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【第二十一回】何もにもなれなかった50男の物語

どうもたてやんです
ぼくが居た半世紀前の中国は
とてもエキサイティングな国

今日はそんな中国でのお話です


中国の奥地へ行った時に案内された
ところは最悪だった

そこは窓もついてない廃墟のような
ところでベッドだけ置いてあった

そして頼もしき相棒がいた

50cmはある巨大なカメ

寝ている間にカメに噛まれたら
嫌だなと思いつつ「謝謝」と言った

その夜

カメよりももっときつかったのが
蚊の攻撃だった

全身いいように食われその夜は結局
眠ることが出来なかった

アモイの工場へ行ったときのこと

ぼくは迎えにきたメルセデスに
いるとゾンビのように大衆が
車に群がって来た

村は貧しく皆プラスチックの桶を
持って金をくれと近寄って来た

運転手がクラクションを鳴らしても
彼らは全くどかずラチがあかない

仕方ないのでぼくは持っていた
小銭を空中にぶちまけた

村民が離れたすきにダッシュした

工場の休みに地元の女子と話をした

「普段なにやってるの?」

暫く考えた後彼女は応えた

「海をながめている」

「休みの日は何してるの?」

彼女はまた考える

「やっぱり海をながめている」

つい数十年前の中国は本当に
貧富の差が激しかったけど
今でもそうだろうな


沿岸部でかなり大きな台風がきた

事態は深刻だった

とにかく工場の窓枠がはずれて
上から降ってくる始末

「ガシャーン!」

工員の一人が怪我して出血

こわ!

ぼくらは工場から出られなかった

その晩は出荷用の段ボールを敷いた
ベッドで一夜を過ごした


翌日台風一過の街をホテルに戻ると
高層階の窓枠ごとぶっとんでいた

ホテルの窓枠がぶっ飛ぶって
どんだけすごい台風だったんだ

仕事を済ませたぼくは台湾人と
共にアモイから香港へ船で戻った

台湾人は船で酔うから先に酔おう
と免税店でブランデーを買った

ぼくらはガンガン酒をあおった

「ザザ~」

遠くに波の音が聞こえる

目が覚めるとぼくは暗闇の中

どうやら船のデッキにあった
ベンチで眠ってしまったようだ

デッキの幅は狭く落ちたら
そのまま人生終了だろう

ポケットからはパスポートが
半分はみ出ていた...


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