卒業〜緊急グレイモヤにて

11月30日。

この日はとても珍しく
年に5回あるかないかの平日休み。
11月25日に吐血してしまった事、
また12月から仕事が繁忙期になるため、
この日は1日家でゆっくり休もうと思っていた。

さて、ゆっくりするかと思っていた…
そんなときに
お笑いサークルHOSの
吉田則男氏のツイートが目に飛び込んできた。

今日、11/30日で新宿バティオスを予約していたらしく、運営から電話が来ました。1年前に問い合わせをして、返信が来ていたのですが気づかず過ごしてきました。場代は68000円です。払えません。だれか僕を助けに新宿バティオスに来てください。本気のやつです。

といった類のツイートだった。

自分も昔学生芸人ではなかったが、
絶滅ダイナソー(ひつじねいり細田さんとナブー泉さんのコンビ)やGパンパンダ、こぢまメガネ、まんぷくユナイテッド、エデン、cosΘ、パオ〜ん村長(サメゾンビ滝田)、かみの・ザ・カミノ(キズマシーン上野)と一緒のライブに出ていた身。
何かしたい。自分が少しでも救いになれば。でも直接の接点はない。
しかも会場に行っても結局知らない人ばかりのはず。
なかなか一歩踏み出せずにいた。

そのツイートから3時間後、
今度はコークス西山氏(ほぼ同期という事もありどうしてもシャラ〜ぺという名前には慣れない)の

「バティオスを抑えていたのにすっかり忘れていた」という大うっかり者がいて、全く面識無いのですが、面白そうだと思って急遽本日21時からグレイモヤやります!!メンバーは誘っていますが未定です!!!出たい芸人さんは、ガンガンバティオスに来てください!!!

これは出るしかない。
実は11月のゆるキャラグランプリの仕事を最後に
僕は芸人を引退したはずだった。
でもこんなんじゃ終われないって。
やっぱり最後はネタで芸人人生を締めくくりたい。
そんな想いでバティオスに向かった。

月の綺麗な夜だった。
新宿バッシュの前を通ったら
太田プロのコンビ・クックロビンが
解散ライブを行なっていた。
何一つ接点はないが、
このコンビと同じように今日で僕も最後なのか…と
思いながらバティオスに向かった。

5分後、ようやくバティオスに到着。
スタッフさんに裏口の場所を尋ねる。
残念ながら諸事情(3分の時間制限がある中で8分間ネタをやってしまったり、ネタ中に使用した生身のウサギが客席に逃げてしまいお客さんに相当迷惑をかけたり…)により、K−PROのエントリー制LIVEゲレロンステージを出禁になっているため、恥ずかしながらバティオスに立った事は1回もなかった。

いざ裏口から入場。
顔見知りの芸人が多くひと安心。
数々のテレビ番組のオーディションと同じように
出番はネタを披露したい者から
順番にどうぞといった形だった。
どうせなら売れっ子の後がいい。
タイタン所属のXXCLUBの大谷小判♀さんの
後にネタをする事に決めた。
大谷小判♀さんのあとにMr.Xと名前を記入した。

エントリーが終わってネタ決め。
必ずネタライブに出るときは出演順が決まり
お客さんの様子を伺ってからネタを決める。

例えばAマッソさんの後に正統派面談をやっても
勝ち目がないため人形浄瑠璃を披露したり、
落語研究会に所属しているはずなのに
奇抜なコントをしているコンビのあとに
わざと落語を披露したり。

今回は何でいこう?
大谷小判♀さんの後だから十八番の物真似はできない。
大谷小判♀さんのルックス自体が
良い意味で奇抜だから奇抜な事をやってもウケない。
人形浄瑠璃という選択肢もここで却下。

自分にしかできない事をやりたい。
せっかく最後の舞台なんだから誰とも被りたくない。
あとは7年半お世話になった
お笑い界に少しでも恩返しがしたい。

1番お世話になったのはやっぱり寄席だ。
よし最後は落語をやろう!と考えに考え、
結局「芸人人生」という創作落語を披露する事にした。
出囃子であるデイビー・クロケットの
音源を忘れてしまったのは今でも非常に残念である。

ネタを決め終えて舞台袖へ。
シャララ、サツマカワさん、街裏ぴんくさん、
その他大勢の方が次々と大爆笑をとっていく。
そしてとうとう大谷小判♀さん。
予想通り、物真似ネタ。予想通りの大爆笑。

