電子タバコを吸ってみた〜コロナの思い出〜
今住んでいるシェアハウスで、みんながまだ仲良くしてた頃、シーシャを回し吸いしていた。
回し吸い、という言葉は無いから、私が自分で作った言葉だ。
もう、あの頃良くしてくれた人たちはみんな引っ越してしまった。まぁ、綺麗な記憶にするにも、色々あって単純化できないのだけど。。。
タピオカ用のストローを短く切ったものを一人ひとりがマイストローとして吸口に取り付けて吸うようにしていた。
あの頃はコロナだったから、感染対策のつもりだった……なんてね。あの頃のシェアハウスでは、そんなことを気にしてる人は、いなかった。
コロナだったから、みんなどこにも出かけられなかった。そういう人たちが小さな家の中でフラストレーションを貯めていた。
のちのち、シェアハウス以外の人たちにきけば、コロナでも構わず飲み歩いていた人たちはたくさんいたらしい。あのころの街は、人通りも少なかったし、みんな一様にマスクをつけていたから、てっきり日本国民全体が一致団結しているものだと思ってた。
でも、私たちはシェアハウスで過ごすことにした。
シェアハウスには中国人が多かったから、MERSウイルスでロックダウンした経験があったからかもしれない。
まぁ、私は友達も特に居ないし、出かけたい場所もないから、引きこもってたわけなんだけど。
あの3年間の間、随分みんなと仲良くなったけど、ある女の子が一人引っ越したことをきっかけにチグハグし始めた。
その女の子がリビングに入ってくると、文字通り「みんなが歓声をあげて」出迎えた。あの子の笑い声はリビング全体を魅了するみたいだった。みんなの人気者だった。みんなが話に入れるようにちょっとした心配りもできる人だった。大阪出身だからか、話もうまく、面白かった。いや、面白かったのは、彼女が旧帝大出身だったからかも。頭も良かったけど、一方でアホな振る舞いをしているときも多くて、それがいい意味で魅力的だった。
多分、シーシャを持ち込んだのも彼女だった。
たまたま違う国で育った別々の人間が、彼女を中心にまとまっていたかに見えたが、私はみんなと仲良くなったと勘違いしていたらしい。
あの子が居なくなってから、前みたいに盛り上がらなくなったし、居心地も悪くなった。
あの時間は帰ってこないんだよなぁ。
人付き合いってなんなんだろうね。
人を楽しませるのも、一種の才能なのかもしれないよね。
あれから、更にみんなそれぞれ引っ越して、あのころ仲良くしてた人たちは、私ともう一人しか残ってない。
久しぶりに煙を吸いたくなった。
でも、シーシャの準備は大変だし、タールやニコチンを摂取したくないので、こんなものを買ってみた。
この電子タバコは、ニコチン・タールフリーである。ブルーベリーミント味のリキッドが気化して口の粘膜に纏わり付き、ハッキリと甘い味を感じる。
一本千円で、千回吸えるらしい。
口の中に煙を溜めてから、口を開く。ゆっくりと煙が目の前を覆った。煙がたくさん出てきて、ギャングみたい。
まぁいいか。ひとりでも。
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