復活の「おすみ」

 伊賀上野ドライブインの閉鎖にともない、もつ焼き・焼き鳥の銘店「おすみ」が移転したことはすでにこのブログでも書きました。
https://note.com/thereminmasamin/n/n4213b8375c42

 伊賀上野ドライブインからほど近い場所に移った新生「おすみ」に行ってきました。以前に比べてお店は大きくなっていました。14時前に到着しましたが、お昼時のピークは過ぎていたとはいえ、大勢の人で賑っていて人気は健在。ファン層が広がったようです。おなじみの特大の天狗のお面もレジ奥にどっしり構えています。インスタ紹介のQRコードチラシが壁に貼られていたりして、「おすみ」も新たな方向に一歩を踏み出しているんだとしみじみ。

 注文したのは定番の「ホルモン焼き定食」 ホール係のおばさままで雇っていて、事業拡大されています。お味はどうかといえば、以前に比べ具のホルモンやキャベツの刻み方が若干小さくなっていて、味もスッキリ方向に軸足を移しています。グルメレポートではありませんし粗探しはしません。何より「おすみ」が場所を変えても健在で、こうして味わえていることが素直に嬉しい。

 やさぐれ感が支配していた頃に比べ、客層は若年化し、裾野が広がりましたが、ここにはオタクカルチャーの影は見当たりません。テルミンはサブカルに属していると世間では捉えられているようですが、私はそれに居心地の悪さをずっと感じています。
 純粋に美しいものを求める姿勢がダサくて、「ゆるく」やることがクールだとする彼らの独特の価値観。日本におけるテルミン演奏発展の歴史を振り返っても、黎明期には演奏の高みを求めて励む以外に道はなく、皆切磋琢磨していました。普及が進んだ頃からでしょうか、励まないことと、自尊心の高さが両立できるようになりました。これは楽器演奏全体の長い歴史の中でも特異なことでしょう。個性の追求に踊らされ、迷走を続ける中で、テルミン演奏を始めた頃のピュアな気持ちを見失ってしまったのかもしれません。私は音楽表現においては深みがあって、情感豊かなのが好きです。そういうのが最も得意なはずのテルミン演奏で「そっけない」か、はちゃめちゃの自虐が主流派になりだした頃から、テルミン演奏全体の風向きは変わりました。彼らを見ていると、彼らの心の真ん中にあるのは、硬い殻に包まれた「嫌い」の種なのかもと思ったりします。

 サブカルと称されるテルミンの世界で異端を演じ続ける私の居場所はどこにあるでしょうか? マッドマックスに出てくるようなバイク乗りたちを懐かしく眺めつつ、ホルモン焼き定食を食べながら思いました。

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