見出し画像

漁業の利益の守り方2(SDGs14.b その8~海の豊かさの守り方b-4)水産DX「スマート水産」

海の世界はいまだに勘と経験が物言う世界。灯台の灯りで自分の位置を確かめ、双眼鏡でカモメを追いかけます。魚が跳ねる姿を見れば先回りして仕掛けをして、人間と野生生物の本気の知恵比べが繰り広げられています。誰もがスマホを持ち、5Gがささやかれている現代とはいえども、海の世界では無縁のモノと考えられています。確かにソナーやレーダー、魚探の性能は上がってきています。とはいえその基本技術は音波やVHFといった昔の技術の延長でしかないのです。というのも海と電波の相性はすこぶる悪いからです。水という大きい分子が、ごく小さな電波にとっては障害になってしまって、海のデジタル化は全く進んできませんでした。でもこの話は今まではという話になりそうなのです。つまり技術の革新が始まっているのです。

利益を確保するには売上を伸すか、原価を下げるかのどちらかです。売上の伸ばし方はブランド化や6次産業化でできるかもしれません。次に来る問題はどのようにすれば原価がさがるのかということになります。魚は基本的には自然にいるもので、元手が0と思われがちですがそうとは限りません。魚を見つけるまで燃料はたかないといけないし、仕掛けた網にどれだけかかっているのかわからないから多めに氷をつんだりします。すべては自然相手だからこそ予測がつかない世界です。それがもし魚の群れの予測がつくのであればどうでしょう。余計な燃料を使わず魚の出くわす場所まで行けて、今日取ってこれる魚の量分の氷を積むだけでいいのです。そんな未来が実はすぐそこに来ているのです。

オーシャンアイズは、気象衛星や気象上から潮の流れや海水温の情報をデータにして、海の状況を予測できるシステムを作っています。この海の状況のデータと漁師の勘や経験というデータを積み重ねていけば、よりピンポイントで魚のいる場所を予測システムができるのです。(※1)海中の見える化にも光がさしてきました。それがスマートブイです。長崎大学と京セラでは潮の流れから自動発電できるブイを開発し、(※2)KDDI総合研究所ではセンサーや通信機器を利用して水温や塩分濃度の情報から漁獲制度の高いブイを開発しています。(※3)このようなスマートブイが開発されていくと今まで見えなかった海の中も見えるようになっていくのです。養殖にも先端技術がうまれてきています。ウミトロンでは養殖魚のえさやりを陸上から遠隔操作したり、自動で魚の食欲状況を見定め、必要な分のえさを与える自動給餌機を開発しています。(※4)SAKAMAは全国の漁港から魚を直接買うことができるアプリです。(※5)このようにデジタル技術を使って今までのあり方まで変えてしまうことをデジタルトランフォーメーション、通称DXと言います。このDXが進めば無駄な燃料を使うこともなく、無駄餌をやって海を汚すこともなく、直接ハマネで魚が買えるようになるのです。このようにデジタル技術といった新たな技術を使って行う水産業をスマート水産と言います。(※6)こうすると心配になるのが現在現場で働いている仕事がなくなってしまうのかということになります。確かに海の仕事は安全で楽にはなっていくでしょう。そして現在の仕事のやり方自体は変わっていくことになると思います。でもこれは恐れることではありません。10年前スマホはなかったのですが、今や83.4%の人がスマホを持っています。(※7)漁業に多い高齢者の中には「俺はスマホなんて持たない。新しいモノなんて取り入れない」という人もいるかもしれません。でもそんな高齢者でもブラウン管でチャンネルをひねるのテレビではなく薄型のテレビでリモコンで遠隔操作しているはずです。これもテレビがデジタル化して、今までの生活様式が変わったということであれば、立派なDXです。時代は流れるものです。新しい世界はいつの時代でも起きていることです。単に変わることを意識しているかしていないかの違いです。いつか変わるのであれば今変えてもいいわけです。新たな取り組みを毛嫌いするのではなく、一緒に手を取り合って新たな海の産業を作っていくことが必要なのです。

※1、オーシャンアイズ
https://oceaneyes.co.jp/
※2、エナジーハーベスト型スマートブイ
https://www.kyocera.co.jp/ceatec/energy_harvesting_smart_buoy/
※3、スマート漁業の実現に向けた新型スマートブイを開発
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2018/061901.html
※4、ウミトロン
https://umitron.com/ja/index.html
※5、SAKAMA

※6、水産庁 スマート水産業の推進について
https://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/study/smartkenkyu.html
※7、令和2年度 情報通信白書 インターネットの利用動向
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252110.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?