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国連海洋法条約(14.C その3)

海ははるか昔からあって、広くて、様々な人がかかわってきました。古くからある分それぞれのローカルルールがありました。そのルールも国レベルだったり、地域レベルであったり、ひいては人レベルでルールを好き勝手に作っていました。そんなバラバラなルールでは問題も多くなります。例えば「海をきれいにする」ということでも、生物がすめないほど透明度の高い海がきれいという人もいれば、色とりどりの魚が泳ぐ海をきれいという人もいます。そんな意見の違いがでないようにルールを統一しましょうという流れが起きました。それが「海洋法に関する国際連合条約」。通称、国連海洋法条約です。

1982年、ジャマイカのモンテゴベイで作られた国連海洋法条約は現在167カ国とEUが締結しています。全17部、320条からなるこの条約は海の憲法ともよばれる世界で唯一の共通のルールです。(※1)内容としては、どこまで自分の国としてどこから共用部分で、それをどうやって扱うのかという話がほとんどです。その中で最も重要な項目が第192条と第301条です。

第192条 一般的義務
いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する

いくら海に面していない国であってもすべての国が海を守る義務を持っているのです。国連のスローガンにある通り「One Planet,One Ocean(1つの地球に海は1つ)」なのです。海は誰のものでもなく1つしかないもの。だからこそ海をきれいにしましょうというのではなく、地球人の義務として誰であろうとも海は大事に扱わなければならないモノであると定義しているのです。

そしてもう1つ、地球人としてのあり方を問うている条文があります。

第301条 海洋の平和的利用

締約国は、この条約に基づく権利を行使し及び義務を履行するに当たり、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合憲章に規定する国際法の諸原則と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

つまり、海に携わる人は誰でも争いはしてはいけないのです。海は地球上に唯一残された手つかずの大自然です。だからこそ海は自由で、謎に満ちていて、まだ見ぬお宝が眠っているのです。そんな可能性を秘めた手つかずの大自然である海だからこそ、略奪や破壊で血みどろにした陸上の歴史の二の舞にしてはいけないのです。

海の環境の保護と平和的利用こそ、国連海洋法条約の最も本質なのです。そんなきれいごとなんてできっこないと思うかもしれません。でも、そんなきれいごとの世界を今の海なら作れる可能性が残されているです。そんな理想郷のような世界が地球上に1つあってもいいじゃないですか。そのためにもまずは世界共通のルールをすべての人が知って、そのルールを守ることが最初の一歩になるのです。

※1、全17部、320条からなる1982年に作られた唯一の世界共通の海のルール。
第一部 序
第二部 領海及び接続水域
第三部 国際航行に使用されている海峡
第四部 群島国
第五部 排他的経済水域
第六部 大陸棚
第七部 公海
第八部 島の制度
第九部 閉鎖海又は半閉鎖海
第十部 内陸国の海への出入りの権利及び通過自由
第十一部 深海底
第十二部 海洋環境の保護及び保全
第十三部 海洋の科学的調査
第十四部 海洋技術の発展及び移転
第十五部 紛争の解決
第十六部 一般規定
第十七部 最終規定
海洋法に関する国際連合条約 全文(和訳)
https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unclos.html

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