見出し画像

オールブルーって本当にあるの?(SDGs14.6 その1)

『オールブルー』というのを聞いたことがありますか?

世界にはノースブルー・ウェストブルー・サウスブルー・イーストブルーの4つの海があり、その4つ海域にいるすべての海の生き物が集まる場所こそ、オールブルーと言われています。海の料理人の憧れとして言い伝えられており、実在すらあやしいと言われる幻の海域のことです。というのは漫画『ワンピース』の話です。漫画の世界観でさえ幻と言われる海域が私たちの住むリアルな地球に実在すると言ったらワクワクしませんか?

リアルな地球には7つの海(※1)が存在すると言われています。とはいえ、7つの海と言っても昔の名残(※2)から「7」という数字が引き継がれているわけで実際のところ5つの海となります。つまり、太平洋、インド洋、大西洋、北極海、南極海です。しかし、北極海と南極海は地球の両端にある海のため、交わりません。そのため5つの大洋が交わる場所は地球上には存在しません。より多くの海に接しているということであれば南極海が一番多くの海に接しているのでオールブルーに近いのかもしれません。

世界地図(大洋)

図、Wikipedia『7つの海』より参照

ただし、南極海は南緯60°以南で、水温が0℃と非常に冷たいので生物が限られてしまいます。しかし、北極や南極の高緯度の海が流れ込み温かい海の生物もいる場所があります。ヒントは『海流』です。地球は北極点と南極点を結んだ地軸を中心に回ります。北極点や南極点では1日24時間かけてゆっくり1周するだけですが、北極点と南極点から最も遠い赤道では24時間で約40,000㎞も回ります。時速でいうと1,667㎞/hにもなります。この緯度によって異なる速度によって生まれる風が海に流れを作り、北半球では時計回り、南半球では反時計回りに風が発生し、海流を発生させます。ちなみに南北の風が交わり、相殺して無風状態になっている場所を『ドルドラム(※4)』といいます。日本名『赤道無風帯』、別名the belt of caim(凪の帯)と言われています。このドルドラムでは鏡のような海に星空が映って、宇宙空間にぽつりと浮いているような現象が起きるようです。

世界地図(海流)

図、wikipedia『海流』より参照

海流は世界的に見れば大きく5つあります。北太平洋海流、南太平洋海流、南インド海流、北大西洋海流、南大西洋海流です。それとこの地球の自転とは関係ない別もの海流があります。それが『赤道反流』です。海流の影響によって海は西側に引き寄せられ、西側の海の方が東側の海よりも高くなってしまいます。(※4)水は高いところから低いところへ流れるので赤道付近では通常の海流とは逆の流れが生じます。それを『赤道反流』と呼びます。そしてこの赤道反流と北半球の海流、南半球の海流が交わる島があります。その島こそ『ガラパゴス』。1度も大陸と陸続きになったことのない島で独自の進化をしてきたガラパゴス。ダーウィンが訪れて生物の進化論のヒントを得たことでも知られる島です。この島は赤道直下にあり、赤道反流の影響を受け、北はカリフォルニア海流により北半球の、南はペルー海流により南半球の流れがやってくる世界で最も海流の影響を受ける島です。このガラパゴスでは、世界中で漁獲されている15,000種類の魚のうち、2,900種類もの魚が集まるとされています。しかしこの世界的にも好条件がそろうガラパゴスさえも凌駕する場所があるのです。その国こそ『日本』。

日本は赤道付近からやってくる温かい黒潮と北極海からやって冷たい親潮がちょうどぶつかるところに位置しており、しかも東側には世界的にも大きな海溝の日本海溝があります。そして、日本の近くには太平洋からインド洋、大西洋、南極海を2000年かけてめぐる海流『グローバルコンベアーベルト』(※5)、日本名で海洋大循環が近くを流れているのです。

世界地図(深層海流)

図、北海道大学 大気海洋物理学 「潮のさじ加減で決まる海洋大循環」より参照。

その結果、日本近海で獲れる魚の数は3,700種類にもなるのです。世界で最も魚が集まる海域こそが日本となるわけです。リアルなオールブルーに最も近い場所こそ日本なのです。これほど豊かな海を持つ日本では、さぞかし魚で大きな利益を出しているかというと実はそうでもありません。2019年の漁師の平均年収は234.8万円(※6)です。年収が100万円を切る漁師もおり、その約5割は60歳以上になっています。年金や補助金を活用しないと生活できない人もいるのが現状です。でもこの補助金が問題になっています。真面目に漁をする漁師が多い中、それを悪用して好きなだけ魚を獲ったり、自分たちだけお金をもらったりしている国や人が多くいます。そこでSDGsでも正しい補助金がいきわたるための仕組み作りが必要と考えました。

「開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ
異なる待遇が、世界貿易機関漁業補助⾦交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020 年までに、過剰漁獲能⼒や過剰漁獲につながる漁業補助⾦を禁⽌し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助⾦を撤廃し、同様の新たな補助⾦の導⼊を抑制する」

簡単に言うと「正しい支援をしましょう」ということです。どうして間違った補助金が生まれてきたのか、そして世界中で魚たちがどんな目にあっているのか見ていこうと思います。この補助金にまつわる闇がなくならない限り、オールブルーの可能性はなくなってしまうかもしれません。

※1、現在の「7つの海」とは、北太平洋、南太平洋、インド洋、北大西洋、南大西洋、北極海、南極海
※2、7つの海といったのは中世アラビアが発祥で、大西洋、地中海、紅海、ペルシャ湾、アラビア海、ベンガル湾、南シナ海のことを指す。同じようにヨーロッパで7つの海といえば、大西洋、地中海、国会、カスピ海、紅海、ペルシャ湾、インド洋となっていた。大航海時代になり、世界が球体と判明してからは大西洋、地中海、カリブ海、メキシコ湾、太平洋、インド洋となる。
※3、doldrums:the belt of calm(凪(なぎ)の帯)と説明され、日本名では赤道無風帯と呼ばれている。
https://www.etymonline.com/word/doldrums
※4、海水面の東西の高低差は太平洋で63㎝、大西洋で14㎝ともに西側の方が高いとされる。
※5、自転の影響によって生じる風成海流とは違い、海水の塩分濃度、密度などの水温変化によって生じる海流。別名、熱塩循環、深層大循環、子午面循環ともよばれる。
※6、農林水産省 「令和2年漁業経営統計調査結果」2019年漁船漁業個人経営体の漁労所得。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/gyokei/attach/pdf/index-2.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?