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無報告漁業からの守り方(SDGs14.4その7~海の豊かさの守り方4-2)水産エコラベル

どこで紛れ込んだかわからない、身元不明の魚問題。厄介です。
漁師も市場で高値で売れただけなのか、身元不明の魚が混ざってしまって数が多くて売れたのかわからないし、買っている人もちゃんと値段が付いているものを正しい手順で買っているので取引上問題が表にでてこないわけです。せっかく漁獲可能数とか漁獲割当を細かく計算しても、数を数えるのがめんどくさいとかちょっとした手抜きで知らぬ間に魚を絶滅へ追い込んでしまっているのかもしれないのです。このように法律や規則に違反し、報告が行われていない、または虚偽の報告を行なう漁業を「無報告漁業」(Unreported)と言います。このような無報告漁業をなくすため生まれたのが水産エコラベルです。

水産エコラベルとは、
1、過剰な漁獲を行わず資源を枯渇させないこと。枯渇した資源については回復を論証できる方法で漁業を行うこと。
2、漁業が依存する生態系の構造、多様性、生産力等を維持できる形で漁業を行うこと。
3、地域や国内、国際的なルールを尊重した管理システムを有すること。また、持続可能な資源利用を行うための制度や体制を有すること。(※1)
この3つの条件を守って獲られた魚につく証です。そして、そのラベルは漁師の手元から私たちのもとに来るまでしっかり管理されたときにのみ私たちはお目にかかれるのです。
いろいろ書きましたが結局この水産エコラベルとは、絶滅させないように先のことも考えながら獲られた、由緒正しい魚ですという証なのです。
この水産エコラベルとして認められているのは2021年現在、世界で9種類(※2)。そのうち日本ではMSC、ASC、MELの3つのラベルが使われています。

水産エコラベル

※水産庁 水産エコラベルをめぐる状況について(令和3年6月)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/budget/attach/pdf/suishin-22.pdf

水産エコラベルはどの漁師も貼っていいわけではありません。それぞれ独自の認証機関があって、そのルールに則って漁をしている漁協や漁業者であると認められた者にしかつけることが許されていないのです。そのため、まだ日本では71業者しかこのラベルを貼ることが許されていません。でも水産エコラベルを貼っただけでは安心できません。取った時にはよくても、途中で身元不明の魚が紛れ込んでしまってはもともこうもありません。そのため、水産エコラベルが貼られた魚を扱う流通業者や加工業者にもそれなりの信頼がある人を持ってこないといけないわけです。そこでそれぞれの水産エコラベルを扱ってよいと特別に認められた業者がいます。これをCoC(Chain of Custody、加工流通過程の管理)認定業者といいます。この水産エコラベルとCoC認証業者が合わさってようやく由緒正しい魚と言えるわけです。

MSC、ASC、MELの3つの水産エコラベルは未来に魚たちを残すために配慮されているという点では同じなのですが、意味合いとしては少し異なります。
MSC(Marine Stewardship Council)は、水産資源と環境を考えた漁業で獲られた天然の水産物の証のことで、水産エコラベルの初期である2017年にイギリスで生まれた認証です。
ASC(Aquaculture Stewardship Council)は、周りの環境などへの影響を考えて育てられた養殖の水産物の証のことで、2018年オランダで生まれた認証です。
MEL(Marine Eco-Label Japan)は、日本のような様々な魚が混在する場所でも環境や生態系を考えて獲られた天然もしくは養殖の水産物の証のことで、唯一日本で生まれた認証です。
どれも真剣に海のこと、魚のことを考えて漁業を行っている人たちによって獲られた魚であるという証には変わりありません。

とはいえ、漁協で2833組合、漁業就業者数15万人と考えるとまだまだ水産エコラベルを貼れる者は少ないのが現状です。認証を取得するにはそれなりの手間とコストがかかり、しかも一般消費者にもまだまだ認知されていないのでは、水産業者にとってもあまり魅力に感じられないのもわかる気がします。まずはこのような認証制度があることを私たち一般消費者が知ることがサステナブルな漁業の一歩になるのです。

※1、MSC MSC漁業認証規格とは
https://www.msc.org/jp/standards-and-certification/MSCstandardjp/MSCFisheryJP
※2、持続可能な水産物の普及を目的に、水産関連企業、NGO、専門家、政府及び政府間組織による地球規模の戦略的連合組織であるGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)によって厳しい検査に合格することによって信頼ある認証機関とされている。



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