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Before the noises 僕と小杉さんII/LESS北山

2008年。新宿某所喫茶店。僕と小杉さんはロブゾンビ版『ハロウィン』のTシャツプロモーション及び映画自体のプロモーションの打ち合わせをしていた。

時はそこから3週間ほど前にさかのぼる。僕に一本の電話が鳴った。珍しい番号だが、登録されているもの。新宿ロフトプラスワンプロデューサーの携帯電話番号だった。

「お久しぶりです!どうしたんですか??」と電話口に出たが、何かがないとかかってはこない番号なので、何かしらイベント周りの話なんだろうなということは解っていた。

僕とロフトプラスワンという場所との関係を少し。東京に出始めたころ、僕にTシャツのことを語りつくすトークイベントをやってみないかと当時のプロデューサーから声を掛けられ、よくもわからずのこのこっと出たのがその始まり。『Tシャツマニアクス』と名付けられたそのイベントはTOKYO FMなどでも取り上げられ、2回開催。その後も何等かイベントのゲストみたいな感じでちょこちょこ壇上にはあがらせてもらっていた。ネイキッドロフト、阿佐ヶ谷ロフト、もその繋がりや別のつながりで出演するのもちょこちょこ。その関係性は今も断続的だが続いている。

話は戻る。「実は北山さん、10月31日のイベントにキャンセルが出てしまってですね、急ぎなんらかのイベントを立ち上げなきゃいけなくなったんですよ。何かイベント案ってありませんか??」おおおお、なかなかないい話じゃない!僕は即答した。「ありますあります。しかも大阪で実績もある企画、ロフトプラスワンには今までなかったイベントですよ!」

僕の自信満々で出した案は『鋼鉄祭』。これはメタルのMVを演者が解説と共に紹介。とんでもないメタルバンドをこれでもかと出しまくる当時としては新手のイベントだった。YouTubeで世界中のバンドのMVがどんどん上がりだした時期だったこともあり、容易に素材が確保できるようになったのも時代の流れだったし、それをいち早く大阪でイベントに取り入れてみたら、これがなんと大成功。東京ならもっと入るぜ!そんな自信もあった。

そしてその気持ちのままプラスワンの打ち合わせで意気揚々と語ったものの「面白いですが、いやしかし、演者が北山さんとその大阪の方だけではなんとも寂しいですよね...」とシビアな回答。まあ、そうだよな。なのでゲストに凄い人を!という次の課題がやってきた。

そこでまず声をかけたのはアニメタルで付き合いのあった坂本英三氏。電話で事情を説明したところ明朗快活に「大丈夫ですよ。」の返事。日本のメタルゴッド一人を獲得し、プラスワンプロデューサーも安心しだした。が、ここで安心してはいかん、と思い、さらなるゲストを捜索することになった。

次に決まったゲストは故・紅音ほたるさん。当時AV女優として人気絶頂で引退を公表し、様々なクラブイベントでそのラストへのカウントダウンをしていた最中だった。出演の希望はギャラだけではなく、僕の持っていたブレインデッドのVHSが欲しいという、びっくりな返事(紅音ほたるさんはこの映画が大好きで自慰行為に使いたいと言っていた、たまげたぜ)。普通にVHSを持っていた僕にも問題はあるが、ともかくこれでゲストは埋まった。埋まったが、そこはロフト。まだ安心はできない。ということで声をかけたのが小杉さん。ちょうど10月31日だったのでハロウィンと重なるじゃない?だったら映画宣伝で出ませんか?と半ば強引に誘った。

ということで冒頭の喫茶店に話は戻る。小杉さんは「出るのはいいですが、メタルは何にも知らないですよ」と言うが僕はあの小杉さんの独特のトークの面白さを知ってしまっていたので「いや宣伝で出りゃいいじゃないすか、大丈夫っすよ。ロブゾンビの話でなんとかメタルに繋げますんで」とイベントへの執念を見せた。結果小杉さんも出演OK。ただし、ブギーマンのマスク(アメリカの通販で買ってさらに日本で小杉さんがカスタマイズしたもの)を被っての登場ということになった。

さらにMCを一緒にやった大阪の佐々木さんつながりで知り合ったバルザックのヒロスケさんが『ハロゥイン』大好き!とそのブギーマンマスクを使ってイベント一夜限りで流すMVを作ってくれたりもした(今も恐らくそのMVは一部の人間しか持っていないはず)。なんだかんだで豪華な話。遂に舞台は整った!

が、前売りチケットは急遽決まったイベントということもあり、売り上げは芳しくなく、追い打ちをかけるようにイベント当日僕らを襲ったのはバケツの水をひっくり返したような豪雨。客席は全く埋まらず、15分遅れで始まったイベントは豪華な内容に対して寂しいものだった。で、小杉さんはブギーマンのマスクを被ってウォーーーーーーーーっと登場したが、客席はどうにも寒かった。僕のロブゾンビトークもから滑りした。プラスワンのプロデューサーは終演後褒めてくれたが、実はこれ以降僕の主宰イベントはロフトプラスワンでは行われていない。

余談だが、この時坂本英三氏は僕の渡そうとしたギャラの封筒を受け取らなかった。「俺はスタジオのついでで寄っただけ。これからレコーディングがあるから打ち上げも出れないんだ、ごめんなさいね。」と。打ち上げで赤字になることも見越してこう言ってくれたのだと思う。英三氏はこういういい話がいっぱいある。そのうち纏めて書かなきゃ。

で、豪雨の中、英三さんを見送り、小杉さんらと歌舞伎町の怪しい中華料理屋で小さな打ち上げをやった。なんだか好き勝手やらせてもらったけど申し訳ないな。チンタオを飲みながら僕は外の豪雨を眺めてた。小杉さんの言葉は少なかったが、最後まで付き合ってくれた。ああ、いい人だな。僕は酔っぱらいつつもそう思った。

ん、ハロウィンのTシャツはどうなったかって?勿論いいデザインしてきっちり売り切ったさ!


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