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ホームレスとハンバーガー


「この人と出会えて本当によかった。」

心からそう思える人との出会いがあることは、本当に幸せなことだと思う。


遠くの国に住む友人Kも、私の中で定期的に思い出しては 心の中で感謝を伝えてる大切な人の一人。

彼女は普段はちょっとホワーっとしていて、話し方もゆっくり穏やか。笑顔がとびきりチャーミングで、何をしてても真剣に一生懸命に取り組む真っ直ぐさがあるひと。

困っている人がいたら絶対に助けるし、(私も助けられた)必要なら自分の持ってるものを全てあげてしまいそうなくらい、人を思いやれるきれいな心の持ち主。そしてある特定の種類の鳩が大好きで、見つけると信じられないくらいの量の写真を撮って、ものすごいハイテンションになる。笑


そんな彼女が、学校最後の日(彼女や他の友達と過ごせる最後の日)校内の階段で大泣きしていたのを見かけ、放っておけなくて声をかけてみた。

彼女は、すごく繊細な感覚の持ち主だから大きな理由がなくても何かをきっかけに溜まってた感情が突発的に溢れ出して、涙が止まらなくなったりすることがあると説明してくれた。私も少し心当たりがあるから、すごくよくわかった。

それで、「こんなに色んなことを感じ取ってしまうのは本当に疲れる。できることなら細かいことに気付きたくない。本当に大変なの。」と具体的なエピソードもまじえて説明してくれた。

気づきすぎてしまう辛さは多少わかるけど、いつもの物腰柔らかな彼女の話し方にはない苛立ちや辛さが言葉に含まれていて、彼女はきっと遥かにもっと繊細なんだろうと感覚的に理解した。でも私からしたらそんな繊細な感覚や、人の心に気付けるKの心は 美しくて素晴らしいものだと思っていたから、とにかくそれを一生懸命伝えた。もちろん、彼女の抱えてる辛さを無視せず丁寧に 一緒におろしながら。

ずっとひたすらに泣いて嘆いていたKだけど、少しづつ落ち着いてきたら繊細でよかったと思うことも話してくれはじめて、そんな中でこんな話をしてくれた。

彼女は、ハンバーガーを食べるホームレスを見て涙が止まらなかったことがあるそう。それは可哀想とかやっと食べるものがあってよかった、という憐憫の涙ではなくて、

ホームレスの人がハンバーガーにかぶりつかず、バンズやレタスを1つ1つ別々に、丁寧に味わって食べる姿が美しすぎたからだという。

その着眼点は予想もしてなくて、割と共感しやすい私でも一瞬頭の中を整理する必要があった。目の前でホームレスがハンバーガーを食べる様子を泣きながら説明してきた友人は今までにいなかったから。

そんなことを思いながらも、誰かが大切にありがたくものを食べる姿を見て美しいと涙を流すなんて、その心がなんて美しいのだと私はそこに感動してしまった。

あまりにも心のきれいな人に出会うと、文字通り口を開けて感動のため息が出る。この時もまさにその状態だった。

この話は、短くまとめるなら「ホームレスが丁寧にハンバーガーを食べてる様子に感動して、泣いた友達がいた」という話なんだけど、私にとっては別次元の世界を垣間見たみたいな、ものすごい意味のあるエピソードとして心に残っている。圧倒的なものを目の当たりにすると、それがどんなものであれ忘れられないのと同じで、彼女の目や表情、その前後の話とか全てに心動かされた忘れられない夜。

いつも目をギラギラ光らせて、全部が美しいと思おうとする必要もつもりも全くない。そんな無理するのは疲れる。でも世界のどこかに、私には見えないものを見て涙を流している、彼女のような人がいると知ることができたのが本当に幸せだったし、

誰しも同じものを見ても 同じことを考えるわけではないとわかっていたけど、そもそも同じものすら見てなかったのだなと気付かされた出来事。(きっとそのホームレスが視界に入っても認識・観察してないだろうから)

こうやって自分一人ではたどり着けない場所からの 景色や感情の存在を教えてもらえるのは、人との出会いの醍醐味というか、本当に感謝したいことの内の1つ。


まだまだ短い人生だけど、色んな人に出会ったり知識が増えると、その分世の中の根深い闇のようなものも見えてきたり、自分を含めた人間の中の煮込まれすぎた ドロドロした感情に心が締め付けられることもある。

それもある意味必要な調味料なのかもしれない。でも人間、それだけじゃないということ。完璧な人はいないけど、愛らしい側面を磨いている人や、生まれ持った素質を輝かせている人たちも ものすごく沢山いると知ることは、とてつもなく大きな希望になる。そしてその異次元な輝きに、人間は いち生命体としてこんなに魅力的になれるのかと思い知らされる。

極端な話、「世界は広い」という常套句を解釈するには 旅をする必要も、友達100人つくる必要もないのかもしれないとさえ思う。

こんな人が存在すると、知れてよかった。

そう思わせてくれる人たちに、出会えて本当によかった。


photo by RUBY YEH




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