このあとだ。
このあとに正統派落語を披露してやろうじゃないの。

大谷小判♀さんが大爆笑に包まれながらネタを終え、
ようやく自分の番。
「続きまして、Mr.X!」というガナリで舞台に登場。
少しばかり歓声があったのがとても嬉しかった。

落語のため、座ってネタを披露。
座ってネタを披露したため、
足の震えもバレずに済んだ。

「ルート33さん」「ビッグスモールンさん」
名前をお借りしてしまい、まことに申し訳ございません。
でも僕の人生に多大なる影響を与えてくれた2組なので、
この2組の名前抜きに「芸人人生」という
演目の落語を披露するのはあり得なかった。
結構長めにネタをやってしまったかもしれない。

次の出番のウニリリクさん、
この場を借りてごめんなさい。

演目を終えて楽屋に戻る。
出来としては35点。
でもこうやって最後にコークス西山氏の舞台で
大好きな演目を披露できたのが何より嬉しかった。

楽屋に戻ると
功太チルドレンの街裏ぴんくさんが
僕なんかに会釈をしてくださった。

元々、僕も2011年6月4日ネイキッドロフトで行われた
中山功太オールナイトトークライブ
オールナイトネイキッドにて
功太さんから
「あんちゃん、そんなにお笑いが好きならピンで舞台に立ったらどうやろ?」
と言われたのが芸人になったきっかけだったので、
そんな功太チルドレンの街裏ぴんくさんと
同じ舞台に最後立てたのもとてつもなく嬉しかった。

車海老のダンスの2人も僕なんかに会釈をしてくれた。
ユーモアとファンタジーを兼ね備えた最強のコンビ。
絶対売れてほしい。

普段はエゴサーチとかあまりしないが、
最後の舞台だったのもあり、
エゴサーチをついついしてしまった。

ネットラジオ「絶対乙女宣言トテチテタ」の
メインパーソナリティーである乳桃みゆさんから
お褒めの言葉をいただいていた。

同世代のピン芸人から
面白かったと言われるのがやはり1番嬉しい。

他にも昔からの知り合いから
「思ったよりもさ、グレイモヤせっかくだから出れば良かったって呟いてる人多いね。これはしーたいやMr.X効果じゃね。」と
言っていただけた。
甘く見られている事には違いないが、
それでも勇気や希望を与えられたのであれば何よりである。

また後日談ではあるが、
僕自身大ファンであり、
当日客席にもいた阿久津大集合さんが
「1月4日、阿久津和正&Mr.Xで、一夜限りのお祭り漫才します!」と
呟いてくださり
それに対して結構反響があったのも嬉しかった。
DMで取り置きもお願いされたが、
Mr.Xはもちろん僕ではない。
阿久津さんと漫才やったら、めちゃんこ面白そうだけどね。

こんなふうにして僕の芸人人生は幕を閉じた。
色んな人と関わる事ができた。

元旦ゲリラゴリラのかば太さんと
2回もユニットライブをやらせていただいた。

中山功太さん、とろサーモン久保田さん、
スパローズさん、スリムクラブ真栄田さん、
キングオブコメディさん、トップリードさん、
曇天三男坊さん、チーズボーイさんから
お褒めの言葉をいただく事もできた。

寄席や教壇にも立たせていただいた。
声優の仕事、セクシー男優の仕事(断ったが)の
声なんかもかけていただいた。

キンタロー。さんをはじめ、
たくさんの人と喧嘩をした。

普通に生活をしていたら絶対できない経験。
全てが今となっては良い思い出である。

7年半僕なんかと関わってくれた皆様、
ありがとうございました。

とくにコークス西山氏。
最後の舞台がグレイモヤで本当に良かった。

中山功太さん、
7年半前に貴方がアドバイスをくださらなければ
僕はこんなたくさんの思い出を残す事はできてません。
きっと普通に大学院まで通って
臨床心理士になっていた事でしょう。

三遊亭遊喜さん、
「お前ほんとうに変な奴だな。」
「負のオーラがなんかするんだよね。」と
言いながらも何度も飲みに連れて行ってくださり
ありがとうございました。

他にもお礼を言いたい人はたくさんいます。
できる限り、直接挨拶しに行きます。
それが礼儀ってものだから。

最後に僕の大好きな言葉を

「やろうと思っていた」と
「やる」の間には実は大きな川が流れている

大好きな小説、「芸人交換日記」に出てくる言葉。

やるを選んで本当に良かった。

さようなら。また会う日まで。

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