけです。臼や杵を作る人がいないと餅はつけません。餅米を作る農家さんも必要です。適材適所です。

向いてることを見つけて、それに全力投球できるのが、幸せってことなのかもですよね。
ぜひ、起業に向いてる人は起業に、そうでない人はまた別のことに、力を注いでくださいませ!幸せに生きましょう!

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