【英文法 重箱の隅】自動詞⇒他動詞
前回の記事でも触れた通り、英語は日本語と異なり、ほとんどの動詞が形を変えることなく自動詞としても他動詞としても使われるが、語形が変わる(母音の変化を伴う)ものもごく少数だがある。
この lie と lay、及び fall と fell のペアは自動詞/他動詞の区別のほかに、一方(lie, fall)は不規則動詞、他方(lay, fell)は規則動詞というちがいもあって、lie の過去形は lay であり fall の過去形は fell であるという活用形の問題が絡んできて、さらに lie については、つづりは同じで意味の異なる語(「うそを言う」の lie)の方は規則動詞であるというおまけまでついて、紛らわしいことこの上ない、まるで試験のために存在するような語ではないかと学生時代は思ったりしたものだけれど、lie も lay も fall もとてもよく使う語で、ただ fell だけは使用頻度はそれほど高くない。この動詞は (2-b) にもあるように受動態で用いることが多い。各語の活用と日本語訳を整理しておく。
lie - lay - lain〈自動詞〉(1-a)「横になる/横たわる、置いてある」
lay - laid - laid〈他動詞〉(1-b)「横にする/横たえる、置く」
fall - fell - fallen〈自動詞〉(2-a)「落ちる、倒れる・転ぶ」
fell - felled - felled〈他動詞〉(2-b)「(木を)切り倒す、(人を)打ち倒す」
rise と raise のペアにも、lie と lay のペアと同じ母音の変化(/ai/=>/ei/)が見られる。rise が不規則動詞で raise が規則動詞というのも同じだ。自動詞の rise は fall の反意語で「上がる」(3-a)、一方の他動詞 raise は「上げる」(3-b) だけれど、イギリス英語では、日常的には同じ意味で ‘lift up’ を用いる (3-c) の方がふつうだし、「手を上げる」を ‘raise you hand’ というのはアメリカ英語であって、イギリス英語では (3-d) にあるように ‘put up your hand’ がふつうだ。
rise の「上がる」に対して自動詞の arise(= a + rise) は「(問題などが)起こる」(4-a) という意味。この動詞と語形の似た他動詞が arouseで、意味は「(感情などを)かき立てる」(4-b)。このペアにも活用の紛らわしさが絡んでくる。arise は不規則動詞で過去形は arose(つづりに注意)、第二音節の発音は /rouz/ となるが、arouse は規則動詞で第二音節の発音は /rauz/ である。あー、面倒極まりない。
自動詞用法の sit(不規則動詞)の意味は言わずと知れた「(人が)座る/座っている」(5-a) だが、この意味に対応する、語形の似た他動詞は seat(規則動詞)で「(人を)座席に座らせる/案内する」(5-b) という意味。sit は「(ものが)ある場所にある」(5-c) という意味で使われることもあって、この意味に対応する他動詞が set(不規則動詞)で「(ものを)ある場所に置く」(5-d) という意味。
さて、今回は、主に自動詞として使われる動詞が他動詞として使われる例を見ていきたい。
他動詞になると使役的な意味を表す例
まず、よくあるのが使役的な意味を表わすようになる場合である。つまり、自動詞⇒他動詞において「〜する」⇒「〜させる」という意味の変化が見られる場合だ。
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