見出し画像

ST3年目までの方へ「嚥下能力を上げる」ための嚥下能力評価方法

皆様、当ノートを閲覧していただき、ありがとうございます。
【嚥下】に興味を持ってもらいとても嬉しいです。

本日はST3年目までの方に向けて「嚥下能力を上げる」ための評価についてお伝えしたいと思います。

これもひいては【誤嚥性肺炎を予防】することにもつながるため非常に重要な内容ですのでよろしければ最後までお付き合いいただけると幸いです。

嚥下能力を上げるための考え方

嚥下能力を見ていくにあたって考え方をおさらいしたいと思います。

嚥下能力とは、食べ物か飲み物を飲み込む力ですね。
飲み込む力というのは嚥下5期モデルの流れで培われていきます。

この5つの流れで食べ物や飲み物が食道ひいては胃へ送られます。

この5つの期を評価する必要があります。
この5つの期を評価するシートが存在します。

一般社団法人 株式会社医歯薬出版が出版している藤島一郎先生著、MASA日本語版 嚥下障害アセスメントMASAスコアシートです。

MASAは2002年に米国で開発された評価方法です。
臨床評価で脳卒中患者様の嚥下障害と誤嚥を効率よく鑑別することが出来ます。

今回は、MASAスコアシート(日本語版)にある24項目を5つの期のうちの4つに照らし合わせながら読み解いていきたいと思います。

1つずつ見ていきたいと思います。

先行期

先行期でのポイントは
1.覚醒
2.従命
3.呼吸
です。

■覚醒
まず、患者様が起きているかどうかの確認が必要です。
寝ている人にいきなり水を口へ入れたら誤嚥するのは当たり前ですね。

■従命
続いて従命可能かどうかです。
こちらの指示に協力的か、聴覚は大丈夫か、失語があり指示どおりには出来ないかなどを見ていく必要があります。

■呼吸
そして呼吸状態ですね。
呼吸器疾患や心疾患により呼吸は乱れてしまうことがあります。

息をするのに一生懸命な状態では嚥下もままなりません。何故なら、嚥下性無呼吸といい、どんな人も嚥下の瞬間は息が出来ないからなのです。

息をするのに一生懸命な人は嚥下する僅か一秒にも満たない時間すら苦しいのです。

そんな中で「嚥下を意識して」「噛んで」「飲み込む」というのはかなり至難の業です。この呼吸状態をしっかり見ていきましょう。

準備期

次の口腔期とほぼ一緒なところがあります。

ここでのポイントは
1.咀嚼(食べ物が主)
2.食塊形成(口腔内残渣)
3.舌口蓋閉鎖(飲み物が主)
です。

準備期ではしっかりと食べ物を噛んで柔らかい形状にしなければなりません。硬いものは喉を傷つける危険性がありますからね。

噛むことは顎と頬と唇の運動そして舌の運動と唾液が必要不可欠です。つまり口腔器官ですね。

「発語失行」や「構音障害」があると喋る時にしっかり口腔器官が動いて居ないことが大半なので口腔器官が低下している可能性は高いです。そのため咀嚼・食塊形成・舌口蓋閉鎖すべてが不十分になりがちです。

■咀嚼+食塊形成
舌は食べ物を歯の上に置いたり、細かくなった食べ物を唾液と一緒に混ぜたりする役目があります。そのため「舌の動き」「舌の筋力」「舌の協調運動」が悪くなると咀嚼と食塊形成に大きく影響を及ぼします。

■食塊形成
口腔内残渣は正しく食塊が形成され、喉に送れているかを見ることが出来ます。食塊形成が不十分では頬の粘膜、口腔前庭、口腔底などに残渣物が認められます。口蓋に残渣が付着している場合は判定が難しいですね。前方の硬口蓋に付着していれば、送り込みの問題ではなく食塊形成である場合があり、後方である軟口蓋に付着していれば送り込み問題の可能性もあります。

■舌口蓋閉鎖
口腔準備の段階で舌口蓋閉鎖がおろそかになると、早期咽頭流入となることがあります。そのため「舌」に関わる項目は全てチェックしておくと良いですね。

口腔期

準備期と似たような形ですね。
上記でもお伝えした通り、口腔内残渣はチェックポイントです。
口腔期による送り込みが不十分の場合、舌背や口蓋に付着しやすいですね。

口腔通過時間とは、舌の送り込み開始時から食塊が下顎骨下縁と舌根交差点まで到達する時間を指します。主にVFにて判断されます。この時間が延長することで咽頭期へ影響していきます。

咽頭期

ここでのポイントは
1.嚥下反射
2.嚥下圧
3.防御機構
4.喉頭挙上
です。

■嚥下反射
咽頭相による反射の有無や絞扼(こうやく)反射を見ていく必要があります。絞扼反射とは「中咽頭を刺激したときに起こる舌根の挙上を ともなった咽頭筋群の強い収縮」です。この反射がない場合は咽頭の収縮力も弱まっている可能性が高いです。

■嚥下圧
舌の筋力や口蓋、発声で見ていくことが可能です。舌の筋力があることで舌口蓋閉鎖の指標としたり、口蓋では、鼻咽腔閉鎖機能が正しく出来ているかを見ていきます。なお、声のところでも鼻咽腔閉鎖機能が正しく出来ているかの確認も可能です。

■防御機構
咳反射と随意的な咳、そして声が重要です。それらはすべて声帯閉鎖が正しく出来ているかを確認しています。誤嚥を予防する力ですね。これらの力があると誤嚥性肺炎の予防につながります。

気管切開がされていると、カニューレ孔から呼気が出てしまうので咽頭の反応であるガラガラ声が聴取できなくなるので注意です。

咽頭の反応で湿性嗄声が認められると、誤嚥が起こっていると判断したりします。

■喉頭挙上
咽頭相と気管切開で見ていきます。
咽頭相で喉頭の挙上を確認します。気管切開されると喉頭挙上が阻害されてしまうので要チェックです。

まとめ

ここまでご覧いただき誠にありがとうございます。
MASAは特殊な機器を必要とすることなく(口腔通過時間などの判断は熟練が必要)どんな環境でも使用可能なすごい評価方法です。

加えて、嚥下障害が重度なのかどうかの判断や誤嚥の重症度も簡易にスクリーニングでき、とても使いやすいです。

この考え方を基に、本を読みながらブラッシュアップしていき、日々の臨床に役立てていただけると幸いです!
それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?