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【英文法の小径】過去完了形〈時制〉その五

Before I had a chance to thank him, he had passed away.

Before A, B. = B before A. は、過去の文脈では、A という出来事が起こる前に B という出来事が起こった、言い換えると、先ず B が起こってから次に A が起こったことを表わす。なので、A, B のいずれかに〈過去完了形〉を使うとしたら、B になるのがふつうである。

冒頭の文では予想通り、先行する出来事(彼の死去)を 'had passed' というように〈過去完了形〉を用いて述べています。彼に感謝の意を伝える間もなく、彼は亡くなってしまったのだ。

Before he had finished his training, he was fired.

ところが、まれに先行する出来事を表わす B ではなく、後続の出来事を表わす A で〈過去完了形〉が用いられることがあるのです。上の文で、彼は訓練を終了する前に解雇されたのだから、次のように言うべきではないだろうか。
Before he finished his training, he had been fired,

実は、動詞のもつ「完了」という概念を強調するために before ではじまるSVを含むカタマリの中で〈完了形〉を使うことがままあります。結果として(先に起こった出来事を〈過去形〉で表し)後から起こった出来事を〈過去完了形〉で表わすことになりますが、やはりこれはめずらしいことと言えるでしょう。

上のような文は、「訓練を終了するという行為が完了する前に解雇された」=「解雇された(過去形)時点では、訓練を終了するという行為がまだ完了していなかった(過去完了形)」と解釈すればいいかもしれません。

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