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英文法の小径

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毎回、一つの文法項目について、意の赴くままに説明を試みた散文を掲載中。
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#MUST

【英文法の小径】助動詞の要点Ⅲ Ver. 1.0

MUST必要性/義務を話し手の個人的な感情や願望として述べるには must を使用する。つまり、must が表す義務は、外部の状況から生じるものではなく、話し手が課すものである。 未来の必要性/義務について述べるには通例、[will have to]を使用するが、現在=発話時にすでに取り決めができている場合は must を使用する。 二人称主語に must を用いた文は、話し手が相手に義務を課す言い方になるため、相手に対する命令/指示を表す。 must の否定形において

【英文法の小径】must〈助動詞〉その四

今回は、以前 must について書いた記事の補足のような内容です。 まず、must は、客観的な have to に対して、「話し手の個人的な感情や願望として必要性を述べる」と説明しました。 一方で、must (not) は次のような文面でもよく用いられます。 規則や法律を知らせる公的な標識や通知には、must (not) がよく登場する。a. はシートベルトの着用義務を、b. は手荷物の放置禁止を述べたもの。 次に、[must have + 過去分詞]は、「過去の事

【英文法の小径】非難・不満〈助動詞〉

可能性を表す could と might は、提案/助言を行う場面で用いられることがあることを前回確認しましたが、文脈によっては、相手を非難する表現になることもあります。 a. のような文で話し手は、ある行為を実行することが(その気になれば)可能なのに、相手がそれをしていない状況に対して、非難/不満を表明している。a.「もう少しやる気のあるところを見せようとしてもいいんじゃない」 b. の[could have + 過去分詞]という形式は、実現しなかった過去の可能性を表す

【英文法の小径】申し出・勧誘〈助動詞〉

申し出や勧誘を表す文でも、依頼・要請の場合と同じように、助動詞の will や can がよく用いられます。 a.  I’ll give you a lift to the station. b.  Can I do some shopping for you? will を用いた文(a.)では、相手のためになるような行為をする意志をはっきり示すことによって、can を用いた文(b.)では、自分にはそのような行為をすることが可能であることをそれとなく知らせることによって、

【英文法の小径】must〈助動詞〉その三

I must have been a bore.例えば、共同生活の解消を提案された話し手のつぶやき。may/might/could ではなく must に[have + 過去分詞]を続けた[must have + 過去分詞]は、過去の事柄について確信的な推量(推断)を表す。相手にとって「きっと退屈な人間だったのだろう」と自分を省みている。 That must have been fun.先月、ヨーロッパ周遊ツアーに参加してきたという相手への一言。‘That must be

【英文法の小径】should〈助動詞〉その三

They should be home by now.should のもう一つの顔は案外、見落とされがちだ。should が使われるとき、それは「〜すべき」を意味するとはかぎらない。 should にも、must と同じように、推量を表す用法がある。「〜のはずだ」という must と同じような訳語を与えられることが多いけれど、ちがいはないのだろうか? 推量したことを述べるのに should を用いるのは、それが正しい確率は高いけれど、話し手が must を使うほどの自信が

【英文法の小径】must/have to〈助動詞〉その四

There has [There’s got] to be a reason.共通の知人が仕事を辞めたと聞いて一言。[have (got) to]が must と同じように義務/必要性を表すことは知っているけれど、それでは、この文は「理由がなければならない」という意味なのだろうか? 実は、[have (got) to]も must と同様に、「ちがいない/はずだ」という訳語が当てられることの多い確信的な推量(「推断」)を述べるときに用いることができます。これは、主にアメリカ

【英文法の小径】must〈助動詞〉その二

Paul must pass the exam. ポールの、これまでの勉強ぶりを見てきて知っている話し手が、彼の合格を確信してこう言ったとしよう。さて、これで言いたいことは正しく伝わるのだろうか? must =「ちがいない/はずだ」だから、「合格するにちがいない/きっと合格するはずだ」は ‘must pass the exam’ でいいのではないか。 残念ながら、冒頭の文は「合格するにちがいない」ではなく、「合格しなければならない」という意味に、つまり、ここでの mus

【英文法の小径】must〈助動詞〉その一

You must be hungry.朝から忙しくて何も口にしていない人に向かっての一言。一般に助動詞の多くは、大きく分けて二つの顔を持っている。ここでの must は、義務/必要性を表す「ねばならない」ではなさそうです。 お腹の事情というのは、本人にしかわからない。だから、本人以外の人には推測することしかできない。ただ、この場合は相手が朝から何も食べていないことを知っているので、相当な自信をもって推論の結果=結論を述べている。このようなときには must を使用する。

【英文法の小径】should/must〈助動詞〉

a) You should apologize. b) You must apologize.should も must も、いわゆる「義務」を表すとされているけれど、もちろん両者は異なる。どうちがうのだろう?「すべき」と「しなければならない」のちがい??? should は must とはちがって、話し手が自分の判断に完全な確信を持っているわけではないのです。強弱で言えば、should は must ほど強くはありません。なので must を用いた b) は相手に有無を

【英文法の小径】must/have to/need (to)〈助動詞〉

You mustn’t tell anybody else.must も[have to]も、それから need も[need to]も、必要性、つまり「そうすることが必要だ」ということを表す。それでは、その否定形はどうだろう? まず、must の否定形、must not = mustn’t は、must に後続する部分を否定することになるので、「そうしないことが必要だ」、つまり禁止を表す。冒頭の文も、だれにも話さないことが must だ=話してはいけないと言っている。

【英文法の小径】must/have to〈助動詞〉その三

You must fill in this form.二人称が主語の場合、must は話し手が相手に課す義務を表すため、この言い方は命令文や指示文のようになる。 You’ll have to fill in this form.なので、命令や指示のもつ強圧的な響きを和らげるために must の代わりに ‘will have to’ を用いることがあります。 動詞の形を利用することによって、直接的な言い方を遠回しの言い方にする、つまり丁寧な表現にすることができます。例えば、

【英文法の小径】must/have to〈助動詞〉その二

I had to work late yesterday. must には〈過去形〉(musted)がないので、過去の必要性/義務を表すには一つの方法として、[have to]の〈過去形〉を用いる。 Have you ever had to go to (the) hospital? must には過去分詞形もないので、〈現在完了形〉を用いる必要があるときにも[have to]を使用する。ここでの ’go to (the) hospital’ は「治療を受ける/入院する

【英文法の小径】must/have to〈助動詞〉その一

I have to finish this today.must にも[have to]にも「ねばならない」、つまり必要性/義務を表す用法がある。必要性について述べる場合、イギリス英語ではどちらも用いるが、アメリカ英語では特に話し言葉では[have to]の方がふつうだ。 さて、イギリス英語ではこの2つを、次のように区別して使用することが多い。 must は、話し手の個人的な感情や願望として必要性を述べる。それに対して[have to]は、外部の状況にもとづく客観的な事実