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ボス・ベイビー

 趣味のない私にとって、テレビ放送でおもしろを見つけるのが唯一の趣味と言っていいかもしれません。テレビを観て怒ってばかりの私。私だって笑いたいんです。しかしどのチャンネルを見ても笑っているのはお笑い芸人本人ばかり。お笑い選手権のような番組を見ていて思ったのは、あまりにつまらなく不可解なのも実は戦術で、笑いの渇望感を創出しているのかもと思いました。乾いていれば一滴の水でもありがたい。

 お笑いに笑えない私が毎週の放送を心待ちにしている番組があります。「ボス・ベイビー」。見た目はベイビー、中身はビジネスマンの赤ちゃんを中心に繰り広げられるコメディアニメです。NHKで毎週土曜日に放送されています。
 その昔、アメリカのコメディなどを見ると、すべてが誇張されて大げさで、様々な国からの移民で構成された国の笑いってこうなっちゃうんだと、子供心に異文化を実感したものです。しかし「ボス・ベイビー」は日本人の私が観ても違和感なく笑え、何気ないディテールの描写も、実はおもしろの感性が似ていることがわかります。

 きっと昔はたくさんの人が同じものを見て笑い、泣けた。多様化を背景に、それができなくなった現代において、同じものを見て笑える機会は稀で、そういう共通体験をしたくて人は劇場や映画館に足を運ぶのでしょう。同じ空間にいて同じものを食べ、同じ空気を吸い、同じものを見て笑う。コロナ禍で自粛生活を続ける中でその意味を実感しました。残念ながらNHKでの「ボス・ベイビー」放送は一旦おしまい。再開を強く希望します!

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