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資料作成において「サンクコスト」の概念を捨てろ

サイコロジー・オブ・マネーに、こんな一節がありました。

気がつくとカーネマンは、それまでとは別物かと思うほど書き換えられたバージョンの原稿を送ってくる。書き出しも終わりも違っている。思いもやらぬ逸話や証拠が加えられていて、効いたこともないような研究結果が引用されている。
「どうすれば元の原稿の痕跡が見当たらないくらいに書き直せるんだ?」と尋ねると、忘れがたい答えが返ってきた。
「僕にとって、現時点ではまだサンクコストは発生していないからだ」。彼はそう言ったのだ。

ダニエル・カーネマンと、ジェイソン・ツヴァイクの共著「ファスト&スロー」の執筆時のエピソードだそうですが、これは、ほんとうに素晴らしいプロ意識だと思います。

僕たちコンサルタントは、資料を作りまくっています。
これは、もはや、特殊技能と呼ばれるべきもので、図形の組み合わせや、言葉選び、限られた二次元平面スペースをどう使うかについて、徹底的に技術を磨き上げています。

正しいことを書く/描くのは当然なのですが、相手に伝わるかどうか、が最重要ポイントです。

どれだけ正しいことが書いてあっても、相手に読まれない、内容を理解されないとなると、僕たちが対価をいただいて作る資料としての価値は、ほぼゼロです。

そういう時に、自分の作った資料を、何のためらいもなく捨てられるか?が、コンサルタントとしての向き不向きを分けるんじゃないかなと思います。

頑張って時間をかけて作った。
寝ずに考えた。
何百枚もの手書きのメモを経て作り上げた。

そんなことは、どうでも良いことだ、と思えるか。
相手に伝える、という目的に立ち返り、それにそぐわないなら、潔くゼロから作りなおせるか。

ありものを組み合わせて、効率的なやりたい、という気持ちは、誰でも持っています。
しかし、効率と効果なら、迷わず効果の方を取るのがプロだと思うんですよね。

僕たちは、考える仕事をしています。
考えて、考えて、考え抜いて、考え切って、脳みそが汗をかいているような感覚をもつのは「当たり前」です。

常に、自己ベストを出す気概を持つ。
昨日までの自分より、少しでも早く走る、少しでも上手くなる。

そんなときに、作業内容に関してサンクコストを感じるのは無駄です。むしろ、妨げです。

前を向きましょう。
プロセスを誇らず、アウトプットで戦いましょう。
そして、クライアントと共に、アウトカム創出を狙いましょう。

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