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【仏事作法解説】お仏壇の意味(浄土真宗本願寺派)

【仏事作法解説】では、仏事や作法について知っておきたいことや、よくご質問をいただくことなどを、できるだけ分かりやすく解説しております。

今回は、「お仏壇の意味」について、考えてみたいと思います。

現代の日本では、お仏壇は、ご家族が亡くなったことをきっかけとして購入する場合が多いかと思います。または、お父様お母様のご自宅にお仏壇があり、継承する場合や、買い替える場合もあるでしょう。

そうした時に、お仏壇にはそもそもどういう意味があるのだろうかと疑問に思う方もおられるのではないでしょうか。私もご自宅にお参りをさせていただく時に、そのようなご質問をいただくことがあります。

その時に、お仏壇の意味についてお話するのですが、「そんな意味があったのですね」と驚かれたり、「これまで漠然としていたことがはっきりして、手を合わせようという気持ちになりました」という方もおられます。

そこで今回は、「お仏壇の意味」について、改めて考えてみたいと思います。お仏壇の意味を知ることで、お仏壇を購入される際の参考になったり、日頃から手を合わせる一助になれば幸いです。

浄土真宗の意味合いに加えて、日頃からご遺族と接する中で私が感じることや、日本の文化的な側面もふまえて、お仏壇の意味を考えてみたいと思います。それでは、さっそく見ていきましょう。

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◆別れを受け止め直す場

「お仏壇の意味」の一つに、「別れを受け止め直す場」としての意味があるように思います。

先ほども申しましたが、現代の日本では、お仏壇は、ご家族が亡くなったことをきっかけとして購入する場合が多いでしょう。そうした点からすると、お仏壇とは「亡くなられた方に対して手を合わせる場」であり、「別れを受け止め直す場」であると言えます。

大切な方に先立たれると、私たちは気持ちや環境が変化します。仏教に愛別離苦という言葉がありますが、その言葉のように、愛する方、大切な方と別れていく苦しみは、とても大きなものです。大切な方であればあるほど、苦しみは大きくなります。

「大切な方を失って、どう受け止めたら良いのか」。これは、人類がずっと抱えてきた、大きな問いではないでしょうか。別れた方が大切な方であるほど、その別れを受け止め直すことが、それからの人生を歩んでいく上で重要な営みになります。

そして、大切な方との「別れを受け止め直す」過程で、お仏壇が意味を持ちます。お仏壇に向かい、亡くなられた方のことを思い、手を合わせる中で、段々とその別れを受け止め直していくことがあります。

例えば、お仏壇に向かって、亡くなられた方に語りかけることがあります。

「お父さん、おはよう」「お父さん、行ってくるね」「お母さん、ただいま」「お母さん、今日こんなことがあったよ」。

このように、お仏壇に向かって手を合わせ、語りかけるという行為の中で、実は私たちは、大切な方との別れを受け止め直しているのですね。

亡くなれた方と会話することができる。別れた方と、また会っていると思える。大切な方が見まもってくれていると感じる。別れた苦しみを抱えつつも、時間がかかりながらも、そうした気持ちに変化していくことは、凄いことではないでしょうか。

お仏壇には、大切な方に手を合わせ、「別れを受け止め直す場」としての意味があると感じます。地域や時代によって形は違えども、人類は様々な形や儀式を通して、亡くなった方との別れを受け止め直してきました。お仏壇もその形の一つです。

日本人はお仏壇の前に座り、手を合わせる中で、大切な方との別れを受け止め直してきたという文化と歴史があります。これは、人類の知恵とも言えるものかもしれません。

このように、「お仏壇の意味」の一つに、「別れを受け止め直す場」としての意味があると思います。

◆心が安らぐ場

また、「お仏壇の意味」として、「心が安らぐ場」としての意味があるように思います。

お仏壇とは、亡くなった方に手を合わせる場というイメージが強いかもしれませんが、それと同時に、仏様に手を合わせる場でもあります。仏様に手を合わせる中で、心の安らぎを感じる方もおられるかと思います。

