見出し画像

大学合格の予知夢

高校2年の冬、大学へ行こうと決心した。すでにこの時点で時間がないことも分かっていたし、親にも先生にも止められた。けれどもどうしても大学へ行かなければならない気がしたのだ。

それまでは短大か吉本興業へ行こうと思っていた。勉強はできない方だった。私が当時出来ることといえば、音楽と英語とお笑いだった。だからみんなに止められた。

それから私は人が変わるくらい勉強した。勉強以外何をしていただろうか。毎日毎日部屋にこもって、猫や音楽に癒されながら必死に勉強したことを覚えている。必要な教材は片っ端から買ってもらった。

その間ももちろん金縛りにあい、金縛りから解ける方法を試行錯誤している時期でもあった。

そんな日々を半年以上続けた結果、やっと目に見えて分かる日がきた。高校3年の夏休み明けの試験で、私は学年で3位になった。みんなが手を抜いていたのかもしれないが、これには誰もが驚いた。これによって先生たちの態度が変わり、協力してくれるようになった。

私は数学が苦手だったので、大好きな地理を受験出来る大学に絞った。そこにのちのち私が入ることになる大学があった。

受験の時期になり、5つの学科を受けることにした。当時付き合っていた彼と受験する大学が被っていたので、それも励みになった。

A判定だった大学が1番最初だった。簡単すぎて余裕だったのが命取りだった。全員点数が良かったため、1点の差で落ちてしまった。

1番行きたかった大学は2学科受けた。仙台へ行って初めて1人でビジネスホテルに泊まり、初めて憧れのTバックを買って浮かれていた私は、勉強どころではなかった。そして落ちた。

この頃から不思議な夢を見始めた。私は大きな鏡の前に立っている。そしてジッと自分を見ていた。
「何なんだろう」
とてもリアルだったので、覚えていた。

最後の大学も2学科受けた。当時全く話さなかった父に連れられて、ビジネスホテルに泊まったのだが、周りに怪しまれ、集中できなかったことを覚えている。

試験の時間前に学校へ到着すると、そこはなんだか懐かしいような感覚がした。もちろん一度も来たことはないのだが、何度も来たことのあるような、ここに自分がいつもいるような感覚がしたのだ。

こうして私の受験は全て終わった。あとは最後の大学の合否だけになった。

起きている時間は親にも先生にも落ちているだろうからもう諦めろと怒られ、意気消沈していた。誰かに「頑張ったね」と言われたかったのだろう。そういう言葉のない環境に育ったので、ますます引きこもっていた。

しかし眠りにつくと、夢の続きを毎日見ていた。知らない建物の前に大きな鏡があって、そこをジッと見ている自分から始まる。そこにはいろんな風景があった。毎回リアルに体験するのだが、いつもなんだか分からなかった。

そんな夢を1ヶ月くらい見た後だろうか、最後に受けた大学から合格の連絡がきた。やっと受験から解放された、やっと家から出られる、そんな気持ちで溢れていた。

初めての一人暮らしのために借りたアパートに荷物を置き、私は両親と入学式に出席した。すると、なんだか見たことのある建物があった。受験の時は別の校舎だったので気づかなかったのだが、ずっと夢で見ていた建物があったのだ。
ただ、大きな鏡ではなく窓だったので、あれはなんだったのだろうと思った。

入学してから友達もでき、3人で校内をプラプラしていると、男の人に声をかけられた。ダンスサークルの人だった。一緒にいた友達たちは真面目な子で、最初は興味もなかったのだが、男の人がダンスを披露しようとクルクル回ると、彼は一緒に鼻水を出した。それを見た私たちは大笑いして、なぜか入ることになったのだった。

ダンスサークルの練習は夕方からで、どこかの教室を使うのだが、昼間はみんな大きな窓の前で練習していた。サークルが休みの日にはみんなで集まって、窓の前で昼から練習したりしていた。

ある日窓の前で練習していると、夕方になりあたりは暗くなっていった。すると、大きな窓は鏡になった。そこに私は立っていた。
「あ、これは…」
まさしく私がずっと夢で見ていた映像そのままだったのだ。こうなることを何ヶ月も前に私は夢で知っていた。あの時からすでに決まっていたのだと知った。

私はボーッとしてしまった。今まで自分の能力を全て否定してきたのだったが、この時私は何者なんだと怖くなった。そしてこの世界に疑問を持つようにもなったきっかけだった。

夢を見ている時は瞑想状態やトランス状態と一緒で、第6感が覚醒すると言われている。見えないものと繋がったり宇宙や別次元とも繋がったりするのだ。だから私は未来が見えたのだ。

当時の私は何も分からず、なんでも見えたり分かったりすることが嫌で仕方がなかった。だから怖かったのだ。小さい頃からドームの中にいるような感覚や、地球を救わなければならないという気持ちも、どんどん強くなっていた。

私はそんな気持ちを胸にしまい、大学生活を楽しむことにした。能力のことはほとんど言わなかった。普通の子になりたかったからだ。普通に大学生をして、恋愛をして、友達と思い出を作りたかったのだ。

ただこれはほんの始まりに過ぎなかった。これから起こる私の壮絶な人生は、自分でさえも見えなかった…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?