そもそもお仏壇は、お寺の本堂の内陣という部分をコンパクトにしたものと言われます。つまり、お寺に安置している仏様を、ご自宅にも安置しているのがお仏壇とも言えるのですね。もっと分かりやすく言えば、お仏壇とは、自宅の中にあるお寺でもあるのですね。ですから、ご自宅のお仏壇で手を合わせることは、お寺にお参りをして仏様に手を合わせることと同じ意味があります。

少し想像していただきたいのですが、お寺にお参りして、本堂に入り、仏様に手を合わせる時に、どのように感じるでしょうか。荘厳な雰囲気の中、心の安らぎを感じる方も多いのではないでしょうか。それと同様に、ご自宅のお仏壇の前に座り、仏様に手を合わせる中で、心の安らぎを感じるという方もおられることでしょう。

このように、「お仏壇の意味」として、「心が安らぐ場」としての意味があるように思います。

◆仏縁が育まれる場

最後に、「お仏壇の意味」として、「仏縁が育まれる場」としての意味があります。

大切な方と別れていくことは、人生の一大事です。これまでの人生は何だったのかと考えさせられたり、心の中にぽっかりと穴があいて、支えを失うような感覚になることもあります。仏法(仏教)は、そうした苦しみの中にある方にこそ、知ってほしいものだと言われます。

人生では思うようにいかず、苦しいこと、辛いこと、悲しいことなど、私たちは様々な経験をします。大切な方との別れは、その最たるものですね。そうした苦しみを抱えながらも、私たちは生きていかなければならない時があります。その時に、仏法(仏教)が人生の支えとなることがあります。

仏法には、大丈夫だよという仏様の温もりと、人生を心豊かに生きてほしいという仏様の願いが込められていると言われます。仏法に触れ、仏法を知っていくことは、そうした仏様の温もりや願いに触れていくことでもあるのですね。

しかし、仏法に触れると言われても、どうしていいか分からないかもしれません。仏教の本も出ていますが、読んでも中々難しいこともあります。そうした時に良いのが、法話を聞くことです。

法話とは、仏教のお話、仏様のお話のことです。法要と言われるお寺での法話の会などで、お坊さんが仏教や仏様について分かりやすくお話をしてくれます。この法話を聞くことを、仏法聴聞(ちょうもん)とも言い、浄土真宗ではとても大切な習慣とされています。

なぜ法話を聞くことが大切な習慣とされているかというと、仏法が人生の支えとなっていくからです。苦しみの中にも、大丈夫だよという仏様の温もりと、人生を心豊かに生きてほしいという仏様の願いに、法話を通して触れることで、それが人生の支えとなり、依りどころとなっていくのですね。それを、仏縁(仏様とのご縁)が育まれると言います。

大切な方と別れていくことは、人生の一大事です。仏法(仏教)は、そうした苦しみの中にある方にこそ、知ってほしいものだと言われます。浄土真宗のお寺では、法話を聞くことができる行事が開かれておりますので、是非そうした場にも足を運んで、ご法話に耳を傾けていただければと思います。

このように、大切な方を失うことがきっかけとなって、仏様に手を合わせ、仏法に耳を傾ける仏縁が育まれていくことがあります。そのため、「お仏壇の意味」として、「仏縁が育まれる場」としての意味を挙げました。

いかがだったでしょうか。【仏事作法解説】ということで、今回は「お仏壇の意味」について、お話させていただきました。

お仏壇があることで、「別れを受け止め直す場」ともなり、「心が安らぐ場」「仏縁が育まれる場」ともなることをお話させていただきました。

お仏壇の意味を知ることで、お仏壇を購入される際の参考になったり、日頃から手を合わせる一助になれば幸いです。

いただいた浄財は、「心豊かに生きる」ことにつながる取り組みに活用させていただきます。